96 / 182
□29俺の意志はー智則
昨夜の喧騒などなかったかのように優雅な朝のコーヒータイムを終え、九条がまたトレイルランニングに誘ってきた
「昨日あんだけの怪我をしたんだろう。今日はやめておけ」
どこかをかばって動いているようにも見えないが、昨日あれだけの出血を伴う怪我をしたのだ。九条の体をジロジロ見ながら言うと、ふふっと笑われた。
「智則、そんなに見つめないで。照れちゃう。それとも、智則もほしいと思ってくれているの?」
思わず飛び退った。
ガタンと倒れたイスを見て九条が悲しそうな顔をした。
ブンブンと振られていた尻尾がペタンと落ちた気がした。
「冗談だよ……ね、今日、起業家達の集まりがあるんだ。智則も行ってみない?面白いよ」
行ってみたい気はする。だがこのリストバンドを着けたままというのは抵抗がある。
「外すよ、かわりに足にGPS付きのアンクレットをつけさせてもらうけど」
最近になって屋内ではアンクルモニターは外されていた。逃げようないと智則が悟ったことが大きいのだろう。逃げたいのは山々だが。
起業家たちの集まりは面白かった。学ぶことが色々ある。同時にやはり焦燥に駆られる。このままここにいても九条のもとにいても、こうやって得た知識はどこにも使われない、外に出れない以上、使う機会がないのだ。
帰りの車内で説得を試みる
「なあ、俺は山下教授のゼミに入るために帝都大学に入ったんだ。山下教授はリモートを推奨していない。このままここにいたら俺はゼミには入れなくなる」
「だったら山下教授のゼミに入らなければいいじゃん。ゼミは他にもあるんだよ。智則は巣にいないと」
……
言葉が届かない
智則は山下教授のゼミに入るためにと言ったのに
「帝都大学にβの頭脳で入るのはとても大変だったんだ。色んな所で無謀だって言われた。それでも教授に会いたくて俺は頑張って勉強したんだ。それを認めてくれないか」
「違うよ。山下教授じゃない、僕に会うために勉強をしたんだよ。そういう運命だったんだ」
……
ダメなのか。
九条は俺の好みが分かっている。今日の集まりといい。だから俺を認めてくれているんだろうと思うのに、でもやはり俺の意思を尊重はしてくれないのだ
九条は俺に何を求めているのだろう……。
車内に重たい空気が流れた。
数日経ってまた九条がトレイルランニングに誘ってきた
今度は行くことにした。
九条の怪我は恐らく直っている。
βであれだけの出血をしていたらまだ安静にしてなければならないはずだが、αならば怪我の治りも早いと、ネットで検索してわかった。
ネットには都市伝説的なものも書かれていた
『アルファーの位が上がれば上がるほど傷の治りは早い。その代償として、負傷期間中は動物的本能が強くなる』
これが正しいかどうかは不明だ。
けれど、全くの誤情報ではないのだろう
猛の家にいた頃、猛に優の見舞いに行きたいと申し出た。あんなことをされても大切な大切な幼馴染だ
猛は『優は今、回復期だ。そんな最中にお前が行くのは危険だ。智則、怪我を負ったαのそばには近寄るな。特に上位種だ。やつらの回復力は凄まじい。放置しても死にはしない。下手に近づけば獣になったαに食われるだけだ』そう言って面会に行くのを許してはくれなかった。
あのタオルが赤く染まった日の翌朝の九条は、怪我を負ってるように見えなかった。一晩で回復したのだろう。
案の定、九条は通常運転だった。
5本目智則がふらつき始めたが、九条は難なくこなしていた。
3本目までは俺の方がリードしていたのにな……
気が散ってしまったせいで足を踏み外した。
九条が慌てて手を伸ばした。
「優っ」
癖でついつい呼んでしまった。はっとして伸ばされた九条の腕をつかむのに躊躇った。
幸い小さな崖とだったので大した怪我しないで済んだ
5本目は途中で U ターンをして帰ってきた。そのせいか今回は目が冴えて寝落ちすることは全くなかった
九条はずっとずっと無言で、智則はまた傷つけしまったと、凹んだ。
本来、被害者は俺、なのに……
「昨日あんだけの怪我をしたんだろう。今日はやめておけ」
どこかをかばって動いているようにも見えないが、昨日あれだけの出血を伴う怪我をしたのだ。九条の体をジロジロ見ながら言うと、ふふっと笑われた。
「智則、そんなに見つめないで。照れちゃう。それとも、智則もほしいと思ってくれているの?」
思わず飛び退った。
ガタンと倒れたイスを見て九条が悲しそうな顔をした。
ブンブンと振られていた尻尾がペタンと落ちた気がした。
「冗談だよ……ね、今日、起業家達の集まりがあるんだ。智則も行ってみない?面白いよ」
行ってみたい気はする。だがこのリストバンドを着けたままというのは抵抗がある。
「外すよ、かわりに足にGPS付きのアンクレットをつけさせてもらうけど」
最近になって屋内ではアンクルモニターは外されていた。逃げようないと智則が悟ったことが大きいのだろう。逃げたいのは山々だが。
起業家たちの集まりは面白かった。学ぶことが色々ある。同時にやはり焦燥に駆られる。このままここにいても九条のもとにいても、こうやって得た知識はどこにも使われない、外に出れない以上、使う機会がないのだ。
帰りの車内で説得を試みる
「なあ、俺は山下教授のゼミに入るために帝都大学に入ったんだ。山下教授はリモートを推奨していない。このままここにいたら俺はゼミには入れなくなる」
「だったら山下教授のゼミに入らなければいいじゃん。ゼミは他にもあるんだよ。智則は巣にいないと」
……
言葉が届かない
智則は山下教授のゼミに入るためにと言ったのに
「帝都大学にβの頭脳で入るのはとても大変だったんだ。色んな所で無謀だって言われた。それでも教授に会いたくて俺は頑張って勉強したんだ。それを認めてくれないか」
「違うよ。山下教授じゃない、僕に会うために勉強をしたんだよ。そういう運命だったんだ」
……
ダメなのか。
九条は俺の好みが分かっている。今日の集まりといい。だから俺を認めてくれているんだろうと思うのに、でもやはり俺の意思を尊重はしてくれないのだ
九条は俺に何を求めているのだろう……。
車内に重たい空気が流れた。
数日経ってまた九条がトレイルランニングに誘ってきた
今度は行くことにした。
九条の怪我は恐らく直っている。
βであれだけの出血をしていたらまだ安静にしてなければならないはずだが、αならば怪我の治りも早いと、ネットで検索してわかった。
ネットには都市伝説的なものも書かれていた
『アルファーの位が上がれば上がるほど傷の治りは早い。その代償として、負傷期間中は動物的本能が強くなる』
これが正しいかどうかは不明だ。
けれど、全くの誤情報ではないのだろう
猛の家にいた頃、猛に優の見舞いに行きたいと申し出た。あんなことをされても大切な大切な幼馴染だ
猛は『優は今、回復期だ。そんな最中にお前が行くのは危険だ。智則、怪我を負ったαのそばには近寄るな。特に上位種だ。やつらの回復力は凄まじい。放置しても死にはしない。下手に近づけば獣になったαに食われるだけだ』そう言って面会に行くのを許してはくれなかった。
あのタオルが赤く染まった日の翌朝の九条は、怪我を負ってるように見えなかった。一晩で回復したのだろう。
案の定、九条は通常運転だった。
5本目智則がふらつき始めたが、九条は難なくこなしていた。
3本目までは俺の方がリードしていたのにな……
気が散ってしまったせいで足を踏み外した。
九条が慌てて手を伸ばした。
「優っ」
癖でついつい呼んでしまった。はっとして伸ばされた九条の腕をつかむのに躊躇った。
幸い小さな崖とだったので大した怪我しないで済んだ
5本目は途中で U ターンをして帰ってきた。そのせいか今回は目が冴えて寝落ちすることは全くなかった
九条はずっとずっと無言で、智則はまた傷つけしまったと、凹んだ。
本来、被害者は俺、なのに……
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。