兄弟同然で育った男と結婚することになった件

米好き

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1 息をするように…

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 目が覚めたら10時を過ぎてきた。
 学校がない土日は目覚まし時計をかけずに、目が覚めるまで思う存分寝るのは習慣だ。家族もそのことを知っているから、前日に起こすように頼まない限り大体放置される。
「んん~!はぁ…」
 大きく伸びをすると反動でため息がでる。布団からでると少し肌寒い。3月後半に入り、日中は過ごしやすい陽気になったが、朝晩はまだ冷える。
 乱れた寝間着を整えて下のリビングへと向かう。日曜日はお母さんは大体買い物か貯まった家事をしていて、お父さんは自室で貯まった新聞を読んでいるか、お母さんの買い物に付き合わされている。
 いつも掃除機の音で目が覚めるが、今日は聞こえなかったのでたぶん後者だろう。
「おはよう」
「おはよう…」
 リビングに入ると台所の方から声をかけられる。なに、驚くことではない。
「今日は随分遅起きだな。朝ご飯食べるか?」
「んー、ヨーグルトだけにする。お昼食べられなくなっちゃうし」
「ココア淹れるところだが飲むか」
「飲むー」
 私は一人っ子だ。兄弟はいない。
 なら、この男は何なのだといわれたら、なんと形容すればいいのか困るが、言ってしまえば他人である。
 この男、佐々木紫苑は私の家に居候している私の一つ年下の高校一年生(新年度から高校二年生)である。
 紫苑の両親はバリバリの仕事人間で世界中を飛び回っている。それは彼が幼い頃からで、幼い紫苑を仕事のために振り回してしまうのは申し訳ない、でも一人で残すことはできない。
 そこで、紫苑のお母さんと私のお母さんが昔からの友人であったこともあり、私が小学二年生の時に家に居候させることになったのだ。
 当時、私たちはほぼ初対面ではあったが、(二人とも赤ちゃんの時に会っているらしいが覚えていない)そこはやはり子供特有のすぐに仲良くなるやつで打ち解けるのは早かった。
 一つ私が年上だから最初こそ姉面をしていたが、紫苑は昔から大人しく大人びていたため、お母さんにはよく「紫苑の方がお兄さんね」と言われたものだ。
 だからか、今となってはお互い対等に接している。
 血はつながっていないが、敢えて言うなら双子のような関係だと私は思っている。
「お母さん達は?」
「買い物に行っている。お昼は外で食べるから私達でお昼は済ませておいて、と言われた」
「うへー、じゃあ紫苑お昼よろしくね」
「前回私が作っただろう。今回はお前が作れ」
「えー?やだよ。紫苑のご飯の方が美味しいし」
 根底には他人であるということがあるのはお互いわかっているが、十年も一緒に暮らしていると、こういう家族同然の会話は常である。普通なら、だらしのないところなんかは見せづらいと感じるものなのだろうが、ここまで来るとそれもない。
 紫苑は常に身の回りが整っているが、私は定期的に掃除はするものの、ひどいときはひどい。
 それも周知のことなので、小学生の時はよく「汚い」と言われて掃除されたものだ。
「ココアも淹れて、ヨーグルトも持ってきてやった。だから昼はお前が作れ」
 椅子に座ってぐだぐだしている間に、テーブルの上にはココアとヨーグルトが置かれていた。
「仕方ない、何がいい?」
「賞味期限が近い卵があるから卵料理で」
「んー。じゃあオムライスで」
「構わない」
 紫苑は私と対面する位置に座るとココアを飲む。
 ココアはいつも気持ち甘い。紫苑は甘いものが好きだ。でも、私が一緒に飲むときは私に合わせて少し甘さを控えているのを知っている。
 ココアを啜ると体が内側からじんわりと温まるのがわかる。
「ところで、今朝母から電話があってな」
 母とは紫苑のお母さんのことで、私のお母さんのことは母さんと呼び、使い分けている。それは私もで、紫苑のお母さんのことはママと呼んでいる。
「ママから?大分久しぶりじゃん。今どこにいるの?」
「今はフランスだそうだ」
「フランスか~。行ってみたい」
「それで、母があまりにも急かすからそろそろ話し合わないといけないと思ってな」
「ん?なんの話?」
「私達の結婚についてだ」
 …
 ……
 ………?
「へ?」
 なんか兄弟同然で暮らしてたやつから息を吐くようにとんでもないこと言われたのですが、これは私が寝ぼけているのか?
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