魔法が碌に使えないからと婚約破棄された令嬢は、 御伽の国の王太子に求婚される

もにゃむ

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前編

「フィーリア!王族に相応しい魔力を持たず、魔法も碌に使えないお前とは婚約を破棄する!!」

近隣の国賓や公賓を招いた王国の生誕祭で、私は婚約者の第一王子グレアム殿下から、突然婚約破棄を言い渡されました。

そして追い打ちをかけるように、侯爵家当主であるお父様が大声を張り上げました。

「第一王子殿下に婚約破棄されるような娘は我が侯爵家には不要だ!お前のように魔法も碌に扱えぬ、不出来で不細工な娘は要らぬ!お前は我が侯爵家の恥だ!王家との婚約を破棄されるなど侯爵家の名誉を傷つけた愚かなお前は、今この時を持って廃嫡する!!」

血のつながったお父様に、侯爵家からの廃嫡を言い渡されました。
どうやら事前にシナリオは出来上がっていたようです。
お父様の横に控えていた異母妹のクラリアが、第一王子グレアム殿下の元へゆっくりと進んでいきます。
クラリアは私と違って、優秀な魔法使いです。
顔立ちは異母妹にしては私によく似ていますが、目と髪の色が違い、派手な装いがよく似合います。
いつも派手なお化粧をして、過剰なほどに着飾っています。

私はパーシャル侯爵家の長女、フィーリア。
お母様は私が5歳の時に亡くなったのですが、すぐに今のお義母様が年子のクラリアを連れて後妻になりました。
生まれた時に魔力が極端に少なかった私に見切りをつけて外に子どもを作ったようです。
出会った時わずか4歳だったクラリアは、高位貴族の中でも優秀な量の魔力を持っていました。

それはさておき。
私の心の中では、侯爵家令嬢としてのあれこれが既に砕け散って粉々になっていました。

(婚約破棄!?マジで?やったー!意地の悪い舅姑付きの性格の悪すぎる第一王子との婚約破棄に、私を虐げ続けるろくでなしがいっぱいの侯爵家からの廃嫡!!こんな幸運があっていいの!?私、今日死ぬの?幸せ過ぎて、死ぬの!?)

心の中では侯爵令嬢らしからぬ狂喜乱舞をしている私ですが、喜んでいることを悟られてはいけません。
表面上は婚約破棄をされた不幸な侯爵令嬢の仮面を被ります。
消え入りそうな弱々しい声で、彼らに答えることにしましょう。

「婚約破棄に、侯爵家からの廃嫡。謹んで、承ります」

満足そうにドヤ顔をする第一王子グレアム殿下。
ニヤニヤと勝ち誇った笑顔の異母妹クラリア。
虫けらはさっさと消えろという顔の実の父親であるパーシャル侯爵。

会場中から聞こえる囁き声の中、私が静々と会場から去ろうとすると、目の覚めるようなイケメンが私の進行方向を塞いできました。
早く会場から出て自由を謳歌する旅に出る準備をしたいのに、邪魔ですこのイケメン。
進路変更をしてなんとか会場から出ようとするのですが、イケメンは私の進路上に移動してきます。

思わず睨みつけそうになったところで、イケメンが口を開きました。

「フィーリア嬢。私はブロンディア王国王太子のヴァリアスと申します。どうか、私と結婚を前提にお付き合いしていただけませんか。我が国は貴女を歓迎いたします」

「は?」

会場内にはざわめきが広がります。

ブロンディア王国。
御伽の国。
国。

ブロンディア王国の名前はよく物語に出てくるので知ってはいましたが、実在する国だとは思っていませんでした。
御伽の国、夢幻ゆめまぼろしの国、実際には存在しない国だと、この国の国民であれば教えられるのです。

「ブロンディア王国だと!?たばかるな!!そんな国は存在しない!!」

第一王子グレアム殿下がヴァリアス様に向かって、大笑いしながら怒鳴ります。

そんな第一王子グレアム殿下と、それに続き言葉を発している人々を無視して、ヴァリアス様は私に話しかけ続けます。

「貴女がトレスタ国で書かれた研究レポートの数々を拝見し、実際にお会いして確信いたしました。貴女は同志だと。」

同志?
何のことだろうと、思わずヴァリアス様を見つめてしまいました。
ヴァリアス様は私が話を聞く気になったと思われたのか、一歩私に近付くと声を潜め、私にだけ聞こえるように囁いてきました。

を、ご存じですね?」

「!!」

驚く私にヴァリアス様は追い打ちをかけてきます。

「電気に冷蔵庫、洗濯機、飛行機、ヘリコプター・・・銃に戦車。」

「!・・っけ、結婚前提云々は置いておいて、私はヴァリアス様の国、ブロンディア王国に行きたいです!!」

ここは魔法と剣とファンタジーの世界です。
私は物心ついた頃から、この世界に違和感を感じていました。
日々の生活の中で頻繁に不便さを感じていました。

下水処理さえされない、衛生観念の欠落!
見た目が綺麗な街並みでも、匂いが、汚物が・・耐えられない!!

私の知っている便利なものが一つも無い!
明かりが蝋燭に火を灯す以外の方法が無いって、どんだけ原始的なのよ!!

体調や状況に左右される魔法を、得意になって使っている不思議!
今日は調子が悪いから魔法が発動できないって、人生運任せなの!?

保冷という概念がないため、見栄で大量の食材を買い込み、大量に腐らせる貴族の杜撰ずさんな食品管理!
腐らせたその食料があれば、どれだけの人の命が助かると思っているのよ!!

貴族令嬢の移動手段は、基本馬車!
乗ればお尻が痛いし、気持ちが悪くなるのよ!
そして、走った方が速いし!!

戦争に至っては、双方正面から攻撃魔法と剣で戦うという、能率の悪さ!
せめて頭使って、最小限の被害で勝てるように戦略くらい立てようよ!!

そしてそして、
なぜ魔法が上手く使えないというだけで、虐げられなければならないのよ!!

ずっとずっと疑問に思ってきて、探しても見つけることができなかった便利な物。
この世界にも科学が発達している国があったなんて!!

「私、多少はお役に立てると思います!」

「はい。貴女が短期留学されていた際に書き溜められた研究レポートを拝見させていただきました。多少どころか、十分戦力に・・いえ、十分我が国での暮らしに順応できる器をお持ちだと確信いたしました。そして、こうしてお会いしてみて、貴女に魅かれました。どうか、私と共にブロンディア王国を盛り立てていただきたいのです。」

イケメンが目に力と色気を込めて、見つめてくる。
やめて。
結婚願望はないんです私。

「結婚前提云々を置いておいていただけるのであれば、ぜひ!」

苦笑いをしながらヴァリアス様が手を差し出してきました。
私は満面の笑みで、その手を取りました。

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