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『なるほど、不憫だのう』
他方で犬家康は犬の体で器用に数度うなずいてみせる。
「だが、陰陽師の出番じゃあないな。力になれなくてすまん」
早口に言って光脩はその場を離れようとした。
『薄情者が』が、犬家康が袴の裾を噛んでそれを阻む。
『今の話を聞いて、力になってやろうとは思わんのか貴様は。わしはかつての為政者として苦しみ民を見捨てておけんぞ』
「俺はあんたの御同類を探すので手一杯だ」
『そういう問題ではない』
「そういう問題だ」
思念の声を強める犬家康に対して光脩も声が高くなった。
「俺の体はひとつだ。何かを同時に二ヶ所で探すことはできない」
だが、なんとか冷静になろうとつとめ声を落として犬家康に反論する。
『致し方ない。ご両人の探索はしばしのあいだ休むことを許す』「いいのか、本当に」
渋々ながらも信長、秀吉の探索の中断を許可する犬家康に光脩は眉をひそめた。ふたりを探すことにかなり執着しているようすだったというのに。
『ご両人の件は最悪の場合、幕府の者たちが解決するだろう。しかし、この娘の問題は与力、同心では解決してくれまい』
そこまで言われると犬家康の言葉を論破するのはむずかしかった。
そこで無意識のうちに光脩は稲のほうを見やる。すると、そこにあったのは憐れな娘がどこかかすかに期待をまなざしに込めて自分に視線を向けるという光景だ。あー、もう――光脩は胸のうちで不満の声をもらす。そんな目をされたら断りづらいではないか。その上、
『ほれ、返事はどうした』犬家康が頭をふって光脩の袴を引っ張る。このままでは破かれそうな勢いだ。なんだかもう面倒になった。もう、どうにでもなれ、だ。
他方で犬家康は犬の体で器用に数度うなずいてみせる。
「だが、陰陽師の出番じゃあないな。力になれなくてすまん」
早口に言って光脩はその場を離れようとした。
『薄情者が』が、犬家康が袴の裾を噛んでそれを阻む。
『今の話を聞いて、力になってやろうとは思わんのか貴様は。わしはかつての為政者として苦しみ民を見捨てておけんぞ』
「俺はあんたの御同類を探すので手一杯だ」
『そういう問題ではない』
「そういう問題だ」
思念の声を強める犬家康に対して光脩も声が高くなった。
「俺の体はひとつだ。何かを同時に二ヶ所で探すことはできない」
だが、なんとか冷静になろうとつとめ声を落として犬家康に反論する。
『致し方ない。ご両人の探索はしばしのあいだ休むことを許す』「いいのか、本当に」
渋々ながらも信長、秀吉の探索の中断を許可する犬家康に光脩は眉をひそめた。ふたりを探すことにかなり執着しているようすだったというのに。
『ご両人の件は最悪の場合、幕府の者たちが解決するだろう。しかし、この娘の問題は与力、同心では解決してくれまい』
そこまで言われると犬家康の言葉を論破するのはむずかしかった。
そこで無意識のうちに光脩は稲のほうを見やる。すると、そこにあったのは憐れな娘がどこかかすかに期待をまなざしに込めて自分に視線を向けるという光景だ。あー、もう――光脩は胸のうちで不満の声をもらす。そんな目をされたら断りづらいではないか。その上、
『ほれ、返事はどうした』犬家康が頭をふって光脩の袴を引っ張る。このままでは破かれそうな勢いだ。なんだかもう面倒になった。もう、どうにでもなれ、だ。
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