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と、そこに爆発音が聞こえてきた。事前に太蔵が合図用にここにいない忍びたちに渡しておいて宝禄火が炸裂した音だ。その意味は、
「ようし、陣払いは済んだようだ。お頭を引き上げて、俺たちもずらかるぞ」
と太蔵が告げた通りのものだった。
だが、その声が聞き取りづらくなるほどに雨と風は強まりつつある。
● ● ●
「お頭、失敗(しくじ)った」
合流した舟の上、吟が悔しげな声で報告するのを小平次は聞いた。
「どうしたんです?」
「男衆の一部が、『一戦も交えずに逃げたとあっちゃあ塩飽海賊の名が廃る』って、人のいうことを聞かずに舟を敵のほうに漕いでいったんだよ。そこにこの風と雨だ」
既に大名の御座船でも軽々と翻弄されるほどに波は強まっている、追うことができなかったと吟は訴える。
刹那、一際大きな波が舟を持ち上げた。小平次たちの体を浮遊感が包む。一瞬裡に彼の腕は吟と同じ舟に乗り合わせていた豊へと伸びていた。
次の瞬間、無事に彼女は舟に降り立っている。もし小平次がつかまえなければ海に放り出されていた公算が高い。吟が好きこのんで彼女を舟に乗せていたとは思えないから、無理をいって同乗していたのだろう、やれやれだ。
「これ以上、海で動き回るのは無理です。手前らもひとまず、避難いたしましょう」
小平次の指示を受けて、忍び衆を乗せた二艘の小舟は近くの島に向けて危うく何度も転覆しそうになりながらも向かった。
「ようし、陣払いは済んだようだ。お頭を引き上げて、俺たちもずらかるぞ」
と太蔵が告げた通りのものだった。
だが、その声が聞き取りづらくなるほどに雨と風は強まりつつある。
● ● ●
「お頭、失敗(しくじ)った」
合流した舟の上、吟が悔しげな声で報告するのを小平次は聞いた。
「どうしたんです?」
「男衆の一部が、『一戦も交えずに逃げたとあっちゃあ塩飽海賊の名が廃る』って、人のいうことを聞かずに舟を敵のほうに漕いでいったんだよ。そこにこの風と雨だ」
既に大名の御座船でも軽々と翻弄されるほどに波は強まっている、追うことができなかったと吟は訴える。
刹那、一際大きな波が舟を持ち上げた。小平次たちの体を浮遊感が包む。一瞬裡に彼の腕は吟と同じ舟に乗り合わせていた豊へと伸びていた。
次の瞬間、無事に彼女は舟に降り立っている。もし小平次がつかまえなければ海に放り出されていた公算が高い。吟が好きこのんで彼女を舟に乗せていたとは思えないから、無理をいって同乗していたのだろう、やれやれだ。
「これ以上、海で動き回るのは無理です。手前らもひとまず、避難いたしましょう」
小平次の指示を受けて、忍び衆を乗せた二艘の小舟は近くの島に向けて危うく何度も転覆しそうになりながらも向かった。
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