直刀の誓い――戦国唐人軍記(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)

牛馬走

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「乱波の調べで、肥後の惣(そう)において一揆(いっき)を先導する者たちの存在が明らかとなった」
 彼の言葉を聞きながらも、なぜこんなことを自分に? と三蔵は疑問を覚えていた。が、次の彼のせりふでそれは氷解する。
「その一味にはなんでも“二本の小刀を遣う子供”の姿があるという」
 三蔵は思わず眼を見開いて主を凝視した。
「御屋形様はおぬしたちの腕を高く買っている。一揆を煽動する者たちの始末をおぬしたちに任せようとお考えのようだ――覚悟しておくがよい」
 賢兼は気づかわしげな口調でいうと、背を向けて離れていく。
 事前にそれらの事実を告げてくれたのは彼なりの心遣いだろう――だが、それでも三蔵は煩悶せずにはいられない。
(紅孩児……)
 歳の離れた弟のような彼をこの手で殺めなければならないかもしれないのだ――

      ● ● ●

 睡眠不足によって眼球が熱を持ち、肌の表面を気だるさがおおっている……
 三蔵はまんじりともせずに、悟空と八戒のことを待っていた。広間ともいえない広さの組屋敷の一室には、ほかに悟浄と金角・銀角の姿もある。
 ただし、双子たちは壁にもたれて眠っていた――彼らは暢気にいびきをかいていた。普段ならほほ笑ましく思える光景も、今はいらだちの材料にしかならない。
(あいつら……)
 事情など知らないのだから今日に限って早く帰れというのが無理な話だが、それでも悟空と八戒が女と一夜を共にしているせいで自分が待たされていると思うと腹が立つ。そもそもは、三蔵が心に受けた衝撃のあまり仲間に聞いた話を打ち明けるのが遅れたことに原因はある――が、感情と理性は、男と女のようにいつだって複雑に寄り添ったり反撥したりする。当然、今の彼女の心情は後者にあった。
(紅孩児と戦うことになるかもしれないというのに、あいつらときたらッ……)
 いらだたしさが益々、時が過ぎるのを遅くしていた。
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