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そもそも、この兄妹がさすらい番太をしているのには事情がある。
それは敵討のためだ。
ふたりの父はとある小藩の中士だった。厳しくは優しい父、いつもほがらかな母、まるで家族のように接してくれる中間(ちゅうげん)などに囲まれ、楽な暮し向きではないが幸せに暮らしていた。
だがある日、父が辻斬りに遭ってしまう。
その頃、城下において夜中に他出していた罪もない人々が斬り殺されるという事件が横行していたのだ。
下手人はすぐに明らかになる――藩の下士の子息たちが、雄彦の父が惨殺された次の日に逐電したのだ。また、下士の子息たちが下手人であることは、その太刀筋からも明らかだった。牢人生活で諸藩を渡り歩く中で父が身につけたという二天一流を、倅たちは習い覚えていたのだ。
――そして、雄彦は仇討ちのために旅に出ることになる。
が、ここで一悶着あった。
妹の八重が「わたくしも連れて行ってください」と云(い)って聞かなかったのだ。女だてらに同じ藩の藩士から中条流小太刀の技を学んだ利かん気の強いこの娘は、「お父上の無念、わたくしも晴らして差し上げたいのです!」と兄に訴え、しまいには「連れていってくださらないのなら、舌を噛みまするッ」と脅迫にまで出た。
まさか本当に自害するとはさすがに思えないが、「この気の強い妹のことだ。勝手に敵を追いかけるぐらいのことはするかもしれない」と兄の雄彦は考えたのだ。それならまだ、眼の届くところに置いていたほうが安心だということになり、連れ立って敵討の旅に出ることになる。
人の集まる江戸において情報収集を行った結果、件(くだん)の子息たち――双子の二刀流の遣(つか)い手は、無宿人の用心棒のようなことをして武州を点々としている事実が明らかになった。
そもそも、この兄妹がさすらい番太をしているのには事情がある。
それは敵討のためだ。
ふたりの父はとある小藩の中士だった。厳しくは優しい父、いつもほがらかな母、まるで家族のように接してくれる中間(ちゅうげん)などに囲まれ、楽な暮し向きではないが幸せに暮らしていた。
だがある日、父が辻斬りに遭ってしまう。
その頃、城下において夜中に他出していた罪もない人々が斬り殺されるという事件が横行していたのだ。
下手人はすぐに明らかになる――藩の下士の子息たちが、雄彦の父が惨殺された次の日に逐電したのだ。また、下士の子息たちが下手人であることは、その太刀筋からも明らかだった。牢人生活で諸藩を渡り歩く中で父が身につけたという二天一流を、倅たちは習い覚えていたのだ。
――そして、雄彦は仇討ちのために旅に出ることになる。
が、ここで一悶着あった。
妹の八重が「わたくしも連れて行ってください」と云(い)って聞かなかったのだ。女だてらに同じ藩の藩士から中条流小太刀の技を学んだ利かん気の強いこの娘は、「お父上の無念、わたくしも晴らして差し上げたいのです!」と兄に訴え、しまいには「連れていってくださらないのなら、舌を噛みまするッ」と脅迫にまで出た。
まさか本当に自害するとはさすがに思えないが、「この気の強い妹のことだ。勝手に敵を追いかけるぐらいのことはするかもしれない」と兄の雄彦は考えたのだ。それならまだ、眼の届くところに置いていたほうが安心だということになり、連れ立って敵討の旅に出ることになる。
人の集まる江戸において情報収集を行った結果、件(くだん)の子息たち――双子の二刀流の遣(つか)い手は、無宿人の用心棒のようなことをして武州を点々としている事実が明らかになった。
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