最上位αの初恋

認認家族

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陸が海をゆっくりみたいというので、一休みする事にした。

「過疎地なんですか、ここ」
波音に耳を澄ませていた陸が言う。
「うちが所有者している島だ。常駐している住民は管理人位しかいない」
陸が目をまんまるにして私を見た。陸、目がこぼれ落ちちゃうよ。ああ可愛いなぁ
「凄いですね。完全な離島。一番近い島だとあそこですかね?何か、頑張ったら泳げそうな…」
陸が指を指す
「近そうに見えるけれど、実際にはかなり離れている。この辺りは潮の流れも特殊で泳いで他の島を目指すのは自殺行為だ」
「船かヘリ、ですか」
「ああ、それ以外にこの島を出る手段はない」
嗤ってしまう。先代……祖父の怨念が籠もった島にこんなふうに陸と来るとは。
愚かな愚かな祖父。私はそうはならない。
『ワシにそっくりだ』私を見つめてそういった愚かな愚かな祖父。
心を壊され人形のような虚ろな瞳をした祖母を抱く祖父、その様な愚か者にはならない、とあの頃は思っていた

先代…祖父は自分の番をこの島に閉じ込めた。祖父は、幼馴染みと婚姻間近だった祖母に一目惚れした。
祖母達の住んでいた村は貧しく健康状態が皆良くなかった。バースの発現が遅れる程に……。時代的にも、片田舎ではΩもαも幽霊や言い伝えのような遠い存在で、Ωの祖母もαの幼馴染みも自身をβだと思っていたのだった。

祖母は二月に一度、栄えた街までいき生地を売っていた。そして偶々地方にきていた祖父に出会い、そのまま宿に連れ込まれて噛まれた。
二人にとって幸か不幸か、祖母は栄養失調でヒートになる事もなく番契約はなされなかった。
時代もあったのだろう。貧しい村では、拐かしや人身売買は身近な事であり、祖母はショックを受けつつも、ねこける祖父をおいて逃げ出した。
至福の時からの絶望…祖父はそこで壊れた。
苛烈なまでに祖母を追い求め、逃げられるくらいならと祖母を狂わせた…。

私はそんなミスをしない。
自分がΩになったと知った日に、初ヒートの時に噛んで契約を成立させる。
私から逃れる隙など与えはしない。
祖父のような様な愚かなまねはしない

陸がスマートウオッチを隠した。
やはりそれがコンちゃんとやらへの手がかりか、だから庇うのか。
「筏などでは転覆するし、なにより作っている間に見つける。逃げる手段はない。その為に買い取った島だ」
そう、逃がしはしない。

陸が後ずさる。私の欲がでてしまったのか
そしてよろめく。陸の体はαからΩへと変化中だ。筋肉の質も変わりつつある中で、足場が凸凹している岩場というで足元も見ずに後ずさればそうもなろう
「うわっ」
手を伸ばして陸を引き寄せる。
ポスン
番が私の京極様の腕の中に納まる。ささくれ立った感情が穏やかになる
「先代が、だ」
怯えていた陸に言う
「え?」
「先代が買い取った島だ。もう使わなくなって、でも、勿体無いだろう?だから研修とか家族旅行とかで使っているんだ。」
陸がひきつりながらも笑顔を向ける
「そ、そうですか…そ、そろそろ戻りますか」
「ああ…」
そう、この島を本来の目的で使用することになるか、保養で使用するか、陸次第だ…。


部屋に戻る
「どうだった?」
宮下が陸に話しかけてきた。
……この男には学習能力が無いのか?そんなことを言えば陸が…
「うん、楽しかったよ。波とかザバザバきてさ~。宮下も体調回復したら行こうぜ」
私の誘いは断ったのに、このオスは誘うの、陸…

「あ、ああ……まだまだ体調微妙だから今度な。」
宮下が青ざめながら私を見た。『断りましたよ!俺!』
……
「あの辺、時々大波くるから、あのシューズがあって良かったろ」
「うん。あのシューズ良かった。京極様、あれ何処のメーカーのですか?俺もほしいので」
陸が、私の与えたものを受け入れてくれる。
αにとっての喜びだ。だが、プレゼントとは思われてなかったのか。まぁ、今はまだ陸への好意は悟られない方がいいから良しとしよう
「あれは、陸がここに初めて来た記念だ。研修旅行の景品だと思え」
「え?ありがとうございます!あれすげぇよかったんで。」
番の笑顔……
「あ、じゃぁ宮下ともオソロなんだ。だから、あれの良さを知ってたんだな」
「……」
「「「…………」」」
陸、本当に君は私を翻弄するね。
宮下は上位αのくせして他人が好きだ。下位αの博愛主義に似ているが、一方で上位だけあって能力は高いから人望がある。私のように一歩引いて、それこそ神のように崇め奉られ、自然と信奉者が増えていく私と、共に苦境を乗り越えてこうぜ!といったリーダー的な一体感を与えつつ信頼出来る能力をもつ宮下。だからか、陸はこのメンバーの中で一番宮下になついている。陸は私を神のようには見ない。けれど私には壁を作る…。
「あ、いや!俺はちょっと前に京極様に記念品は何が良いか聞かれたからタブレットをお願いして貰い済みなんだよ!!!」
「あ、そうなんだ」
陸が軽く返した。残念といった様子がなくて何よりだ。
宮下が深い深いため息をつく。
助かった……そんなとこだろうか。否、首の皮一枚だ。私の番の目にとまるオスなど…
青ざめた宮下に陸が言う
「体調、まだあんまり良くないんだ?」
「あ、ああ。夕飯にはまたちょっと飲みたいからさ、その為に安静にしておきたいんだよ」
「なんだよ、それ。今日位飲まない方が良くね?」
陸がクスクス笑いながら言う。
……
「陸、飲みたいなら飲ませてやればいい。個人の自由なのだから」
「「「…………」」」
飲んで飲んでつぶれてしまえ。そうして陸の評価にも値しないモノとなれ。







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