忍び切支丹ロレンソ了斎――大友宗麟VS毛利元就(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 ロレンソはもともと、毛利家に仕える忍び者だった。

       ● ● ●

 修羅場を遠ざかり、この方の腕前もにぶったようですね――。
 アルメイダは攻防に入ったロレンソを見据えながら自身も油断なく立ち上がる。
 視野の端では鹿之助をかばい男女が前にたたずむのが映っていた。主の警固が最優先といったところか。
 いたしかたありませんね――アルメイダは黒い聖衣の裾をまくった。
 商人を辞めてからは縁遠くなっていた、なつかしい感覚が手につたわる。忘れかけていても、ひとたびにぎれば自身の体のごとく手のひらになじむ。鉄砲が。
 肩やほおに当てて使うマスケット銃ではなく短筒だ。
 それを右と左に一丁ずつ構えた。銃口は無事に床に立つふたりの襲撃者、この国の暗殺者である忍び者へと向けている。決意をしてから今にいたるまで一瞬裡の出来事だ。
 引金をしぼる。短銃で人を撃つこつは、腕をのばしきらず衝撃を殺すことだ。
 見事、命中。ひとりが胸を撃たれて倒れる。
 が、もう一方の忍び者はかろうじて躱していた。銃丸が当たったものの、腕をかすめた程度にとどまる。
 しかし、それで慢心はしない。あきれるほど見事に相手は瞬時に遁走を決めて外へと駆けた。それにほかの者もつづく。
 衣装の下の新しい短銃を取り出すひまもない。
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