地球最後の瞬間を、君と

空月

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地球最後の瞬間を、君と KASAGI side

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 どうして彼女だったのか、と聞かれても、明確な答えは俺の中にない。
 ただ、その姿を目にした瞬間に、思ったのだ。
 ――ずっと足りなかった何かは、これだと。



「それで処分対象の地球に降り立って現地人のふりして近づくとか、酔狂にもほどがあると思うけど。普通に攫って来ればいいじゃん」

「わかってないなー。それじゃロマンがないだろロマンが」

「偽の記憶刷り込んで近づくのにロマンがあるつもりなの?」


 この地球を処分する任務で組むことになった、相棒というには遠く、同僚というには近い、とりあえず相方ということにしているヤツが言うのに、わかってないなと首を振る。


「『何者でもない』同士としての触れ合いはロマンだろ」

「偽の記憶を前提にしても?」

「攫ったヤツと攫われたヤツって関係から始まるよりは、少なくともロマンがあると俺は信じる」

「……まあ、『運命』感じたって言うなら、それだけでロマンはあるんじゃない。一方的だとしても」

「一方的じゃないかもしれないだろー?」


 言いつつ、そんなことはないだろうなと思っていたりする。
 彼女を見つけてから、ありとあらゆる情報を調べ上げたけれど、俺の抱いていたような気持ちを持っている様子はなかったから。


「別に地球処分自体は簡単だから僕一人でもできるけど、本来は職務放棄だからね、君の行動」

「いやー、持つべきは優秀な相方サマだな!」

「……この任務に選ばれてる時点で、君も相当優秀なハズなんだけどね」


 そうは見えないけど、と言われるが、それはもう耳タコになるくらい言われ慣れている。どうも俺は、馬鹿っぽく見えるらしいので。


「それで? 刷り込む記憶のプログラムは完成したわけ?」

「それはバッチリ。出会った瞬間に発動して、俺と彼女は晴れてオトモダチに」

「なんで恋人同士の記憶にしないわけ? そういう感情なんでしょ、君のは」

「言ったろ? 俺はロマンを重視してんの」


 本来の立場では絶対にありえない、対等な『友人』同士、そこからの告白。それを体験したいのだ。


「……理解不能だけど、それは君にはよくあることだし。まあ、協力してあげるよ。君が彼女に接触してから1週間で『通知』すればいいんだよね?」

「うん。本部からの期限考えたらそれが限度だろ」

「君と彼女のロマンがあるらしい触れ合いは実質2週間だけどそれはいいの?」

「……お前意外に俺の都合気にかけてくれんのな?」

「今時珍しい『恋愛感情』を処分対象の地球人に感じるなんて事例、めったにないから興味があるだけ」

「そっか。まあそういう理由でも協力的なのは助かるけどな!」


 ……本当は、これが俺らが久しく抱かなくなっているという『恋愛感情』とやらなのかはよくわからない。ただ、強い感覚だけがある。
 いつからかずっと、何かが足りないと思い続けてきた、その答えが彼女だと。
 だから傍にいたい。傍に置きたい。失いたくない。……手に入れたい。


「ま、うまくいくことを祈るよ。まあ、ただの地球人相手に失敗も何もないと思うけど」

「そうだな」


 口ではそう言うものの、なんとなく彼女は何かこちらの意図しない挙動をしてくれるのではないかとも思う。だって、俺がずっと求めていた存在が、そんな簡単なものには思えない。
 もちろんそうであってもそうでなくても、彼女に傍にいてほしい気持ちは変わらないけど。


「じゃ、準備もできたことだし、俺は降りるな」

「はいはい、気を付けてね」


 気のない見送りの言葉を背に、俺は地球降下用プログラム――何かイレギュラーなことがあったときのために搭載されている――を起動する。これも、まさかビビッと運命感じちゃったから、みたいな理由で使われるとは思わなかっただろう。

 自分が解析され、分解されて転送される。その僅かな時間の中、思ったのは最初に目にした彼女の笑顔。
 調べ上げた情報では彼女はそうそう人前で笑わないらしいので、きっとそれを見られはしないだろうけど。
 偽の記憶を刷り込んで、近づいて。2週間の間にどれだけ距離を縮められるか、楽しみだなと一人笑った。

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