29 / 32
増幅
しおりを挟む
「脱走…それもまた困りましたね。それと町長よ。様をつけるのを忘れるなよ。」
「あ…はい、メンソン様」 あの町長が渋々とはいえ人に頭を下げているのを初めてみた。
「フ…ターケンよ。貴様はこんな小悪党ごとき町長を倒して満足か?もっと大きな力と闘い抗う気はないのか?」
「大きな力?」
「貴様は自分が誰か分かっていない…だから町長とわかり合おう、街をよくしよう、と言っただけのカーオルを槍で刺す。コントロールできなかったとしてもな。お前の中には有り余ったエネルギーが溢れているのだ。このままではお前の中には現場に満足できないお前の心の中に巣食う『鬼』を飼い慣らす事はできまい! 真実を知れ、ターケン。そうだ、いい事を思いついた、ターケンよ。お前が真実を探す気になるように手ほどきをしてやろう。ハァーッ…『ダビラバピーポ ダビラバピーポ』」
メンソンと名乗る男は何か念仏の様なものを唱え始めた。すると、
「ウッギャアアアッ!」町長が苦しそうに喚いている。次の瞬間、信じられない事に町長の背中から奇怪な羽が生え出してきた。 そして見る見るうちにさらにメタボリックシンドロームと言わざるを得ない体が太り誇大化していく。いや、服を破りさり巨大化していく。目玉も膨張しギョロギョロと左右違う方を向いている。まさに化け物。モンスター化した。あり得ない。大きくなった口から、「ハアー、パギィパギィ!」人ではなくなった様だ。 私は心の中でまだきっと『あれ』だろうと現実逃避していた。拡張世界の非現実空間をメンソンという男が我々に見せているのだと。
しかし、「これは、現実の世界ですよ。淡い期待はしないでくださいね。」の一言で私の期待は打ち砕かれた。確かに現実世界ならではの感覚、ハッキリとした情景はそのままだから。先程、このメンソンという男が現れた時から、当たり前の感覚と日常は更に一変した。
「プギャァーッ! 」羽を広げパタパタと振り始め部屋の天井まで飛んでいっている。そして、
「ブッ!!」あのでかい口から唾液を口の先端を尖らせて水鉄砲の様にこちらに飛ばしてきた。驚きのあまり私は膠着してこの攻撃を食らう…次の瞬間、衝撃と共に地面に倒れる。
「危ない!ターケン!ボサっとしてるな!」 カーオルだ。カーオルが疾風のごとく駆けつけてくれて、私に体当たりをする様にして私をのけぞらせてくれたおかげで町長の粘液を喰らわずにすんだ。
「フ、ターケンよ。お前は町長を粛清するのがお前の行動原理、原動力だったな。だから町長とはこの場で決着はつけさせない。見ろ…あの異形と化した町長を。拡張世界の中ではなく今我々は現実の世界にいるのだ。今のお前では勝てない。今のお前では到底理解が及ばないだろうが町長は『想いの具現化』も使う。この世界にはない全く別の世界のものを兼ね備えたのだ。最もお前が真の力を出せたのなら話は別だがな。(父のナサームがいないから無理だろう)さあ、町長よ。我々の組織の根城まで飛んで行って待機していろ。どうする? ターケン。幸い、ここは拡張世界が使える空間。チャンスだぞ…」
話の展開が急すぎて頭がついていかない。しかし、ここでなんとかしないと町長は逃げていく。どうするか。しかし本能なのか過去のDNAなのか。私の体が自然に動く。自然にこの耳飾りに手が伸びた。そして外して二本の刀が交差する紋章の様な模様の耳飾りを両手でじっくり握りしめた。
「ほう…」
「先程からの話の流れで増幅させるエネルギーがあると言っていたよな? もう賭けるしかないんでな」
私は二本の刀の模様を見て、これだ。この武器だ、と。具現化しろと、強く念じた。すると次の瞬間、赤色の光が手のひらから、徐々に徐々に大きくなっていくエネルギーの様な物が発現した。更に赤い光は長くなっていく。日常は何処かへ飛んでいく。あまりの眩しさに目を閉じた。そして、少しずつ両の眼を見開いていくとそこには二本の赤い刀が左右一本づつ握りしめられている。実物ではない。エネルギーの具現化だとすぐ理解した。
——出せた——
「オオオー。いいぞ、ターケンよ。(やはり貴様は『ロタンゼルスの…』)紋章を強く念じたか。面白い」
メンソンは不気味に高揚している様だ。
「あ…はい、メンソン様」 あの町長が渋々とはいえ人に頭を下げているのを初めてみた。
「フ…ターケンよ。貴様はこんな小悪党ごとき町長を倒して満足か?もっと大きな力と闘い抗う気はないのか?」
「大きな力?」
「貴様は自分が誰か分かっていない…だから町長とわかり合おう、街をよくしよう、と言っただけのカーオルを槍で刺す。コントロールできなかったとしてもな。お前の中には有り余ったエネルギーが溢れているのだ。このままではお前の中には現場に満足できないお前の心の中に巣食う『鬼』を飼い慣らす事はできまい! 真実を知れ、ターケン。そうだ、いい事を思いついた、ターケンよ。お前が真実を探す気になるように手ほどきをしてやろう。ハァーッ…『ダビラバピーポ ダビラバピーポ』」
メンソンと名乗る男は何か念仏の様なものを唱え始めた。すると、
「ウッギャアアアッ!」町長が苦しそうに喚いている。次の瞬間、信じられない事に町長の背中から奇怪な羽が生え出してきた。 そして見る見るうちにさらにメタボリックシンドロームと言わざるを得ない体が太り誇大化していく。いや、服を破りさり巨大化していく。目玉も膨張しギョロギョロと左右違う方を向いている。まさに化け物。モンスター化した。あり得ない。大きくなった口から、「ハアー、パギィパギィ!」人ではなくなった様だ。 私は心の中でまだきっと『あれ』だろうと現実逃避していた。拡張世界の非現実空間をメンソンという男が我々に見せているのだと。
しかし、「これは、現実の世界ですよ。淡い期待はしないでくださいね。」の一言で私の期待は打ち砕かれた。確かに現実世界ならではの感覚、ハッキリとした情景はそのままだから。先程、このメンソンという男が現れた時から、当たり前の感覚と日常は更に一変した。
「プギャァーッ! 」羽を広げパタパタと振り始め部屋の天井まで飛んでいっている。そして、
「ブッ!!」あのでかい口から唾液を口の先端を尖らせて水鉄砲の様にこちらに飛ばしてきた。驚きのあまり私は膠着してこの攻撃を食らう…次の瞬間、衝撃と共に地面に倒れる。
「危ない!ターケン!ボサっとしてるな!」 カーオルだ。カーオルが疾風のごとく駆けつけてくれて、私に体当たりをする様にして私をのけぞらせてくれたおかげで町長の粘液を喰らわずにすんだ。
「フ、ターケンよ。お前は町長を粛清するのがお前の行動原理、原動力だったな。だから町長とはこの場で決着はつけさせない。見ろ…あの異形と化した町長を。拡張世界の中ではなく今我々は現実の世界にいるのだ。今のお前では勝てない。今のお前では到底理解が及ばないだろうが町長は『想いの具現化』も使う。この世界にはない全く別の世界のものを兼ね備えたのだ。最もお前が真の力を出せたのなら話は別だがな。(父のナサームがいないから無理だろう)さあ、町長よ。我々の組織の根城まで飛んで行って待機していろ。どうする? ターケン。幸い、ここは拡張世界が使える空間。チャンスだぞ…」
話の展開が急すぎて頭がついていかない。しかし、ここでなんとかしないと町長は逃げていく。どうするか。しかし本能なのか過去のDNAなのか。私の体が自然に動く。自然にこの耳飾りに手が伸びた。そして外して二本の刀が交差する紋章の様な模様の耳飾りを両手でじっくり握りしめた。
「ほう…」
「先程からの話の流れで増幅させるエネルギーがあると言っていたよな? もう賭けるしかないんでな」
私は二本の刀の模様を見て、これだ。この武器だ、と。具現化しろと、強く念じた。すると次の瞬間、赤色の光が手のひらから、徐々に徐々に大きくなっていくエネルギーの様な物が発現した。更に赤い光は長くなっていく。日常は何処かへ飛んでいく。あまりの眩しさに目を閉じた。そして、少しずつ両の眼を見開いていくとそこには二本の赤い刀が左右一本づつ握りしめられている。実物ではない。エネルギーの具現化だとすぐ理解した。
——出せた——
「オオオー。いいぞ、ターケンよ。(やはり貴様は『ロタンゼルスの…』)紋章を強く念じたか。面白い」
メンソンは不気味に高揚している様だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる