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「せ、瀬兵衛殿」「思ってたんだが“殿”はよしてくれ、瀬兵衛でいい」
小平次の言葉に、島役人の瀬兵衛は無邪気な笑みを浮かべた。
そんな顔をしていると、存外に相手が若いことに気づかされる。数歳の違いしかなさそうだ。父として息子を心配する顔や、島の者を差配するために指示を飛ばすようすを見ていたために実際より年配に見積もったようだ、と小平次は気づいた。
「ん、おれの顔になにかついてるか?」
顔を一撫でしながら瀬兵衛が怪訝な顔をする。
「いや。かような折にあって、瀬兵衛は落ちついて行動しておられる、そのことにおどろきました」
「そんなことはない。思い出してくれ、倅が返ってくるまでのおれを」
小平次の言葉に、瀬兵衛がとんでもないと苦笑を浮かべた。小平次は声が上ずらないことに自分でもおどろく。確認したい、そんな強い思いがあるかだろうか。
「されど、爾後は狼狽(うろた)えることなく島の者たちを差配しておられた」
「そりゃあ、怯えたり慌てたりしたところで何も変わらねえからな。それに、仮にもおれらは来島村上水軍の裔だ、島の者はいまだに自分たちのことを水軍として誇っている」
相手の返答に小平次は軽く目を見張る。来島村上水軍の裔としての誇りを未だに――そんな思いを抱いたのだ。
「鰯の頭も信心からっていうだろ。寄る辺なんてなんだっていいんだ、問題なのはそれを強く信じるかどうかだ」
問題なのはそれを強く信じるかどうか、か――瀬兵衛のせりふに、小平次は新鮮なおどおきを感じる。
小平次の言葉に、島役人の瀬兵衛は無邪気な笑みを浮かべた。
そんな顔をしていると、存外に相手が若いことに気づかされる。数歳の違いしかなさそうだ。父として息子を心配する顔や、島の者を差配するために指示を飛ばすようすを見ていたために実際より年配に見積もったようだ、と小平次は気づいた。
「ん、おれの顔になにかついてるか?」
顔を一撫でしながら瀬兵衛が怪訝な顔をする。
「いや。かような折にあって、瀬兵衛は落ちついて行動しておられる、そのことにおどろきました」
「そんなことはない。思い出してくれ、倅が返ってくるまでのおれを」
小平次の言葉に、瀬兵衛がとんでもないと苦笑を浮かべた。小平次は声が上ずらないことに自分でもおどろく。確認したい、そんな強い思いがあるかだろうか。
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相手の返答に小平次は軽く目を見張る。来島村上水軍の裔としての誇りを未だに――そんな思いを抱いたのだ。
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