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SIDE クレア
婚約破棄 2
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会場を警備していた近衛騎士が私の元に歩いて来ます。
「クレア様、こちらに」
私は近衛騎士にエスコートされながら、会場内を歩き出しました。
ちらりとローズを見てみると、純真無垢にしか見えないその顔で、じっと嬉しそうに私を見ています。
ほんっと性格悪いですね、あの女。
まぁ、いいですけど。
「おい、そこの兵士、お前は何をやっているんだ!ローズに暴力を振るった女だぞ!縛り上げて引き摺って行かぬか!!」
私がローズにしたとされる内容が、先程と変わっていますわよ?
それに、兵士ではなくて、近衛騎士です。
王族専任の護衛騎士です。
こんな国賓が集まる場所に、一兵士が入れるわけありません。
本当にお馬鹿ですね。
会場内はドン引き状態なのですが、第一王子トリスタンは、自分に向けられている視線の種類に気付くことができません。
近衛騎士は、第一王子トリスタンの言葉など無視して、私をエスコートし続けます。
その態度に切れた第一王子トリスタンが自分の腰の剣に手をかけようとして、ローズを抱き寄せていた腕の力を緩めた途端、ローズが第一王子トリスタンの腕からするりと逃れ、階段を駆け下りて、フロアの中心で派手にこけました。
ご立派なものが赤いドレスから今にもこぼれ出てしまいそうで、男性陣の視線を一瞬で釘付けにします。
「どなたか、どなたか、私を助けてくださいませ。突然拉致されて連れて来られて、結婚しなければ私の家をめちゃくちゃにしてやると、脅されています。お願いです、どなたか・・・助けてぇ・・・」
幼さの残る顔。
華奢であるのに出るところは出ている、艶めかしい体。
その容姿に似つかわしくない、色香。
男性にとって、理想がつまったような可憐な少女。
か細い声で必死に助けを求める、その姿の頼りなさ。
大きな目から、止めどなくあふれ続ける涙。
庇護欲に駆られた紳士たちが、ローズと第一王子トリスタンの間に、その体でバリケードを作りましたわ!
仕込みではない方も数名いらっしゃるではありませんか。
貴女の存在には思うところもありますが、ローズ様、さすがでございます。
「トリスタン、あのご令嬢の言葉は真か?」
国王陛下が第一王子トリスタンに問われました。
ちょっとわざとらしいです、陛下。
「嘘だ!ローズと俺は愛し合っている!ローズ、お前は俺のこと愛していると言ったではないか!!」
「…言わなければ、私の親を殺してやると・・・う…ううっ…」
ローズは細い腕で自分の体をしっかりと抱きしめ、ブルブルと震えながら、必死に言葉を紡ぎ出しました。
一生懸命露出した胸部を隠そうとしているのに、かえって立派なものを強調してしまうことになっている姿に、女性達の厳しかった視線が「あんなに趣味の悪いドレスを着せられて、可哀想に」という、同情と憐れみのそれに変化していきます。
第一王子トリスタンの女好きとおっぱい好きは、知らぬものがいないほど有名なのです。
ざわめきがフロア中に広がっていきます。
人徳の無さが、ざわめきを大きくしていきます。
「トリスタン。私たちはそこで座り込んでいるご令嬢がどこの誰なのかも、そなたが妃を決めたことも、何一つ聞いておらぬぞ。それに、いつ第一王子のトリスタンが王になったのだ?国王である私が知らないうちに、新しい国でも興したのか?」
「あんな性格の悪いクレアと結婚なんてまっぴらですからね。愛しい可憐なローズを正妃にするのは、当たり前でしょう!」
どや顔で何を言っているんでしょうか、あのお馬鹿は。
正妃というのは、王の正妻のことです。
だから国王陛下はいつ第一王子トリスタンが王になったのか、自分で国を興したのか問われていらっしゃるのに、スルーですか。
「あのご令嬢の言葉が真実であるかどうかは、これから厳しく調べることになる。それよりも、国内の大半の貴族と国外の王族を招いた誕生パーティーで、王族らしい言動の一つも取れず、クレア嬢に謂れのない罪を擦り付けて投獄しようとしたこと、許し難し。丁度いい。お前自身の強い希望で、ここにはこの国にとって重要な人々が一堂に会している」
国王陛下が、ゆっくりと階段を下って、踊り場に降り立ちました。
「本日は愚息のために集まっていただいたこと、感謝する。第一王子として生まれたトリスタンには、他の王子たちと同じ教育を施してきたが、ご覧の通り王族には相応しくない人間に育ち、更生は期待できない。更にこのような公の場で自分がこの国の国王であるかのように振舞い、謀反を企てていることを自分から国内外に告知した。よって、只今をもって王位継承権を剥奪し、廃嫡とする。これより身分は平民となるが、平民となることは罰ではない。謀反を企てた者には相応の罰を与える」
フロアのあちらこちらから、歓声が上がります。
このような場面で歓声が上がってしまうほどに、王族であることを望まれていなかったのですね。
「トリスタンはすぐに王宮を出て、裁きの塔の家族牢へ移る準備を致せ。ああ、謀反を企てた男の仮婚約者たちも同罪であるぞ」
第一王子トリスタンと11人の仮婚約者のご令嬢の顔色が、見る見る真っ青になっていきます。
そう、この国では「仮婚約」から逃れる方法はただ一つ。
王族側から「婚約破棄」を言い渡されることだけ。
仮婚約から令嬢たちを逃れさせないために、この国の王族は仮婚約制度上の強固な契約とは別に、神殿での婚約契約も強制しているため、11人の仮婚約者達は、例えトリスタンが平民になったとしても、罪人になったとしても、彼の仮婚約者であることには変わりないのです。
「クレア様、こちらに」
私は近衛騎士にエスコートされながら、会場内を歩き出しました。
ちらりとローズを見てみると、純真無垢にしか見えないその顔で、じっと嬉しそうに私を見ています。
ほんっと性格悪いですね、あの女。
まぁ、いいですけど。
「おい、そこの兵士、お前は何をやっているんだ!ローズに暴力を振るった女だぞ!縛り上げて引き摺って行かぬか!!」
私がローズにしたとされる内容が、先程と変わっていますわよ?
それに、兵士ではなくて、近衛騎士です。
王族専任の護衛騎士です。
こんな国賓が集まる場所に、一兵士が入れるわけありません。
本当にお馬鹿ですね。
会場内はドン引き状態なのですが、第一王子トリスタンは、自分に向けられている視線の種類に気付くことができません。
近衛騎士は、第一王子トリスタンの言葉など無視して、私をエスコートし続けます。
その態度に切れた第一王子トリスタンが自分の腰の剣に手をかけようとして、ローズを抱き寄せていた腕の力を緩めた途端、ローズが第一王子トリスタンの腕からするりと逃れ、階段を駆け下りて、フロアの中心で派手にこけました。
ご立派なものが赤いドレスから今にもこぼれ出てしまいそうで、男性陣の視線を一瞬で釘付けにします。
「どなたか、どなたか、私を助けてくださいませ。突然拉致されて連れて来られて、結婚しなければ私の家をめちゃくちゃにしてやると、脅されています。お願いです、どなたか・・・助けてぇ・・・」
幼さの残る顔。
華奢であるのに出るところは出ている、艶めかしい体。
その容姿に似つかわしくない、色香。
男性にとって、理想がつまったような可憐な少女。
か細い声で必死に助けを求める、その姿の頼りなさ。
大きな目から、止めどなくあふれ続ける涙。
庇護欲に駆られた紳士たちが、ローズと第一王子トリスタンの間に、その体でバリケードを作りましたわ!
仕込みではない方も数名いらっしゃるではありませんか。
貴女の存在には思うところもありますが、ローズ様、さすがでございます。
「トリスタン、あのご令嬢の言葉は真か?」
国王陛下が第一王子トリスタンに問われました。
ちょっとわざとらしいです、陛下。
「嘘だ!ローズと俺は愛し合っている!ローズ、お前は俺のこと愛していると言ったではないか!!」
「…言わなければ、私の親を殺してやると・・・う…ううっ…」
ローズは細い腕で自分の体をしっかりと抱きしめ、ブルブルと震えながら、必死に言葉を紡ぎ出しました。
一生懸命露出した胸部を隠そうとしているのに、かえって立派なものを強調してしまうことになっている姿に、女性達の厳しかった視線が「あんなに趣味の悪いドレスを着せられて、可哀想に」という、同情と憐れみのそれに変化していきます。
第一王子トリスタンの女好きとおっぱい好きは、知らぬものがいないほど有名なのです。
ざわめきがフロア中に広がっていきます。
人徳の無さが、ざわめきを大きくしていきます。
「トリスタン。私たちはそこで座り込んでいるご令嬢がどこの誰なのかも、そなたが妃を決めたことも、何一つ聞いておらぬぞ。それに、いつ第一王子のトリスタンが王になったのだ?国王である私が知らないうちに、新しい国でも興したのか?」
「あんな性格の悪いクレアと結婚なんてまっぴらですからね。愛しい可憐なローズを正妃にするのは、当たり前でしょう!」
どや顔で何を言っているんでしょうか、あのお馬鹿は。
正妃というのは、王の正妻のことです。
だから国王陛下はいつ第一王子トリスタンが王になったのか、自分で国を興したのか問われていらっしゃるのに、スルーですか。
「あのご令嬢の言葉が真実であるかどうかは、これから厳しく調べることになる。それよりも、国内の大半の貴族と国外の王族を招いた誕生パーティーで、王族らしい言動の一つも取れず、クレア嬢に謂れのない罪を擦り付けて投獄しようとしたこと、許し難し。丁度いい。お前自身の強い希望で、ここにはこの国にとって重要な人々が一堂に会している」
国王陛下が、ゆっくりと階段を下って、踊り場に降り立ちました。
「本日は愚息のために集まっていただいたこと、感謝する。第一王子として生まれたトリスタンには、他の王子たちと同じ教育を施してきたが、ご覧の通り王族には相応しくない人間に育ち、更生は期待できない。更にこのような公の場で自分がこの国の国王であるかのように振舞い、謀反を企てていることを自分から国内外に告知した。よって、只今をもって王位継承権を剥奪し、廃嫡とする。これより身分は平民となるが、平民となることは罰ではない。謀反を企てた者には相応の罰を与える」
フロアのあちらこちらから、歓声が上がります。
このような場面で歓声が上がってしまうほどに、王族であることを望まれていなかったのですね。
「トリスタンはすぐに王宮を出て、裁きの塔の家族牢へ移る準備を致せ。ああ、謀反を企てた男の仮婚約者たちも同罪であるぞ」
第一王子トリスタンと11人の仮婚約者のご令嬢の顔色が、見る見る真っ青になっていきます。
そう、この国では「仮婚約」から逃れる方法はただ一つ。
王族側から「婚約破棄」を言い渡されることだけ。
仮婚約から令嬢たちを逃れさせないために、この国の王族は仮婚約制度上の強固な契約とは別に、神殿での婚約契約も強制しているため、11人の仮婚約者達は、例えトリスタンが平民になったとしても、罪人になったとしても、彼の仮婚約者であることには変わりないのです。
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