神様の転生のお供に選ばれまして ~異世界転生したら溺愛されるなんて聞いてません~

ものぽりー

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いつもよりちょっと勇敢なお父さん。with 鯖折り娘。

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 私が大泣きした後。


 私が泣くところなど見たことが無かったお父様はそれまでが嘘のようにすぐ正気に戻り、いつのまにか部屋の隅に移動していた私たちのところへ慌てて駆け寄ってきた。

 「殿下!我が家の大事な娘を泣かせたのですか⁉」って。

 いつもは情けないところがあるお父様。怒った所なんて一度も見たことが無かった優しいお父様。
 それなのに、私が泣かされたと思って、まさか王族相手に怒鳴るなんて。
 それはまるで私がとても愛されている証拠のよう。


 嬉しくてさらに激しく泣き出す私を見て、お父様は「アイル!大きな声を出してごめんよ、ああぁ、怖がらせてしまったかい⁉」と取り乱す。
 力の限り泣きながらディー様にしがみつく娘と、そんな私を慈しみの目で見守りながら抱きしめ、あやす様に背中を撫でるディー様。
 どうやら殿下に泣かされたわけではなさそうだと気づいたようだが、しかし泣いたことのない娘が泣き出した事情を聴きたいのに相手は皇子殿下だから問い詰められない…と情けない顔でオロオロする姿はいつものお父様に戻っていたが、どうやら私のお父様は本当は最高にかっこいい人だったようだ。
 感動のあまり「おどぅじゃまぁぁ…っ!」と父に抱き着こうとした私は、背後から腹をディー様にぎゅぅぅぅぅうっと締め付けられ、違う意味で涙他もろもろ出てはいけないものが溢れ出しそうになった。とりあえず令嬢として出してはいけない感じの野太い悲鳴は口から出た。
 「殿下、娘がっ!娘が上と下に分かれてしまいますぅぅぅっ!」と青ざめたお父様の助命嘆願がなければ、私はすでに死んでいたかもしれない。







 やっと落ち着いた私。
 涙は止まったものの、年甲斐もなくあんなに泣き喚いた恥ずかしさに顔から熱が引かず、マーサさんにせっかく整えてもらったというのに不細工全開になったであろう泣いた後の顔を上げることも憚られ、行儀悪くもソファの上で膝を抱えて顔を埋めたままだが。

 優しいディー様とお父様は、そんな私の様子には触れずにそっとしておいてくれるようだ。ありがたい。


「殿下。先程のお話なのですが…」
「アイルは王宮で暮らしてもらう。それは決定事項。すでに陛下にも許可は貰っている。専属の護衛と侍女もつけるし、僕も常に傍でアイルを守るから、安心してほしい」
「常に傍とは……それはそれで、娘の身が大変心配なのですが……」

 うんそうだよね、ボロが出て殿下相手になに仕出かすかわかんないもんね。
 やらかしの内容次第では、家族まとめて打ち首覚悟しないといけないもんね。

「アイル、アイルの心配していることとウェヌス子爵の心配していることは違うと思うよ」

 声に出してなかったと思うのに、ディー様は生まれ変わっても心が読めるの⁉

「読んでないよ。アイルのことはずっと見てるからわかるだけ」

 絶対嘘だ。嘘じゃなかったらレスポンスのタイミングまで読めるってこと⁉筒抜けとか怖すぎる、主にザルな私の今後が!


「…アイルは表情豊かとは言えませんのに、殿下はお分かりになるのですか…?」

 お父様はとても驚いた表情でディー様を見ていた。
 そうだよね、私基本能面だもんね。ほんと驚異の察知能力だよね。

「アイルは一見表情の動きが少なく見えるけど、よく見ていればわかるよ。嬉しい時は目がキラキラしてて可愛いし、悲しい時はちょっと唇をきゅっと結んで耐えようとして庇護欲そそるし、驚いた時は目が1.5mmくらい大きく開くのが「でぃーさま、こまかしゅぎてこわいでしゅ」…そう?」

 ドン引きだよ。


「で、殿下がアイルを非常に理解してくださっていることは、よく……とても、よく、わかりました」
「ありがとう」
「しかし、アイルは私と妻、それに我が家に仕えてくれる使用人たちにとってもとても大切な子なのです。このままアイルを王宮に留め、私だけが帰ることはできません。娘に会えなくなったと知れば、きっと皆、何も手に付かなくなるほど胸を痛めるでしょう。ですから」
「会えなくなどしないさ」
「…………は?」


 切々と嘆願するお父様の言葉に再び感動していると、ディー様がさっくりと話の腰を折った。


 
 
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