斬奸剣、兄妹恋路の闇(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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   六

 村の外れ、道につづく場所に集落の百姓たちがつどっていた。その先頭には、田吾作と加代の姿もある。その視線の集まる先には雄彦と八重の姿がある――二人は村総出での見送りを受けているのだ。
「ほんとうにありがとうございました」
 田吾作と加代が口をそろえて云い、深々と頭を下げる。
「なに、さすらい番太としての務めを果たしただけだ。これ、このとおり金子(きんす)も受け取っておる」
 雄彦は微苦笑を浮かべ、金子を収めた胴巻(どうまき)を着物の上から叩いてみせた。
「どうか、幸せに」
 八重も淡い笑みを浮かべて言祝(ことほ)ぐ。
 ……、とその横顔を盗みみた雄彦は複雑な思いに囚われた。妹の顔つきは、百姓の夫婦のことをうらやんでいるものに移ったからだ。
 
 ――なおもしばらく別れを惜しみ、兄妹は敵討のために村を発った。
 もし、蝮の云っていたことがこちらの心中をかき乱すためだけの虚言でなければ、近いうちに敵を巡りあうことになるかもしれない。
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