直刀の誓い――戦国唐人軍記(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)

牛馬走

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 年端もいかない子供に暴力をふるったことにも後悔を覚えているが、なによりも彼らの気持ちを昏(くら)くしているのは、自分たちが過去に強く囚われていることを確認させられたことだ。
 ひとりの子供が虐げられているのをみて飛び出した紅孩児や悟空、大げさにいえば迫害されている子を見て過去が鮮明によみがえって身動きできなくなった三蔵……そこまでいかなくとも、他の仲間たちも各々過去の暗い影が脳裡をかすめた。
 ――焚き火の上では、枝を削ってつくった即席の串に刺さった雉(きじ)が香ばしい良い匂いを漂わせている。
 悟空が野性的な勘を働かせて、近くの山に入っていってあっという間に獲ってきたものだ。
 いつもなら、歓声をあげてもいい豪勢な食事だ――が、そんなことを喜ぶ者は、今の仲間には誰もいない。大食漢の八戒さえ沈んだ表情をしていた。
「……――くはないか~」
 どこからか、物売りのものらしき声が聞こえてくる。
 長期戦になったり、対陣したまますぐに合戦がはじまりそうもない場合などは物売りなどが集まるの当時の戦場の当たり前の光景だった。
 なにしろ、場合によっては市が立つなどして町のような様相を呈するというから人間というのはたくましい。
 だから、先の声もいぶかしむようなものではなかった。が、聞こえてくる言葉の内容はどうも、一般的な生業とは違っているようだ――
「己の運命を知りたくはないか~、己の行く末を知りたくはないか~、八卦見はいらんか~」
 僧侶態の飄々(ひょうひょう)とした風貌の老人が兵たちの間をゆるりと歩いてくる。
 そんな彼を紅孩児が興味津々の眼で見やった。
「紅孩児、あんな莫迦なもの――」
 悟浄がそれに気づいて、金子を無駄にしないよう注意しようとする。
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