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新天地へ
しおりを挟む理念や道徳がわずわらしかった。それさえなければ、どんな理由であれども一緒にいられるというのに。
だがもうそんなことはどうでもよかった。今、二人きりで一緒に居られているのだ。
これだけで十分だ、むしろ十分すぎる幸せだ。
譬え、この行為は間違っていると道理や理念に違反していると云われて構わない。
ただ二人は一緒に在りたいだけだ、それはこれからもずっと変わらない想い。
これはとある兄妹の物語――。
規則的な振動と時折車輪とレールが擦れ合う甲高い音に起こされた少年は目を開ける。
眠気が強く瞼が重いものの、頭を振るい眠気を飛ばした後に周囲を見渡す。
窓が見えて確認すると、流れゆく景色とともに見えるのは朝に立つ霧が漂い、また丁度朝日が昇ってきている場面が見えた。
少年は朝日に目をシバシバさせて欠伸をしながら上半身を起こす……それと同時にゴスッと額に強い衝撃が奔った。
「いっつぅううっ!」
一瞬目の前に星が現れるほどに強烈な痛みだったが、何とか耐えられた。
ジンジンと響く痛みに耐えて見開くと、視界に入ったのが天井。今更ながら少年は二段ベッドで寝ていたことを今更ながら思い出す。
更に見渡しては沸々と思い出していく――ここは列車の寝室内で2人用B寝台個室『デュエット』であることを。しかし、なぜこの電車を使っているのだろうかと……頭をぶつけても尚眠気が残っている頭を使って思い出そうとしたとき。
「兄さん?」
その声を聴いた少年が顔を上げると、二段ベットでキョトンとした表情で少年を見つめる栗髪ロングヘアーの少女がいた。
その声と顔で少年はようやく全て思い出した、この夜間列車に乗車した理由と誰と一緒に乗車したか。
そんな返答もせず動かない少年に疑問を感じたか、少女――雪代 紗綾は梯子を使って降りると同時に、少年にベットに入って寄り添った。
「大丈夫? 派手に頭をぶつけたから、混乱してる?」
「……いや、少しばかり眠気と痛みでちょいと混乱しかけたが、もう大丈夫だ」
少年、雪代 永斗は紗綾に微笑むと同時に彼女の頭をつかんで引き寄せてはキスをした。
突然のキス行為に驚いて目を見張る紗綾であったが、すぐに永斗の首に腕を回すと同時に抱き着いて身を委ねた。お互いに唾液を交換し合い、舌で絡めあう情熱的なキスを仕出す。
「んっ……んんぅ」
紗綾の荒くも色っぽい息遣いに興奮を覚えたのか永斗は更に深い口づけと彼女の服に手をひそめようとしたが――。
「っぃて」
カリと永斗の唇が甘く噛まれたことで中断された。噛まれた刺激と衝撃に驚いて永斗が慌てて離れると、紗綾は悪びれた様子なく舌を出して笑っていた。
「朝からがっつきすぎ、ここは公共よ」
「すまん、つい我慢できず……」
永斗がしょぼくれる姿を見て、苦笑してしまう紗綾。
普段の永斗を見ている紗綾は、普段頼りがいのある兄がまるで弟のように思えてほほえましく思えたからだ。
「あっちに着いて、準備が終わってから続きをしましょう? 大丈夫よ……邪魔する人もいないし、時間もたくさんあるんだから」
「……あぁそうだな、そうだったな」
永斗は苦笑して、紗綾の頭を撫でる。撫でられたことに驚愕し目を見張る紗綾であったが、自然に撫でる手にすり寄っては甘えてくる。
「相変わらず、頭を撫でられるのは好きなんだな」
「当然でしょ。だって兄さんの手なんだもの」
当たり前のように答える紗綾に永斗は苦笑してしまう。
普段はしっかり者のくせに甘えん坊の彼女が無性に愛おしくなって、永斗は彼女を再度抱きしめる。
「……もうっ、今だけよ」
紗綾は諦めたように言うも、その声音は明るくむしろ嬉しそうにしては抱きしめ返す。
二人はお互いの表情を緩ませてはこう思っていた――『幸せ』だと。
しかし、傍目から見たら異常な光景でしかとらえられない。
お互いは兄妹であるというのに、抱きしめあい、深くキスしたり、一緒のベットに入っているなど――ありえないと他者が見たら云うだろう。
それでも二人にとっては関係ない。お互いに愛し合って、寧ろこの行為を望んでいたのだから……そしてもう我慢する必要もなくなった。
二人は愛し合うために、全てを捨ててきた……学校も家族も友人も何かも全てを。
これから先苦労することがあったとしても二人は構わなかった――『なんとかするさ』と能天気なことを考えて、二人は向かう。
「……まだ離れないのか?」
「ん、あともう少しっ!」
二人はイチャラブしながら向かっていく、自分たちが暮らす新しい新天地へ――。単語
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