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夕食は中華料理にさせた。
隣との距離が近くなる所がいい。
勿論私の隣は陸だ。宮下は一番離れた真正面、回転テーブルは距離が取れていい。こ適度な距離は陸に酒を勧めるのにちょうどよい。
………五月蝿い。『大人気なさ過ぎです』猪瀬の目がそう言ってる。『ガキの嫌がらせ』千葉の目がそう言ってる。
宮下の席は離れている。陸に酌をする為には一々席を立ち、そして戻らねばならない。酔いが回っている中でのソレは億劫だろう。
『マジですか……』微妙な表情で私を見る面々。これで赦しているのだから、寧ろ寛容だと思え。
………陸が心配そうに顔が赤くなった宮下を見ている。
不愉快だ。
「陸、どうかしたのか」
素知らぬ顔で尋ねる。
「いえ、なんか宮下無理して飲んでるように見えて」
飲むように指示したからな
「……嫌なことでもあってやけ酒でもしているのかもしれないな」
「でも、あんな飲み方していたら体を……」
「自業自得だ」
陸に心配して貰えるとは、なんて身分不相応な。
陸が非難する様に私をみる。そんな瞳を私に向けないで、陸。
「……飲む飲まないは個人の自由だ。それを私が制限するのは違うだろう?」
「「「「………」」」」
猪瀬が『貴方がそれを言いますか』、そんな目で見てくる。……猪瀬はαのくせに優しいな。他の者は、宮下の自業自得とばかりに我関せずと目を逸らしているだけだ。
陸は……宮下を見つめている。
酷いな、陸。私の隣にいるのに他のオスに気を取られるなんて。
ため息が出る。
仕方ない
「陸は優しいな。そうだな、ノンアルコールビールがあるから、隙を見て差し替えるとしよう。だから、陸は……宮下を気にかけるな」
思わず本音が漏れた。だが、陸には届かなったようだ。安堵すべき事なのに、気にもとめてくれなかった陸に苛ついてしまう。自分がこんな矛盾を抱えるなんて、陸は素晴らしい
「いいですね、それ!」
陸がキラキラしたした瞳で私を見る。
……
メイドにノンアルコールビールを持ってくるように指示する。
陸が私を見る。『ありがとうございます!』それだけで浮上するのだ。……αとは、本当に愚かだ……。
ビールを持ってきたメイドに、陸が近づいた。ビールと取り皿をもって宮下の隣に移動する。
え?
「笠井、席交代して」
宮下の隣の席のαにそう告げた。
「「「え!?」」」
「い、いやぁ、青島は元の席の方が良いんじゃなかぁ?」
皆が私を恐る恐る見る。
番が、私の元を去り他のオスの元へ?
「あ、あおしま、戻った方が…」
宮下がいう。赤かった顔色も白くなってる。一瞬で酔いがさめたようだ。
「もう飲まない?ヤケ酒は体に良くない。心配なんだ」
宮下がぶんぶんと首をたてにふる。
優しい優しい陸。
私の元を去る程、そのオスが心配なの?
「もう飲まないから席に戻れ……!」
宮下が悲鳴まじりに叫ぶ。
「陸、こっちへ」
椅子を引く。苛立ちが声に混ざってしまう。威圧も漏れ出て、皆が苦しそうに顔を歪めた。
「陸」
「…………はい……」
陸がチラリと回りを見て戻ってきた。β社会で育ってきた陸は威圧を振うαを嫌う。権威をかざすαを嫌うから、抑えなければならないのに……深呼吸をして自分を落ち着かせた。
ふぅ……とどこからともなく息が漏れる。
「マナー違反をして申し訳ありません。てっきり無礼講なのかと思ってました」
陸が私に頭を下げた。思う所はあるが、先に礼を欠いたのは自分だし……といったところか。
「陸と宮下は違う」
宮下には飲むように命じた。
それを知らない陸が下唇を噛んだ。
「陸…………誤解するな。」
そういう意味じゃない。陸が下位αだからとかではなくて、宮下が上位だから非礼が許されるとかではなくて、陸が特別だからだよ。
そうも言えず、陸の頭を撫でる。
「でも、陸……罰は与えないとね」
私をおいて他のオスの元に行ったこと、私の番に懐かれているオス…
私の不穏な気配に、阿る様に陸からフェロモンが僅かに流れ出た。引き寄せられるように手が項に移動した。
そのままうなじを撫でる。
次の瞬間、陸が私の手を払った。
バシンと音が響く。加減が一切ない力だった。
「あ……すみませんっ」
咄嗟にしてしまったことなのだろう、陸自身も目をまん丸くしていた。そうしてしまって自分に驚きながらも、項を庇うように手を当てている。
無意識だ、本能的なものだ。
αの逆鱗に触れたΩはαを宥めようと本能的にフェロモン出す。
誰かに触られそうになると本能的にうなじを守る。
ああ…陸…。
昨夜の夢の様な時間が、君に変化をあたえたのか。
このまま加速度的に君は花開いていくのだ、私の為に。
「いや、私が急に撫でてしまったから驚いたんだろう。気にするな」
陸が私を見上げる。寛容な人だな、と。
そう、今の私は寛大だ、宮下は昨晩の立役者…
「宮下」
「はははははいっ!」
「私は今、とても気分が良い。良かったな」
「あ、ありがとうございます!」
陸が目を白黒させている。私と宮下のやり取りの意味を理解出来ていないらしい。陸以外のα達はうなじを押さえる陸に漠然と起きていることを察しているのだろう。
一刻も早く、陸をΩ化させたい…
猪瀬が私の陸を見詰める。心配そうに…
『罰は与えないとね』
私の言葉を陸以外は聞き取った。
そして猪瀬は陸に同情しているのだ。だが、私以外の誰かが陸を心配する事など、許せない。陸を見る者は私だけでなければならない。陸の世界は私だけで完結してなければならない。陸と私だけの世界…
「猪瀬」
警告の意味を込めて、トントントンと指でテーブルを叩いた。
猪瀬が、目を逸らした。
………甘いな、猪瀬。猪瀬の事は誰よりも信頼はしている。だが…認識を改めなければならない。同情心で私の妨害をするかもしれない…
隣との距離が近くなる所がいい。
勿論私の隣は陸だ。宮下は一番離れた真正面、回転テーブルは距離が取れていい。こ適度な距離は陸に酒を勧めるのにちょうどよい。
………五月蝿い。『大人気なさ過ぎです』猪瀬の目がそう言ってる。『ガキの嫌がらせ』千葉の目がそう言ってる。
宮下の席は離れている。陸に酌をする為には一々席を立ち、そして戻らねばならない。酔いが回っている中でのソレは億劫だろう。
『マジですか……』微妙な表情で私を見る面々。これで赦しているのだから、寧ろ寛容だと思え。
………陸が心配そうに顔が赤くなった宮下を見ている。
不愉快だ。
「陸、どうかしたのか」
素知らぬ顔で尋ねる。
「いえ、なんか宮下無理して飲んでるように見えて」
飲むように指示したからな
「……嫌なことでもあってやけ酒でもしているのかもしれないな」
「でも、あんな飲み方していたら体を……」
「自業自得だ」
陸に心配して貰えるとは、なんて身分不相応な。
陸が非難する様に私をみる。そんな瞳を私に向けないで、陸。
「……飲む飲まないは個人の自由だ。それを私が制限するのは違うだろう?」
「「「「………」」」」
猪瀬が『貴方がそれを言いますか』、そんな目で見てくる。……猪瀬はαのくせに優しいな。他の者は、宮下の自業自得とばかりに我関せずと目を逸らしているだけだ。
陸は……宮下を見つめている。
酷いな、陸。私の隣にいるのに他のオスに気を取られるなんて。
ため息が出る。
仕方ない
「陸は優しいな。そうだな、ノンアルコールビールがあるから、隙を見て差し替えるとしよう。だから、陸は……宮下を気にかけるな」
思わず本音が漏れた。だが、陸には届かなったようだ。安堵すべき事なのに、気にもとめてくれなかった陸に苛ついてしまう。自分がこんな矛盾を抱えるなんて、陸は素晴らしい
「いいですね、それ!」
陸がキラキラしたした瞳で私を見る。
……
メイドにノンアルコールビールを持ってくるように指示する。
陸が私を見る。『ありがとうございます!』それだけで浮上するのだ。……αとは、本当に愚かだ……。
ビールを持ってきたメイドに、陸が近づいた。ビールと取り皿をもって宮下の隣に移動する。
え?
「笠井、席交代して」
宮下の隣の席のαにそう告げた。
「「「え!?」」」
「い、いやぁ、青島は元の席の方が良いんじゃなかぁ?」
皆が私を恐る恐る見る。
番が、私の元を去り他のオスの元へ?
「あ、あおしま、戻った方が…」
宮下がいう。赤かった顔色も白くなってる。一瞬で酔いがさめたようだ。
「もう飲まない?ヤケ酒は体に良くない。心配なんだ」
宮下がぶんぶんと首をたてにふる。
優しい優しい陸。
私の元を去る程、そのオスが心配なの?
「もう飲まないから席に戻れ……!」
宮下が悲鳴まじりに叫ぶ。
「陸、こっちへ」
椅子を引く。苛立ちが声に混ざってしまう。威圧も漏れ出て、皆が苦しそうに顔を歪めた。
「陸」
「…………はい……」
陸がチラリと回りを見て戻ってきた。β社会で育ってきた陸は威圧を振うαを嫌う。権威をかざすαを嫌うから、抑えなければならないのに……深呼吸をして自分を落ち着かせた。
ふぅ……とどこからともなく息が漏れる。
「マナー違反をして申し訳ありません。てっきり無礼講なのかと思ってました」
陸が私に頭を下げた。思う所はあるが、先に礼を欠いたのは自分だし……といったところか。
「陸と宮下は違う」
宮下には飲むように命じた。
それを知らない陸が下唇を噛んだ。
「陸…………誤解するな。」
そういう意味じゃない。陸が下位αだからとかではなくて、宮下が上位だから非礼が許されるとかではなくて、陸が特別だからだよ。
そうも言えず、陸の頭を撫でる。
「でも、陸……罰は与えないとね」
私をおいて他のオスの元に行ったこと、私の番に懐かれているオス…
私の不穏な気配に、阿る様に陸からフェロモンが僅かに流れ出た。引き寄せられるように手が項に移動した。
そのままうなじを撫でる。
次の瞬間、陸が私の手を払った。
バシンと音が響く。加減が一切ない力だった。
「あ……すみませんっ」
咄嗟にしてしまったことなのだろう、陸自身も目をまん丸くしていた。そうしてしまって自分に驚きながらも、項を庇うように手を当てている。
無意識だ、本能的なものだ。
αの逆鱗に触れたΩはαを宥めようと本能的にフェロモン出す。
誰かに触られそうになると本能的にうなじを守る。
ああ…陸…。
昨夜の夢の様な時間が、君に変化をあたえたのか。
このまま加速度的に君は花開いていくのだ、私の為に。
「いや、私が急に撫でてしまったから驚いたんだろう。気にするな」
陸が私を見上げる。寛容な人だな、と。
そう、今の私は寛大だ、宮下は昨晩の立役者…
「宮下」
「はははははいっ!」
「私は今、とても気分が良い。良かったな」
「あ、ありがとうございます!」
陸が目を白黒させている。私と宮下のやり取りの意味を理解出来ていないらしい。陸以外のα達はうなじを押さえる陸に漠然と起きていることを察しているのだろう。
一刻も早く、陸をΩ化させたい…
猪瀬が私の陸を見詰める。心配そうに…
『罰は与えないとね』
私の言葉を陸以外は聞き取った。
そして猪瀬は陸に同情しているのだ。だが、私以外の誰かが陸を心配する事など、許せない。陸を見る者は私だけでなければならない。陸の世界は私だけで完結してなければならない。陸と私だけの世界…
「猪瀬」
警告の意味を込めて、トントントンと指でテーブルを叩いた。
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