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五
しばしののち、光脩は番町へとやって来た。江戸城の北西にある地域で武家地だ。
ここでも辻番で話を聞いてまわった。戸口を開けっ放しにする彼ら以上に話を聞くのに適した人間はいない。そして、その甲斐があって、
「ああ、そういえば清水兵庫の殿様が『変わった柄の犬を手に入れた』と自慢していたな」
と番人のひとりが告げたのだ。場所は表四丁目の辻でのことだった。当時、殿様とは大名だけでなく旗本にも使った。
「その清水の殿様の屋敷は?」「この辻から四つ目のお屋敷ですよ」
おしゃべり好きらしい番人は、「とにかく、色々と集めるのが趣味の人なんですよ」と言葉をかさねる。
「わかった、礼を言う」このままでは日暮れまで話に付き合わせられる、光脩は相手の言葉を半ば強引にさえぎってその場から歩き出した。側で地面に横になっていた犬家康もそれにつづく。
やがて、清水家らしき屋敷が視界に入ってきた。塀が瓦葺の土塀となっていることからして数百石取りの旗本の屋敷のようだ。旗本は将軍家の直臣で立場は大名と同等――江戸初期ほどの権威はないとはえ何かやらかせば死罪となりかねない。
が、道端で迷っていても何も変わらない――光脩がそう考えたところで、『おい、主人。主人はおるか』と犬家康が門前で声をあげていた。
光脩は思わず目を剥く。そして全速力で犬家康のもとに駆け寄った。
「おまえ、物事には手順ってものがだな」
門扉の脇の戸口を開けて外出着の中年ほどの風貌の武士が眉間に皺を寄せて姿を現す。どうやら、ちょうど出かけるところのようだ。その脇には門番らしき老爺の姿もあった。
しばしののち、光脩は番町へとやって来た。江戸城の北西にある地域で武家地だ。
ここでも辻番で話を聞いてまわった。戸口を開けっ放しにする彼ら以上に話を聞くのに適した人間はいない。そして、その甲斐があって、
「ああ、そういえば清水兵庫の殿様が『変わった柄の犬を手に入れた』と自慢していたな」
と番人のひとりが告げたのだ。場所は表四丁目の辻でのことだった。当時、殿様とは大名だけでなく旗本にも使った。
「その清水の殿様の屋敷は?」「この辻から四つ目のお屋敷ですよ」
おしゃべり好きらしい番人は、「とにかく、色々と集めるのが趣味の人なんですよ」と言葉をかさねる。
「わかった、礼を言う」このままでは日暮れまで話に付き合わせられる、光脩は相手の言葉を半ば強引にさえぎってその場から歩き出した。側で地面に横になっていた犬家康もそれにつづく。
やがて、清水家らしき屋敷が視界に入ってきた。塀が瓦葺の土塀となっていることからして数百石取りの旗本の屋敷のようだ。旗本は将軍家の直臣で立場は大名と同等――江戸初期ほどの権威はないとはえ何かやらかせば死罪となりかねない。
が、道端で迷っていても何も変わらない――光脩がそう考えたところで、『おい、主人。主人はおるか』と犬家康が門前で声をあげていた。
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「おまえ、物事には手順ってものがだな」
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