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三蔵たちの交代での介抱のかいがあって、倭人は順調に回復していく。
彼らは、日の本についての話を彼から聞き出した。
甚助の生まれ故郷なのかもしれぬ国に強烈な興味を覚えていたのだ。そこに、その情報を持った人間が現われたのだ――話を聞かない方がおかしい。
「日の本六〇余州は今、戦乱につつまれて、力のある者が上の者を倒す、下克上が世のならいとなっており申す。地下(じげ)(庶民)から一国の主となった者もおると聞き及んでおる」
(戦乱――力のある者が上の者を倒す――地下(じげ)から一国の主となった者もいる……)
三蔵は倭人から口にした単語で引っかかったものを胸中でくり返した。倭寇として生きているからか、けして流暢ではないが対手は明の言葉を話すことができたのだ。
……っ、肚の底が熱くなる。静かな昂奮が身のうちを満たしていた。
(兵法が役立つかもしれない――)
三蔵は声に出さずにつぶやく。
だが、その思いはみな同じだったようだ。
庵で倭人の話を聞いていた仲間たちが、「三蔵」とこちらを呼んで顔を見つめてくる。
三蔵は仲間たちの宰領を果たすようになっていた。
甚助が彼のつむりの巡りの良さに眼をつけ、兵法(へいほう)――軍兵を指揮する術(すべ)を教えたことから、自然とそういう役割を担わされるようになっている。
「誓いを立てよう」
浜で黄昏の陽射しを顔に受けながら、三蔵は静かに告げた。その手には直刀(チータオ)、片刃で反りのない刀剣の柄をにぎっている――暗器(飛び道具)以外にも遣える得物があった方がいいと稽古していたのだ。
悟浄、悟空、八戒、紅孩児、金角と銀角――仲間が真剣な眼でこちらを見ている。
彼らは、日の本についての話を彼から聞き出した。
甚助の生まれ故郷なのかもしれぬ国に強烈な興味を覚えていたのだ。そこに、その情報を持った人間が現われたのだ――話を聞かない方がおかしい。
「日の本六〇余州は今、戦乱につつまれて、力のある者が上の者を倒す、下克上が世のならいとなっており申す。地下(じげ)(庶民)から一国の主となった者もおると聞き及んでおる」
(戦乱――力のある者が上の者を倒す――地下(じげ)から一国の主となった者もいる……)
三蔵は倭人から口にした単語で引っかかったものを胸中でくり返した。倭寇として生きているからか、けして流暢ではないが対手は明の言葉を話すことができたのだ。
……っ、肚の底が熱くなる。静かな昂奮が身のうちを満たしていた。
(兵法が役立つかもしれない――)
三蔵は声に出さずにつぶやく。
だが、その思いはみな同じだったようだ。
庵で倭人の話を聞いていた仲間たちが、「三蔵」とこちらを呼んで顔を見つめてくる。
三蔵は仲間たちの宰領を果たすようになっていた。
甚助が彼のつむりの巡りの良さに眼をつけ、兵法(へいほう)――軍兵を指揮する術(すべ)を教えたことから、自然とそういう役割を担わされるようになっている。
「誓いを立てよう」
浜で黄昏の陽射しを顔に受けながら、三蔵は静かに告げた。その手には直刀(チータオ)、片刃で反りのない刀剣の柄をにぎっている――暗器(飛び道具)以外にも遣える得物があった方がいいと稽古していたのだ。
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