恋の微熱に溺れて…

和泉 花奈

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1度:犬系には要注意

2話

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もっと仲良くなりたい。もっと普通に話せるようになりたい。
もう少し頑張って話せるように努力しようと決意した。


           *


...なんて思ったものの、やっぱり上手く喋れるわけもなく。
そんな私に呆れることなく、慧くんは変わらずに私をご飯に誘ってくれる。
それが心の支えで。人として嫌われていないということに安心する。
いつまでこのプロジェクトが続くか分からないが、もう少し長く続いてほしい。もう少し一緒に居たい。

「京香さん、お昼行きませんか?」

今日も慧くんが声をかけてくれた。もちろん、私の答えは...。

「うん。行こっか」

嬉しい気持ちを胸の内に秘めながら、今日も慧くんとお昼を共にする。
相変わらず、いつも通り途切れ途切れでお喋りをする。
最初は気まずく感じていたが、最近はこの空気に慣れたこともあり、安心している自分もいる。
慧くんとは、こうして仕事上で仲良くできるだけでも嬉しい。プライベートで繋がりを持ちたいとは思っていないが、せめて連絡先だけは知りたい。特に必要もなく連絡したりなんかはしない。迷惑はかけないから、慧くんとの繋がりが欲しいだけだ。
多くは求めないが、それでも求めてしまう。それが誰かを好きになるということなのかもしれない。身を持って知った。

「京香さん。僕、京香さんとこうして一緒にご飯を食べたり、お喋りできるようになれて嬉しいです」

不意打ちにそう言われた。胸が高鳴った。
どうして今、そんなことを言うの?そんなことを言われたら、もっと意識してしまう...。

「そう言ってくれて、ありがとう。私も嬉しい。こうして一緒にご飯を食べたり、お喋りできるようになって...」

これぐらいじゃ、私の気持ちはバレないよね?!
バレたらお終いだ。ここには居られない。越えてはならない線は越えない。
あくまで仕事上で大切な仲間であって。それ以上でもそれ以下でもない。
慧くんはカッコよくて。モテる。きっと彼女だっていると思うし、休日に可愛い女の子とデートしているであろう。
だから、私は期待していないし、それ以上は望まない。
この気持ちがいつか消えてなくなることを信じて、ただ一人想い続けるのであった...。

「僕も京香さんにそう言ってもらえて嬉しいです。照れますね。こうやってお互いに褒め合うと...」

確かに恥ずかしい。それでも慧くんに言ってもらった言葉は嬉しいので、嬉しさの方が勝っている。

「だね。あはは...。でも嬉しいからありがとう」

「いえ。こちらこそです......」

そのまま気まずい雰囲気になり、沈黙が続いた。
でも、今日はいつもと違って、悪くない沈黙だったので、気分が良いまま会社に戻った。


           *


終わりは突然、告げられた。

「来週でこのプロジェクトは終了となります。皆さんが協力してくれたお陰です。本当にありがとうございました」

なんだかんだこのプロジェクトのお仕事が面白くて。このメンバーと離れるのが寂しい。
それに、慧くんともうこんなふうに関われる機会が減るのも寂しくて。
もう終わりを痛感し、日常に戻るのが嫌だなと感じた。

「今まで頑張ってもらったお礼と、プロジェクトの成功をお祝いして、打ち上げを開催するので、皆さんよかったら参加してください」

打ち上げか...。打ち上げなんてやるの、学生の頃以来かもしれない。
慧くんも参加するのかな?もし、参加するのであれば参加したい。
お昼休みに聞いてみようかな。お昼が待ち遠しく感じた。


           *


「打ち上げですか?一応、僕は参加するつもりです」

慧くんが参加すると知り、内心安心した。

「京香さんも参加しますか?」

逆に質問返しされた。もちろん、私の答えは決まっていた。

「私も一応、参加する予定だよ」

私の言葉を聞いた慧くんは、安心した顔をしている。
慧くんも私が参加するかどうか、気にしてくれていたのかな?
.....って、それはさすがにないか。話の流れからして、聞かないと失礼だとでも思ったのであろう。
彼に深い意味はないと知りながらも、一瞬期待してしまった浅はかな自分が憎い。
ただ、彼が打ち上げに参加すること自体は嬉しいので、心の中で喜んだ。

「そうなんですね。打ち上げ、楽しみですね」

「そうだね。楽しみだね」

もう一緒にお昼を食べる時間が終わる悲しさが、今の私の心を襲った。
思いっきり打ち上げを楽しみ、慧くんと一緒に過ごす時間を満喫しようと決意した。


           *


「それではチームの成功を祝って、乾杯」

「「「「「「カンパーイ!!!!!」」」」」」


最終日を迎えてしまった。これで最後か。
結局、最後まで連絡先を聞くことはできなかった。
今思えば、これでよかったと思ってる。もし、私が連絡先を聞いていたら、慧くんは優しいから嫌でも教えてくれたと思う。
私はそこまでして、彼の連絡先を知りたいとは思わない。
今日まで一緒に過ごしてきた大切な思い出を、胸にしまっておくことにした。

「京香さん、お疲れ様でした。一緒にお仕事できて嬉しかったです」

私も嬉しかった。こんなに好きな人の傍に居られたのだから。

「こちらこそ。これからも部署は一緒なので、このチームが解散してもよろしくね」

もうここまで深く関わることはなくても、仕事上の付き合いがなくなるわけではない。
それでも、付き合いがあるのだから、まだ良い方だと思っている。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

爽やかな笑顔でそう言われた。
その笑顔に思いっきり当てられた私は、まだそんなに酔っていないのに、一気にお酒が回った。

「すみません!ビールおかわり」

慧くんが隣に座っていると思うだけで、ドキドキしておかしくなってしまう。
緊張を和らげるために、お酒をハイペースで飲んだ。

「京香さん、ペース大丈夫ですか?」

「らいじょーぶ。結構、あたし、おしゃけ強いからぁ」

「いや、大丈夫じゃないですよ。もう呂律が回ってないですよ?」

自分ではその自覚がないため、ちゃんと喋れているつもりだ。

「しょんなことないもん。慧くん、虐めないでぇ...」

酔っぱらいの私に絡まれて、慧くんは困った表情を浮かべていた。
それもそうか。誰だって酔っぱらいに絡まれたら迷惑だ。
私はここで記憶を失った。慧くんに嫌われたくないという気持ちから、現実逃避するために、意識を手放した。


           *


「んん...」

目を覚ますと、真っ先に知らない天井が視界に入ってきた。
あれ?ここはどこ?慌てて起き上がろうとしたら、今度は天井ではなく、慧くんが視界に入ってきた。
一体、これはどんな状況なの?私は状況を上手く呑み込めないまま、この状況に困惑していた…。
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