魔法が碌に使えないからと婚約破棄された令嬢は、 御伽の国の王太子に求婚される

もにゃむ

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中編

生まれた時から貴族にしては魔力量が極端に少ない上に魔法が上手く使えないことで、実の父親からも、義母や異母妹からも、婚約者からも婚約者の両親からも蔑まれていた私は、この国の外を見たいとずっと思っていました。

魔法が上手く使えないからと蔑むくらいなら婚約を解消してほしいのですが、侯爵家の正当な血筋である私が王太子候補第一位の第一王子殿下の婚約者でいることに、政治的な意味があるようです。
異母妹であるクラリアは魔力量が多く魔法の使い手としては優秀らしいのですが、異母妹は婚外子。
正当な血筋である私が存在している以上、私を差し置いて第一王子殿下の婚約者になることができずにいました。

家ではお義母様と異母妹、使用人たちからの嫌がらせが酷く、私室に鍵を付けても開けられて荒らされてしまい、自分の家だというのに心が休まる場所も時間もありませんでした。
王子妃教育を受けに登城しても、状況は変わりません。
魔法が上手く扱えないというだけで、他のことが他人より出来ても、周辺諸国の言葉をすべて話せるようになっても、私の評価は底辺のままでした。

結婚まであと2年しかありません。
生まれてから今まで自由というものはありませんでしたし、これからもないでしょう。
結婚すればそれまで以上に人の目のある生活をしなければなりません。

人生で最初で最後の我儘に、短期間でいいので他国に留学して見分を広めたいと、お父様にお願いしてみました。

一度もお父様に何かをお願いしたことが無い私のお願いであったからか、王妃になった時に他国への留学経験があると箔が付くと考えたからか、お父様は王家に私の留学について打診をしてくれました。
これだけでも奇跡のような出来事だったのですが、なんと現王妃様の母国である隣国トレスタ国への短期留学が認められました。
僅かわずか1ヶ月間、でしたけれど。

学園の寮に入り、授業を受け、思ったのは・・・この国も同じなのか、でした。

そんな中、ある風変わりな先生の話を耳にしました。
使の研究をしているというのです。

私はほんの僅かわずかな期待を胸に、先生の研究室を訪ねました。
先生の研究室の中までは、私についている監視者も入って来ることができませんでした。
先生がトレスタ国では高名な魔道具師で、トレスタ国や私の出身国であるグラディアル王国よりもはるかに大きいパカストラ帝国の皇族だったからです。
先生の部屋は、やじろべいのような形をした秤、木で作られた歯車のようなもの、羽だけの手動扇風機に近いものなど、どこか懐かしいもので溢れていました。
私たちは意気投合し、私は先生に勧められるまま、研究レポートをいくつか書きました。
この世界でも簡単に再現でき、広まりそうな便利なものを。

簡易的な水をろ過する装置

粉を挽くための風車と水車

低い川から高い用水路に水を上げるための水車

地下から水を引き上げる手押しポンプ

マスク

固形石鹸

これらのレポートはすぐ先生により商業ギルドに持ち込まれ、私の発明品として商標登録されました。
それどころか、私に発明者として販売価格の数十パーセントが入ることになると言われました。

しかしこれらはもともと私が発案したものではなく、どこかで見聞きしたことがあるだけのものでしたし、これをきっかけに便利な世の中になってくれればとの思いから、最終的に私の取り分は売り上げの3パーセント、私に入る予定だった残りのお金は、登録した商品の研究、類似品の開発に使ってもらうということで妥協していただきました。

「どこかで見聞きしたことがあるもの」

そうなんです。
恐らくこの世界ではない、別の世界で生きていた記憶の欠片が、私の中にはあるのです。
故にこの世界が不自由に感じてしまうのです。

簡単に生活を便利にできる商品のレポートを更にいくつか書き終え、町を作る時には、区画を決めたらまず下水道と地下空間を作ることを提案し、下水の処理方法をレポートにしたところで、留学期間は終わってしまいました。
授業で新しく学べたことは一切ありませんでしたが、先生と出会い、いろいろと話ができたことは、私の生涯の宝物になりました。

先生とお会いできたことはとても幸運でしたけれど、この国も私が生まれた国と変わらず、魔法が上手く使えない者には、生きていくのが厳しい国でした。
留学は一ヶ月という短期間で終了し、私はまた窮屈な生活に戻ることになりました。

先生とは、手紙のやりとりすらしていません。
自国では私には常に多数の監視がついていて、交流関係を制限されているからです。

ただ、少し楽しみができました。
私は留学先の商業ギルドで口座を作り、そこに発明品が売れる度に入ってくるお金を貯めてもらっておくことにしたのです。
いつの日か、もしも私が自由になれる日が来た時のための資金が少しずつ増えていると思うと、留学前よりいろいろなことに耐えられるようになった気がしました。

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