兄妹は愛し合う

春雷海

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引き裂かれた兄妹(1)

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 昨年の春。高校一年時から始まった永斗と紗綾の睦事は、突然終わりを迎えた。

 その日は浮かれていた。永斗は勉学を懸命に行ったお陰で大学に無事受かって無事卒業、紗綾は高校三年に上がることができた。

 両親は仕事でおらず、永斗と紗綾は二人きりで祝いを上げた――最初はケーキやジュースを食べて飲んではゲームをしたり、DVDを見て笑って過ごしていた。だが、次第に距離感が迫り、いつ親が帰宅するのか分からないのにお互いに求めあう欲求を抑えきれなくなった。

 歯止めが利かなくなった紗綾は永斗は誘い、永斗は紗綾を求めて、自室のベットで組み伏せて獣の様に盛った。
 実の兄妹で求め合うことなど禁忌と知っていながら体を重ねた。そして、両親が不在もあってそれがより一層に興奮を覚え、また喜びの声も上げた……二人で過ごせる時間がひと時でも長く過ごせるのだから。

 その後、時間を気にせず、お互いを求めあって何度も精を吐き出した後にそのまま泥の様に眠ってしまったのが運の尽きだった――普段ならしない失態、行為が終わったら部屋に戻るということをしてしまった。

 朝を迎えたことで二人の関係がついに、発覚してしまった。事の発展は二人の母親によるサプライズだ。
 母親は家族の中でもそういうのが一番好きで、記念日にいつも行う。子供たちを驚かせて喜ぶ顔を見るのが特に好きな人だ。

 だからこそ、驚かしてやろうと忍び足で、まずは永斗の部屋に入ったのを見て絶望した――そこにはあられもない姿で眠っていた永斗と紗綾の姿があったのだから……。

 永斗たちの関係は両親に知れ渡ることとなり、当然その日に家族会議が始まった。

 いや、会議どころではなかった。母親はただ俯いて涙を流していた、父親は怒り狂って永斗を何度も殴りつけた。永斗はただ耐えて、紗綾は涙を流して父親を止めようとするも突き飛ばされた――地獄絵図とまでは言わないものの、修羅場に満ちていた。

 * * * * *

 そんな濃くて、混乱と怒りに満ちた一日を終えた後に永斗と紗綾の生活が大きく変わった。
 永斗は大学寮に入れられてしまい、紗綾は親の監視の下で厳しく帰宅時間も設置されてしまった――あのような行為を及ぶ兄妹を一つ屋根の下に置いておく気にもなれなかったのだろう。

 永斗は大学寮で余儀なく生活された――味気ない寂しい生活だった。

 大学生活は特に友好関係は問題なく、男女ともに存在していた。
 勉学は苦手な教授はいたものの、それでも高校と違い、興味のある授業がたくさんあり楽しめていた。
 親は大学には近親相姦のことを言わなかったらしい――当然のことだ、誰も家の汚点はしゃべられないだろう――から特段いじめられることはなく、いたって普通であった。

 衣食住に関しても一人でも生活できるように仕上げられていたため、特に問題はなかった。

 だが、心が何かぽっかりと空いたように虚無感と持て余し感があった。

(紗綾……)

 紗綾がいない。それだけで永斗は虚無感が強かった……いつも一緒にいた彼女がいない。それだけで永斗の気持ちは折れかける寸前だった。

 しかし、永斗はそれでも気力を振り絞っては大学生活に目を向けて懸命に取り組んだ。

 大学では勉学を、休日には日雇いのアルバイトや高額の引っ越しアシスタントに参加し、なるべく紗綾のことを思い出さないようにした――だがそれでも余った時間になると脳裏に浮かぶのは紗綾の笑顔だ。

 会いたい、笑顔を向けてほしい、喋りたい――それすら今はできない。
 携帯電話は取り上げられた挙句に固定電話でかけようにも、両親がいるためそれもできない……そもそも紗綾に電話を出させないだろう。

 調べようにも両親にばれてしまえば、彼女の立場は余計に悪くなるうえに監視がさらに厳しくなるだろう。彼女の人生が更に負荷がかかってしまう……そう考えると永斗はそれが出来なかった。

 これを機に永斗は紗綾と普通の兄妹に戻るべきなんだろうかと考えた。
 そもそも世間や道徳的に兄妹で恋愛、しかも抱く抱かれるの関係などおかしい。すでに間違いを犯してしまったもののこの関係を打ち切るべきのだと自分に言い聞かせた……。

 だが結局はそれが出来ずにいた。

 寮生活に赴いてなお、様々な女学生と喋ったり遊ぶことはあった――しかしどの女学生を見ても、紗綾を基準として結局は恋することなく、仲のいい友達でしかなかった。

 そして夢を見るのだ――紗綾と過ごしてきた日々を、彼女の笑顔と言葉を、裸体を。

 夢から覚ませば、腕は知らずのうちに求めるように伸ばしており、涙を流していた。

「紗綾……」

 いつも傍らにいてくれた少女の影を求めて、永斗は言葉を紡げるもそれは届くことなく部屋の中に響いた。
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