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EXTRA(番外編)
【本編後】彼女と彼の2・14
しおりを挟む「おかえりー妹ちゃん。ご飯にする? お風呂にする? そ・れ・と・も、――俺?」
「……なんで我が家に帰ってきたはずなのにあなたに出迎えられてるのか心から不思議ですが、とりあえずただいまと言っておきます。というかその三択、最後のは何です?」
「やっぱり様式美は大事かなって」
「……まったく、相変わらずですね。それにしてもまさか家で待ち構えてるとは思いませんでした。あるとしたら去年の深兄さんみたいに帰宅途中に拉致されるとかかと思っていたので」
「去年と同じことしてもつまらないでしょ? ちなみに深くんは今研究大詰めで忙しいみたいだからこっそり差し入れするだけにしてきたよ」
「こういうときだけ良識を発揮するからあなた性質悪いですよね……。奏兄さんのところに行くっていう選択肢は無かったんですか?」
「来年のそのころ、奏が地球の裏側とかに居たらそれもいいかもねー」
「ありえないとは言えないのが我が兄ながらどうかと思います。そういえば、家の鍵は奏兄さんから?」
「うん、サプライズ晩ご飯したいって言ったら貸してくれたよ」
「この日に限ってとはいえ、奏兄さんもあなたにちょっと甘すぎじゃないですか?」
「なんだかんだ言って信頼されてるからね!」
「あなたと奏兄さんの間の謎に厚い友情については置いておくとしても、まあ信頼というか信用というか……そういうのはあるんでしょうね。借りたのをいいことに勝手に合鍵作ったりはしないとかそういう」
「そんな見え見えの手で合鍵ゲットしても面白くないって俺が考えるのを奏もわかってるからね」
「でもピッキングはアリだと思ってるんでしょう?」
「まあねー」
「言っておきますけど犯罪ですからね」
「訴えられないタイミングでしかしないよー。妹ちゃんからの信頼はまだまだって感じかぁ」
「いや、あなたが犯罪行為を犯罪にならないように行うことはわかっていますが、訴えられなくても犯罪だってことは忘れないでくださいっていう念押しです」
「それ、遠回しに俺のことある意味では信頼してるって言ってる?」
「……そこ、訊きますか」
「訊きますよ。だってせっかくだからね?」
「……。……まあ、否定はしません」
「ふふふ、いつものツンツン尖って容赦のない妹ちゃんも好きだけど、ちょっとだけ棘を引っ込めて素直になってくれる妹ちゃんも好きだなー」
「あなたはそういうところ、異様にポジティブというか……何でも『好き』につなげますよね……」
「俺は基本的に人間みんな好きだからねー。ま、キミたち兄妹とかはその中でもトクベツ枠だけど」
「光栄……とは間違っても言えませんが、気持ちだけは有難く受け取っておきます」
「……――妹ちゃん、奏に何か聞いたりした?」
「いきなりなんですか」
「奏がふわっとした感じで毎年この日限定で対応和らげるように言ってるんだと思ってたんだけど、もしかしていろいろわかった上で言ってるのかなってね?」
「深読みしすぎですよ。私が知ってるのは、今日が、あなたに焦点を当てて言えば、世間一般で騒がれてるチョコを贈ったり贈られたりする日じゃなくて、一年に一度の、いわゆる誕生日だってことだけです」
「本当にそれだけ?」
「これを聞き出すのも地味に時間かかったんですけどね。奏兄さんは案外人のプライバシーを尊重するので」
「妹のプライベートはあの手この手で探るのにねぇ」
「その先鋒のあなたが言いますか」
「俺は依頼されたオシゴトをしてるだけだよー。ついでに自分の好奇心にも餌をあげてるのは否定しないけど」
「そういうところ、つくづく奏兄さんの友人だと思います。どうせ奏兄さんも『ついでに』中途半端にも満たない情報を与えることで私と深兄さんがあなたにどういう対応をすればいいかあれこれ悩むのを楽しんでるんでしょうし」
「俺が言うのもなんだけど、褒められた趣味じゃないよねー」
「本当にそうですね。類は友を呼ぶというのを痛感します。身内としては『類』は奏兄さんじゃないことを願っていますが」
「身内の贔屓目が発揮されるのそこなんだ? ……で、その中途半端な情報を与えられた妹ちゃんは、なんで奏がわざわざ俺相手にキミたちが多少配慮するように仕向けたのかとか、そんな遠回しなやり方した理由とか、気にならないの?」
「人並みの好奇心はあるので、気にならないと言えば嘘になりますが。この件に関しては、流れのままに任せようと思っていまして」
「ふーん。……妹ちゃんはアレだよねぇ。そういうの、無意識にやってるなら人たらしの才能溢れすぎだし、意識的にやってるなら察したことを的確に対応に反映する手腕に感心しちゃうなー」
「あんまり褒められてる気がしないんですが。なんか含みがありますよね?」
「幼馴染クンたちとかその周りの気持ちもわかるなぁって話。いやー、妹ちゃん、罪な女だよねー。知ってたけど」
「人聞きの悪いこと言わないでください。……私にそんな才能があったら、もっとうまく立ち回ってましたよ」
「妹ちゃんの過去に対してのフクザツな気持ちはなかなか根深いねー。ま、とりあえず俺の渾身の『一般家庭のちょっとしたごちそう』食べて元気出して? もちろんケーキもあるよ!」
「それで一般家庭の素朴な味とケーキの出来具合を再現してくるから、あなた無駄に才能に溢れすぎですよね。発揮のしどころ間違えてません?」
「誰が食べても『一般家庭の味』って思うようなもの作るのって研究の余地があって案外楽しかったよー。妹ちゃん的にも合格だといいなぁ」
「これ合格不合格とかって概念があるやつなんですか?」
「何分俺には『一般家庭の手づくりの味』の基礎がないからさ、正確な判断が下せないんだよね」
「何気に重そうな発言差し込んでくるのやめてくれます? ……とりあえずご相伴に預かりますよ。せっかく作ってくださったんですから」
「ふふ、おいしく食べてくれると嬉しいなぁ」
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