7 / 115
7
しおりを挟む
案内役の海賊の手下のひとりと先頭をいく紅孩児は両の太腿に全長一尺七寸(約五一・五センチ)の包丁状の刃を持った短兵器(たんへいき)双刀(そうとう)を鞘に収めて装着していた。包丁との違いは切っ先が刀に似た形状であることと、刃部の背と柄の接合部分から鉤が派出していること、それに拳の保護のための護拳があることだ。ちなみに、中国では武器のことを『兵器』や『器械』といい、刀剣のことを短兵器という。
紅孩児につづく悟空は鈍兵器(どんへいき)、鉄製の四尺(約百二十一センチ)の棍(こん)(棒)を、その後ろの悟浄は月牙鏟(げつがさん)――一方に三日月型の刃、反対側に槍の穂をそなえた全長五尺(約一五〇センチ)の長兵器(ちょうへいき)(長柄武器)を担いで歩いている。
四番手の三蔵は一見、なにも武器を帯びていないように見えるが、無数の飛び道具を――いわゆる暗器の類を着物の下に隠している。
彼の後ろの八戒は鉄耙(てっぱ)、山の字に似た刃先――というより穂先をそなえた長兵器だ。先端から石突きまでの長さは六尺(約一八〇センチ)といったところ。
最後尾の金角と銀角はそれぞれ長兵器を担いでいる。前者は反りのない刀の刀身に近い計上の刃に柄をつけた斬馬刀(ざんばとう)、後者は双戟(そうげき)――首を薙ぐ横に突き出た刃『弋(か)』と、胴を突く『矛(ほこ)』がひとつに組み合わさった得物を手にしている。双子の兵器はともに、柄と刃部を合わせた長さが五尺(約一五〇センチ)だ。
物々しく武装しているが、みな一様に物見遊山の気楽さが表情にのぞいている。
――が、紅孩児と並んで歩いている案内(あない)役の顔つきは緊張にややこわばっていた。彼は「右も左もわからねぇ連中をほっぽり出すわけにもいかねぇな。お前、案内してやれ」と頭領に命じれられ、役割を忠実にこなしているのだ。
紅孩児につづく悟空は鈍兵器(どんへいき)、鉄製の四尺(約百二十一センチ)の棍(こん)(棒)を、その後ろの悟浄は月牙鏟(げつがさん)――一方に三日月型の刃、反対側に槍の穂をそなえた全長五尺(約一五〇センチ)の長兵器(ちょうへいき)(長柄武器)を担いで歩いている。
四番手の三蔵は一見、なにも武器を帯びていないように見えるが、無数の飛び道具を――いわゆる暗器の類を着物の下に隠している。
彼の後ろの八戒は鉄耙(てっぱ)、山の字に似た刃先――というより穂先をそなえた長兵器だ。先端から石突きまでの長さは六尺(約一八〇センチ)といったところ。
最後尾の金角と銀角はそれぞれ長兵器を担いでいる。前者は反りのない刀の刀身に近い計上の刃に柄をつけた斬馬刀(ざんばとう)、後者は双戟(そうげき)――首を薙ぐ横に突き出た刃『弋(か)』と、胴を突く『矛(ほこ)』がひとつに組み合わさった得物を手にしている。双子の兵器はともに、柄と刃部を合わせた長さが五尺(約一五〇センチ)だ。
物々しく武装しているが、みな一様に物見遊山の気楽さが表情にのぞいている。
――が、紅孩児と並んで歩いている案内(あない)役の顔つきは緊張にややこわばっていた。彼は「右も左もわからねぇ連中をほっぽり出すわけにもいかねぇな。お前、案内してやれ」と頭領に命じれられ、役割を忠実にこなしているのだ。
0
あなたにおすすめの小説
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
奥遠の龍 ~今川家で生きる~
浜名浅吏
歴史・時代
気が付くと遠江二俣の松井家の明星丸に転生していた。
戦国時代初期、今川家の家臣として、宗太は何とか生き延びる方法を模索していく。
桶狭間のバッドエンドに向かって……
※この物語はフィクションです。
氏名等も架空のものを多分に含んでいます。
それなりに歴史を参考にはしていますが、一つの物語としてお楽しみいただければと思います。
※2024年に一年かけてカクヨムにて公開したお話です。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる