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これは了斎は後でアルメイダから説明されて知ることになるのだが、次郎丸はもともと大内家家中の武士の子だというのだ。そして、父を毛利との戦で亡くしている。ために、毛利家に対し並々ならぬ思いを抱いていた。
それが噴出したのだろう。
もっとも、原因はこれだけではない。
大内輝弘の説得工作とその後の合力のために了斎と合流したのだが、しきりに「先の、尼子の将士への合力の折のそれがしの業前、見たはず」とくり返すのだ。
明らかに過信しているのだ。己の鉄砲の腕を。
いうまでもなく、前回の次郎丸の活躍は彼の独力によるものではない。
尼子の忍びふたり、了斎の手助けがなければ山のなかを自在に移動し、さらに上手く身を隠すことはできなかった。
それだけでなく、師であるアルメイダと補いあってこその業前だ。
連射の利かない鉄砲の放ち手ひとりの力など、敵の大将を仕物にかけるなどの場面を除いてたかが知れている。
が、
「神(デウス)が苦しんでいる者を救った試しがあるのか」
次郎丸はさらに声を張り上げて抗弁した。その目には憎しみにも似た色がやどっている。
その言葉に、ふつうの切支丹であれば激怒したはずだ。
だが、アルメイダは生粋の宗教者ではない、元は商人だ。通常の司祭(パードレ)とは違った物事を、世界を長く見た身。そのため、反射的に怒鳴ることはしなかった。
代わりに、口角をさげ伏せがちな目でしずかに次郎丸を見すえる。アルメイダの反応に、怒声を浴びせられるよりもかえって次郎丸はうろたえた。
「それがしは。それがしは悔しい」
早口に言葉をかさねる。
「二股膏薬の毛利陸奥守が権勢をひろげ、さらに鎮西までもおびやかしていることが」
「苦しいのですね」
そんな次郎丸に対し、ほとんど間髪いれずにアルメイダは応じた。
それが噴出したのだろう。
もっとも、原因はこれだけではない。
大内輝弘の説得工作とその後の合力のために了斎と合流したのだが、しきりに「先の、尼子の将士への合力の折のそれがしの業前、見たはず」とくり返すのだ。
明らかに過信しているのだ。己の鉄砲の腕を。
いうまでもなく、前回の次郎丸の活躍は彼の独力によるものではない。
尼子の忍びふたり、了斎の手助けがなければ山のなかを自在に移動し、さらに上手く身を隠すことはできなかった。
それだけでなく、師であるアルメイダと補いあってこその業前だ。
連射の利かない鉄砲の放ち手ひとりの力など、敵の大将を仕物にかけるなどの場面を除いてたかが知れている。
が、
「神(デウス)が苦しんでいる者を救った試しがあるのか」
次郎丸はさらに声を張り上げて抗弁した。その目には憎しみにも似た色がやどっている。
その言葉に、ふつうの切支丹であれば激怒したはずだ。
だが、アルメイダは生粋の宗教者ではない、元は商人だ。通常の司祭(パードレ)とは違った物事を、世界を長く見た身。そのため、反射的に怒鳴ることはしなかった。
代わりに、口角をさげ伏せがちな目でしずかに次郎丸を見すえる。アルメイダの反応に、怒声を浴びせられるよりもかえって次郎丸はうろたえた。
「それがしは。それがしは悔しい」
早口に言葉をかさねる。
「二股膏薬の毛利陸奥守が権勢をひろげ、さらに鎮西までもおびやかしていることが」
「苦しいのですね」
そんな次郎丸に対し、ほとんど間髪いれずにアルメイダは応じた。
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