真実の番は執愛の枷を破却する

オリーゼ

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この地獄の片隅で4

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「セレス、なんか顔が赤いけど大丈夫か?」
「ちょっと寒気がするかも。風邪かな」
「リーベルのところで風邪薬もらって来てやるから寝てろよ」
「でも講義もあるし……」
「閨房術なんて、1日ぐらいサボったってどうってこともないさ」
「どんな授業でも大切だよ。んん……でも今日は本当にダメかも。すごいだるい……」
 あの喧嘩をきっかけに貴族出身オメガ達から距離をおかれたメルクリウスだったが、セレスとリーベルとは交友を築くことができた。
 知り合ったばかりの頃は小柄な美少年だったセレスは今や清楚な嫋やかさのある眩しいほどの美青年だ。
 くったりとベッドに伏せたセレスに声をかけてなんとかその中に横たわらせ、上掛けをかける。
「いらない。なんか熱いし」
「ダメだって。熱がある時こそちゃんとあったかくしときな」
「……ん、ありがと」
 相当熱があるのだろう。いつも以上にふんわりとした口調で答えるセレスが心配で、メルクリウスは早足でセレスの部屋を出て、リーベルの部屋のドアを叩いた。
「リーベル、ごめん。なんかセレスが風邪ひいたみたいなんだけど、薬もらえるかなって」
 急な来訪にも敬語を使わないことに対しても嫌な顔一つせず迎え入れてくれたリーベルだったが、メルクリウスの言葉に眉を持ち上げた。
「どんな症状が出ている? 咳は出ているか?」
「ううん。倦怠感と寒気……でも熱いともいってた。顔も赤いし、動けなくなってたから相当熱が高いのかも」
「……それは風邪じゃない」
「え??」
 リーベルは部屋に控えた侍女に声をかけて何事かを告げると、侍女は慌てた様子で部屋を出ていった。
「メル。君も一緒に。身体は出来ていると聞いたから誘発されるかもしれない」
 どちらかだといいんだがという独り言に疑問を挟むまもなく、リーベルとセレスの部屋に行くと上掛けを蹴落とし、ベッドの上で苦しげに身体を丸めるセレスの姿があった。
「大丈夫か?! セレス!」
「苦しい……」
「リーベルを連れて来たから、あっ! 薬持って来てない!」
「これは病気ではない。分かるだろう?」
「メル、身体があついよぉ……」
 服のボタンを引きちぎるように開けたセレスがしどけない姿でベッドに身体を投げ出し荒い息をついた。その姿は常の彼と違ってひどく艶めかしい。
「病気じゃないわけあるかよ! いい年して漏らして……いや……濡れてる?」
「目を背けるな。口は悪いが賢いお前だ。分かっているだろう?」
「はつ、じょう?」
「そうだ」
 これが発情だと認識した瞬間に心臓がざわめき、顔に熱が集まる。立っていられなくなってへたりこむと尻からとろりとなにかが滴り、メルクリウスは恐慌に陥った。
「なっ! なんで、おれ……まで」
「オメガ同士で発情を誘発するんだ。誘発されなくても身体は出来ていたから遅かれ早かれ発情期は来ていただろう」
「リーベル、あんた、なんで平気……」
「私は誘発するが、誘発されることはない。ああ、兄上。いらっしゃいましたか。どちらかに感じるものはありますか?」
 リーベルによく似た、しかしずっと背が高く野生みのある男が部屋に入ってきた。
 アルファだ、と認識した瞬間に心臓が早鐘を打ち、喉がカラカラに乾いて胎が熱を帯び、意識が朦朧とする。
「欲しい……」
 自分が口走った言葉に呆然とした。
「いらない! いらな……! ほしい……ほしい!」
 最初の授業で落書きをしたアルファの性器が脳裏をチラつく。まともに動かない体をいざって男に近づくが、彼はこちらに一瞥すらくれずセレスを抱き寄せる。
 とろりと蠱惑的な笑みを浮かべた親友は男の唇に己のそれを重ね、部屋にアルファとオメガのフェロモンが充満する。
 身体を貪りあう二人から目を離せないメルクリウスの肩をリーベルが支えてくれた。
「部屋まで耐えなさい」
 部屋まで戻るが激しい飢えはさらにメルクリウスを苛み、涙がいく筋も眦から零れ落ちる。
「セレスばっかりズルい……! 俺も欲しい! ここをアルファに埋めて欲しい……!」
 服をかなぐり捨て、ベッドで丸まって濡れた尻に指を挿れるが空虚は埋まらない。
「リーベル! あんたで良い……! アルファじゃなくても——で埋めてくれるならなんでもいい!」
「メル、はじめての発情は辛いな」
「慰めなんていらない! よこせよ! ×××よこせ! ここを埋めてくれよぉ!」
 それは理性ではどうにもならない衝動だった。他人の前でそんな事など出来るわけないと思っていたのに、指で、次はサイドテーブルの上になぜか置いてあった張型で己を貫き、乳首を、そして男性の徴を弄んでリーベルに慈悲を乞う。
 はじめての発情にリーベルは寄り添ってくれたが、飢えを満たす事などできはしない。
 それは消える事なくメルクリウスの中で燻り、発情期が終わった後は己の性別への嫌悪感となって刻みついた。
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