真実の番は執愛の枷を破却する

オリーゼ

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比翼連理

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 明星を背にした青年がメルクリウスに覆い被さるように体を抱き寄せて唇を重ねた。
 その瞬間、メルクリウスは彼が運命の番だと確信した。
「君の、名前は? 俺……私はアリスター。アリと呼んでほしい」
 彼の名前を耳にしただけで心が震える。
 名前を聞かれて喜びが満ちる。
「親がつけた名前はマークだ。アリ」
 彼には本当の名前を知って欲しくて、メルクリウスはオメガらしくないからと変えられる前の名前を告げた。
「マーク」
 彼の名前を呼んで心が蕩け、掠れた低音で本当の名を呼ばれて囚われる。
「アリ……アリスター」
 息を乱しながら甘えるように名を呼ぶと、どこか遠慮がちに唇が眦に落ちて、頬に触れる。
「そこじゃ、ないだろ。アリ」
 唇を半開きにして上目遣いで彼を見ると、喉仏が上下するのが分かった。
「俺から……する? して、欲しいんだけど」
 箍がはずれたかのように頤を両の手で抑えられてアリスターの舌が歯列を割り込んだ。
「ん……おいし……」
 口腔を犯す熱く柔らかな舌を自らのそれで絡めて唾液を啜る。
 もっともっと欲しくて、メルクリウスもアリスターの頬に手を添えてお互いに口蓋を舐めしゃぶり、歯列を舌でなぞる。
 一滴もこぼしたくないのに、あふれた甘露を啜りきれず、密着した唇の端からこぼれて顎から喉につたい落ちていく。
 貪りあった唇をそっと離すと、未練が二人の間に細く甘美な糸をかけた。
 それは不思議な感覚だった。
 言葉にするなら、二つにわかたれたものを戻したい。狂おしいほどに彼を欲しているが、発情期の飢えとは明らかに違う。
「アリ。挿れて……」
 メルクリウスはそうねだると靴を投げ捨てて立ち上がり、ズボンと下着を脱ぎ捨てる。
「ひとつに、なりたい」
 アリスターの手を取って太ももの間から尻たぶを開かせた。
 解していないのに柔らかく緩んだ蕾から、とろりとアリスターを受け入れるための愛液が流れて内腿をつたい落ちるのを感じる。
 刹那、抱きすくめられて鉄柵に柔らかく押し付けられ、片脚を持ち上げられて屹立を突き入れられる。
 浅い挿入なのに、その途端に躰が歓喜に震え、恍惚が全身を走り抜ける。
 お互いに言葉を出せなかった。ただ荒い息を交わしながら鉄柵を支えに抱きしめあって、交歓の悦びに躰を蕩けあわさせた。
 あの地獄の片隅で見た景色と同じような事を、よりにもよって屋外でやっているのに不思議なことに嫌悪感はまるでなかった。
 法悦に身を委ねたメルクリウスの雄は触れることなく白濁を吐き出し、潤んだ肉壁はアリスターの雄を強く食い締めた。
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