犬を舐めるな従えよ(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「俺の実力は分かっただろう。お前の匂いはそこの犬がおぼえた、今度悪さをしたらお前の命はないぞ」
 光脩の言葉にしばらく無言の時間があったが、
「わかった」とあきらめたような声が妖狐の口から漏れた。念のため、妖力封じの術を仕かけた上で解放した。もちろん、大店の主から騙し取った百両は回収して元の持ち主に返した。礼に十両も受け取れたのは光脩としては大収穫だ。
 それから、光脩としては面倒臭いことこと上ないが、ふたたび犬信長、犬秀吉探索にもどった。大店はもう無駄だろうと見切りをつけて行商人に的をしぼることにした。ただ、こちらも、
「こちとら、忙しいんだ。邪魔すんじゃねえ」「おとといきやがれ、小僧」
 といった具合で必ずしも順風満帆というわけにはなかなかった。
 だが、そんな中でも簪売りの老女から、
「いやあ、悪いねえ。心当たりはないよお」
 といった好意的な返答があった。そして、
「そうだ、このあたりで商売をしている糸売りがいるからなにか知ってるかもしれないよ」
 確かこの刻限は、と老婆は糸売りの居場所を教えてくれた。
『善行を積む者は善人が力を貸してくれるのだ』
 などと犬家康は偉そうなことをいうが、聞き込みに関しては何もしていないため光脩は腹立ち紛れに彼のことを無視する。糸売りのもとを訪れたが空ぶりにおわった。ただ、他の一帯の行商人を紹介してもらう。その行商人、銭(ぜに)さし売りからは重大な情報を得られた。
「変な紋様を背中に持った犬なら、それを模様と取るか人にもよるだろうが見たぜ」
「本当か?」
 興奮する光脩は道端で相手と言葉を交わしている。
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