忍び切支丹ロレンソ了斎――大友宗麟VS毛利元就(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「尼子の将士が動いている今、貴殿が兵をあげれば毛利は三方に兵を抱えることとなりまする」
 アルメイダがかさねる言葉に輝弘の顔色が変わりはじめる。
「さらに、焔硝は手前が差配いたしましょう」
 元商人であるアルメイダは異国との商いにおいておおいに腕をふるっている、その彼が硝煙の調達を担うとなればこれほど心強いことはない。そのことは、大友家に世話になっている輝弘が知らないはずがなかった。
 それからしばしののち、大内輝弘はついに首を縦にふる。

        ● ● ●

 大内輝弘の説得自体はさほど難航することなく終わった。
 だが、問題は別のところで起こったのだ。
 夜。府内にあるデウス堂の、元は大友家の屋敷だったものを切支丹の住処に改築した建物の一室にかたくなな声がひびく。
「それがしは大内殿の合力し、陣借りいたしまする」
 まだ声変わりもしていないが、そのぬしである次郎丸の表情は真剣極まりないものだ。まなざしはすでに軍立場(いくさたてば)に飛んでいる。
「なりません。あなたは神(デウス)の教えに背くつもりですか」
 対するアルメイダもまた険しい顔つきだ。声こそ抑えたものだが、その双眸からは紛れもない怒気がのぞいている。
 さて、どうしたものか、と了斎は双方の中間地点、すこしさがった位置に腰をおろした姿勢で思案した。
 はじまりは、次郎丸に大内輝弘が周防に攻め入ることを決めたと報告したことだ。
 こたびもまたこれを手助けする必要があり、次郎丸の鉄砲の業は欠かせない。それを考慮して説明したのだ。命のやり取りをする、そのことを考えると子ども扱いして詳細を伏せるのは最低限の倫理にももとる、という判断のもとだった。
 が、これが裏目に出た。
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