マリスセイバー ー精神の行き着く先にー

真相

「な、なんだ⁉️　だ、誰だ！貴様は？」　カーオルは焦りながら言い放つ。

「困りますね…こういう使い方をされては」

　髪型は黒の長髪で、漆黒のマントを纏い、黒のシルクハットを被り、顔は真っ白。メイクでもしているのだろうか。口紅は真っ赤に塗りたくられている。眉毛はない。怪しい雰囲気の男が話しかけてくる。

「本来、この拡張世界はこれから真の幸福が訪れてくる前の実験場。まだ試作段階です。ここを使っていいと許可したのはダンティ、ここの執事だけです。誰もが使えるような、ただの遊技場にされては困るです。執事にはこの街の統制をとらせるため愚かな町民達の管理に使っていいという事だけ許可していましたからね。無論、町長の行動の監視も含めてね…それとターケン、あなたを苦しませる事も許可していました。」

「なんだと⁉️」

　急に現れ落ち着いた物腰で話しかけてくる謎の男。若くも見え、それかどこか何百年も生きているかのような雰囲気も持っている。頭が追いつかなかった。

「案の定、この二階まで来るのは想定内でした。クリアできるかどうかは私も楽しんで見てましたよ。人の感情の強さを再度認識しました。」
　
感心したように謎の男は言うが、表情は無表情だ。

「私の事を知っているのか？」

「フ…そうですね。カーオルが各地を旅をしてヌーリコを訪れましたよね？ヌーリコを訪れた者の、その後の行動はチェックしてますのでね。そして、その後、ターケン、あなたと出会った…そして、あなたという『存在』を知ったわけです。運命。そう運命なのか…と。」

「何を…言っている？」

　「あなたの耳かざり…フッ。これをご覧なさい」
　
謎の男は漆黒の長髪をかきあげ耳の飾りを見せてみせた…私と同じ物だ。

　「…これは一体？　何故お前が私と同じ耳飾りを？　お前は誰なんだ⁉️」

　「今はまだ教える気にはなれませんね。知りたかったらヌーリコにでも行ってみるといいでしょう。そこの『クローンのカーオル』と一緒にね。」　　謎の男は、冷たい視線で言い放つ。

「な、なんだと！クローンだと？何わけのわからない事言ってやがる！」　カーオルはいきりたつ。

「お前達の事はずっと監視していると言いましたよね。あの時の、そう…ターケンのお前への攻撃は致命傷だった。そこで私が、私の組織が…ターケンよ。お前がその場から去った後にまだ確実に死んでいなかったカーオルを引き取り拡張エネルギーで複製に成功したのだよ。お前一人ではボンタの二階まで侵入できるのか念のためにクローンのカーオルを隣に寝かせておいたのだ。運がいい事に刺された時の記憶は無くなっていたようでスムーズに仲良くこれたみたいでよかったがな」

　「な…なんだと…デタラメだ」

　「そして、当の本人のカーオルは、今は元気にピンピンしているぞ。我が組織の一員となってな！」

　頭をトンカチで叩かれたかのごとく衝撃発言をこの謎の男は言った。

　「ふざけんじゃねぇー！　さっきから訳のわからない事ばかり！！俺がクローンなわけないだろうが⁉︎そんなわけあるわけない！　今までの人生が証明しているぜ！！」
　　カーオルは血相を変えて言い放つ。

　「フ、ならば聞こう。その後頭部の傷はなんだ？　今日の朝プワラの離れの宿で起きた時、宿に泊まるまでの直前の記憶はあるのか？言ってみなさい。」　

「なっ、そりゃ当然歩いて……（思い出せない…）」

　「フ、そういう事だ、カーオル。素晴らしいぞ、神秘の力は更に進化している… お前の産みの親は私という事になるな」

　「馬鹿言ってんじゃねえ！俺の親は…。ターケン！こいつの口車に乗るなよ！！」

　「………」

　「おい！ターケン！なんとか言え！」

　「ターケンよ。貴様がカーオルを刺した時、思い出せ。貴様は怒りのコントロールができないのだ。貴様の血がそうさせるのだ。そしてそれに加えさらに増幅させる物をお前は備え付けているから尚更、手に負えない（古来よりの因果か…）」

　そう言い髪をかきあげ再び耳飾りを見せてきた。

「これだ…これにはエネルギーを増幅させる力が備わっている。こんなに小さくともな。フッ、父から頂いた物だろう？　この後、貴様の父にも接触しよう…刑務所に囚われているとはな」

　「メンソン！」　急に町長が声を荒げた。

「ラサームの奴めは半年ほど前に脱走した！　今、奴の所在や生存は確認されていない！」