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第一章 思慕
一
「なんだ、てめぇはッ!」
夜半、村外れの荒れ寺に無宿人の怒声が響きわたった。
殺気だった無数の男たち、その視線の先には一組の男女の姿がある。
一人は、打裂羽織(ぶっさきばおり)に野袴(のばかま)という回国修行者を思わせる装(なり)の涼しげな目元をした若い武士だ。
一方の娘はというとこちらは無造作に垂れ髪を玉結びにし、野羽織(のばおり)、野袴、腰には小太刀という出で立ちだ。玉結びの髪には簪(かんざし)の代わりに四つの鉄の棒がそれぞれ左右に――計八つが刺されていた。彼女は斜め前に立つ若者とは血縁にあるのか、凛とした美しさを備えている。その容貌は艶(あで)やかな牡丹(ぼたん)を思わせた。
武士は愛洲藤兵衛雄彦(あいすとうべえたけひこ)、女性は八重(やえ)という名で兄妹(きょうだい)だ。両者ともひるむことなく、目を吊り上げた人相の悪い男たちを見返していた。
「我らはさすらい番太。いうなばれ用心棒だ。貴様らの非道の行い目に余るものがある、神妙にするならよし――」
雄彦が口を開き名乗りを上げる。
「しなけりゃ、どうするってんだ!」
無宿人のひとりが長脇差(ながどす)――一尺七~八寸(約五一~五四センチ)の脇差を抜いた。それに触発され、他の者たちも手荒な手つきで得物を鞘から解き放つ。灯明の光を受けて、無数の刃が飢えた獣の眼のように輝いた。
一
「なんだ、てめぇはッ!」
夜半、村外れの荒れ寺に無宿人の怒声が響きわたった。
殺気だった無数の男たち、その視線の先には一組の男女の姿がある。
一人は、打裂羽織(ぶっさきばおり)に野袴(のばかま)という回国修行者を思わせる装(なり)の涼しげな目元をした若い武士だ。
一方の娘はというとこちらは無造作に垂れ髪を玉結びにし、野羽織(のばおり)、野袴、腰には小太刀という出で立ちだ。玉結びの髪には簪(かんざし)の代わりに四つの鉄の棒がそれぞれ左右に――計八つが刺されていた。彼女は斜め前に立つ若者とは血縁にあるのか、凛とした美しさを備えている。その容貌は艶(あで)やかな牡丹(ぼたん)を思わせた。
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「我らはさすらい番太。いうなばれ用心棒だ。貴様らの非道の行い目に余るものがある、神妙にするならよし――」
雄彦が口を開き名乗りを上げる。
「しなけりゃ、どうするってんだ!」
無宿人のひとりが長脇差(ながどす)――一尺七~八寸(約五一~五四センチ)の脇差を抜いた。それに触発され、他の者たちも手荒な手つきで得物を鞘から解き放つ。灯明の光を受けて、無数の刃が飢えた獣の眼のように輝いた。
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