忍び切支丹ロレンソ了斎――大友宗麟VS毛利元就(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 その彼が、大内輝弘のことをめぐって初めて司祭(パードレ)である自分に楯突いたのだ。
 会士の立場からすれば歓迎すべきことではない、いや看過できない行動といえる。
 それでも――アルメイダは了斎の“変化”にまぶしさを感じたのは事実だ。
 結局、了斎はこちらが制止したにもかかわらず大内輝弘に“大友宗麟は大内一党を捨石にする肚づもりやもしれない”という事実を告げてしまった。その一件は当人が報告してきた。どうぞ、罰するのなら罰してくださって構わない、と。
 その目は以前の了斎とは別人だった。
 アルメイダ自身がそうだったからわかるのだが、了斎という人間は“逃げて”いた。
 なにから、というのはなんとなくわかる。元は忍びだった、という過去に元凶はあるに決まっていた。
 それを麻痺させるための切支丹への帰依。
 その、はずだった。
 しかし、了斎は変わったのだ。おそらくはれんが原因なのだろう。
 考えてみれば――その、れんを助けるという行動は了斎に影響されてのものだ。
 かつての自分なら、アルメイダは己の身を危険にさらしてまで女忍びを助けるために動かなかっただろう。
 命が惜しいからではない。日本の切支丹に対する己の存在の大きさをかんがみえれば軽々に動ける身ではない。
 はずだった。
 だが、気づけば鉄砲を手にあの女性を助けていた――。
 そして、あえなく敵の忍びに捕えられた。
 冷静になって考えると愚かだと感じる。それでも、不思議と心は満たされている。虜囚の身として敵の陣中にいるというのに。
「あの子は請えば赦してくれるだろうか」
 答えを知るのが怖くて口にさえしなかった問いをアルメイダはもらす。すぐに苦笑がその口もとに浮かんだ。
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