Ωにうまれて

認認家族

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智則らしからぬ好戦的な態度に驚く

「先輩に近寄らせない為にも必要なことです。接近禁止命令を取ります」
「バカいねぇ。アオイねぇ」
医師に言われて、智則がムッとした。
「訴える権利はあるけど…オススメはしない。君を噛んだのは、あの綾小路家の嫡男で、上位種。その運命ともなれば逃れる術はない。下手に煽って被害を大きくするより、さっさと番ってしまえばいい。遠回りしようと何をしようと結論は変わらない。」

「そんな事はない。確定した未来なんてない!」

…………
そうだね、智則。
君はそうやって切り拓いてきたのだろう。
けれど、智則…………

「うん、そうかもね。βの世界ではね。」
「…………」
「まず、彼は運命による心神喪失を訴え、認められるだろう、運命だしね。
そうなると、責任能力無しで無罪放免。運命となると、道理は曲げられαの理が通る。運命を嫌える裁判官なんていないでしょう?」

「…………先輩はヤツを運命と認識していない」

「うん。それは致死量一歩手前までは頓服したから。用量用法は守らないとダメだよ。で、運命かどうかを争う?薬が完全に抜けた状態で首実検する?君はこれより頑丈な首輪を用意できるの?番って終わりだよ。首実検しないなら、向こうの言い分が通って接近禁止令は取れずいずれ噛まれる」

「先輩がヒートになるとは限らない!」

「うんうん、そうでちゅね~。」

医師の言い方に智則がカッとなって胸ぐらをつかんだ。そしてハッとして手を離した

「…………いいか、高位のαがラットになってそれを向けられたら、Ωは例外なくヒートになる。お前の事が好きだとかそんなのは関係ないんだよ!本能なんだよ!αΩの関係にβは入り込めない!運命と言われたらβは諦めるしかないんだよ!」

医師の声に、医師の声が、嗚咽に変わって、智則は何も言い返せなくなった。
智則に起こる未来、それをこの医師は経験したのだろう、悲痛な声がそれを物語っている。

でも、僕は、智則が好きだ。それも運命の前には消えてしまうのだろうか?

「……先輩、兎に角、ここを出よう。帰ろう、学校に」
「……うん」
「帰ってどうする?もう綾小路は君らの事を調べている。上位αの執着をなめるな。奄美君を何処かに隠しても閉じ込めても探し出してヒートにして番にする。Ωを番にされたくなければ項を切り落とすしか方法がないんだよ!それぐらいしか守る方法がないんだよ!」

項を切り落とす、つまりは殺すしかない、そうこの医師のは言っているのか。
……ぼくは。
彼は、彼の恋人には、何が起こったのだろう。
死ぬのは構わない。けれど、死んだら智則はどうなるのか。
この医師は、医師の恋人は……



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