斬奸剣、兄妹恋路の闇(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「ぬかった!」という声が厠の外であがる。
 ――その機を逃さずに雄彦は外へと飛び出した。同時にいくつもの竹槍が唸りをあげてその身に突き進む。
 閃、閃、閃、と雄彦は鮮やかな太刀さばきでそれらを斬った。
「なにっ!?」「莫迦な!」「こいつ、手練だぞ!」
 慮外の出来事だったのか、厠の外で待ち受けていた無数の人影の間から動揺の声があがる。――正体はその装(なり)からすると集落の百姓たちのようだ。
「貴様ら、何ゆえかような不逞を働く!」
 雄彦は雷声を発し、敵を威圧しながらもその目的を明かすように迫る。
 一瞬、その声に呑まれたように、男たちは身体を硬直させた。
 が、すぐに多勢をたのみにしていることを思い出したのか、そのうちのひとり――名主が小憎たらしい口ぶりで語りはじめる。
「はは、これは不逞にあらず。旅人から金子を頂戴するのが、我らの生計(たつき)よ!」
「なに? ということは、集落そのものが盗賊の根城ということか!?」
 雄彦は驚愕の表情を形づくる――が、一方で得心がいった。さすらい番太としての働きをみせたわけでもないのに手厚い歓迎をされた、あれは旅人を油断させるための手練手管なのだろう。
「貴様ら兄妹を手厚く遇したは、その懐の路銀を頂くためよ!」
 雄彦の予想を肯定するように名主が得意顔で叫んだ。
「おのれ、外道め――」
 そこまで云いかけたところで、はたと気づく。
(しまった、八重が――)
 無防備な姿をさらしている、その事実が電撃的に脳裡にひらめいた。
 こちらの表情の変化から胸のうちを読み取ったのか、
「今頃、貴様の妹は手込めにされているだろうよ。わしもあとでたっぷりいただくとしよう――」
 名主が下卑た顔で言い放った。
「下郎め!」
 その言葉が雄彦の怒りに火をつける――
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