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お茶会(強制)終了です。

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 令嬢たちの阿鼻叫喚が響き渡った会場に、周囲で警備していた衛兵さんや、控えていた侍女さんたちが慌てて駆けつけた。
 その後ろからは、子供たちの保護者が続々と入ってくる。


 そして。

 泣き崩れる令嬢。気を失う令嬢。場の混乱した空気に呑まれ恐慌状態の子。親に泣きつく子。
 真っ青な顔色のレオン君。
 喜色満面のディー様に頬を摺り寄せられ、魂が旅に出た私。
 そんな私を見て、ディー様を見て、悲鳴を上げる父。


 お茶会はとんでもない惨劇の会場と成り果て、強制終了となった。








「アイル…あいるぅぅ~…」
「おとうさま、そりょそりょ、おちちゅいてくだしゃい」


 私が迷子になり、泣きながら捜索し、子爵家とは一生ご縁のないはずの皇子殿下と一緒にいるので安心してくださいと言われ全然安心できずにお茶会が終わるのを悶々と待ち続けていたらしいお父様は、緊張の糸が切れたのか、精神が崩壊したのか、ずっと泣きながら私を抱きしめ続けている。
 おかげで私のドレスの胸元はビショビショだ。
 でも私が迷子になったことが何よりの原因なので、甘んじて受け止めている。
 

「だって、まさか殿下とご一緒なんて…なんで子爵家の我が家のアイルが、殿下とご一緒なの……?だっこされてるの……?」
「こりぇには、にゃんこのひたいよりせまく、みずたまりよりあしゃい、りゆうがありゅのでしゅ」


 生まれ変わる前の一時の縁がね。





「アイル、そろそろ御父上は落ち着いたかな?」
「でぃーさま…まだでし…」

 お借りしていた一室の扉を開け、室内を覗くディー様。
 混乱しているお父様に気を遣ってか席を外していてくれたのだが、戻ってきたようだ。
 まだだ、と言っているのに、遠慮なく入ってきて、私の頭をポンポンしてくる。
 私は落ち着いてるので、ぜひお父様の頭を………だめだ、むしろ情緒不安定になる未来しか見えない。


「ウェヌス子爵」
「でっ殿下!」

 ディー様に声をかけられたお父様は、ものすごい勢いでピシッと立ち上がった。
 …下級とは言え、貴族家当主がこんなに素直なわかりやすい感じで大丈夫なのかな…。

「お初にお目にかかります、皇子殿下。ウェヌス子爵家当主、レオポールと申します」
「はじめまして、オーディン・バルト・ディエバスだ。…あなたは僕のアイルの御父上だ、そんなに畏まらなくてもいいよ」
「ありがたきおことばで……………『僕の』?」


 せっかく少し落ち着いた様子だったお父様が、ディー様の言葉で、ポカンと口を開けた情けない姿に戻ってしまった。
 その間にディー様は、私の座るソファに、私にぴたりとくっつくようにして座った。
 2歳児二人とはいえ、一人掛けのソファだ。無理やり割り込んできたらせまいだろう。正面のソファに座ればいいのに。
 再会してから、天帝さんの時より距離感がおかしなことになっているような気がする。世はまさに大ソーシャルディスタンス時代。適切な距離感を求む。

 やはりせまいと思ったのか、ディー様は私を自分の膝の上に引っ張り上げ座らせた。
 私よりも多少身長が高いとは言っても大きな差ではないので、結果私の後ろに隠れてしまうディー様は、横からひょこっと顔だけ出し、お父様に笑いかけた。
 

「僕の可愛いアイルは、今日から王宮で暮らしてもらうことになったんだ」




 そんな話は聞いてない。



 
 
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