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閑話*オーディン視点
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アイルを迎えに行くと宣言した日から、半年が経った。
部屋の準備は終わった。少しクリーム寄りの白をベースとしてまとめ、所々に薄いピンク…桜色を入れ全体を明るく可愛いが落ち着きのある印象に変えた。ベッドはよりフカフカに。土足厳禁とした絨毯もより毛足の長いものに変えてモフモフに。ぬいぐるみは子フェンリルが居るので準備しなかった。何か抱きしめたいなら僕を抱きしめればいい。僕も嬉しくてwin‐winだ。フェンリル用の犬小屋も部屋の隅に置いた。赤い屋根にレンガの煙突をつけ、童話に出てくる家のようなデザインのものを作ってみたが、中は丸ごと寝床だ。フェンリルが小さいうちしか使えないが、万が一にも一緒のベッドで寝るなどと言い出さないように絶対に必要なものだ。アイルの添い寝を犬如きに譲る気はない。
これでいいだろう。
今日こそ、僕のアイルを迎えに行こう。
「というわけで行ってきます」
「お待ちなさい」
フェンリルを捕獲しに行ったとき同様、朝食の席で両親に伝えると、母上から待ったがかかった。
「部屋は整えました。ペットの躾もバッチリです。というわけで行ってきます」
「お待ちなさい」
まだ何かあるというのか。
「あなたは以前『一応貴族子女』と言っていましたね」
「そうですがそれが何か」
「一応ということは、上級貴族の子女ではないのですね?」
「…だったら何です」
もし身分のことでうるさく言われるようなら、僕の部屋からうっかりフェンリルが逃げ出し母上に激しくじゃれ付くかもしれないね。
「上級貴族の子女でないのであれば、あまりドレスなども持っていないのではないですか?あなた、部屋は整えてもドレスは用意していなかったでしょう」
「あ」
服に興味がないうえに今まで服を自分で購入したことが一度もないから、気付かなかった。
アイルは子爵家に生まれた。善良な人柄の当主夫妻の元、だが決して裕福ではない家だ。王都での社交とは縁遠い、そんな家がまだ小さな娘のドレスを山の様に作り与えているとは思えない。
「貴族子女にとって、ドレスとは戦闘服です。決して疎かにしてはいけません。満足な用意ができず他のご令嬢方に笑われ侮られるのは、あなたではなく、その少女なのですよ」
もちろんアイルは何を着ていても可愛いのだが。それを理解しない、外側を飾り付けることに命を懸ける貴族令嬢たちは、ドレスを用意できないアイルを嘲笑うだろう。ふざけるな鏡を見ろ。アイルが平民の服を着ていたとしても、お前たちよりずっと可愛い。雪の妖精シマエナガと大型類人猿イエティが並び立てると思うな。
想像しただけで怒りが振り切れそうになり魔力があふれ出す僕の服を、隣で伏せていたフェンリルが咥えて引っ張る。落ち着けと言いたいらしい。
両親も食堂内に控えている給仕の者も、顔を蒼褪めさせている。尻餅をついている者さえいた。
ふぅ、と息を吐き、心を落ち着ける。
そうだ、そうならないためにするべきことは、
「彼女を迎えに行くのは再度保留にして、ドレスを用意します。母上の御用達の商会を呼んでも?」
「かまいませんよ」
「ありがとうございます。急用ができましたので、失礼します。行くよ」
『きゃん!』
アイルにはもう少し待っていてもらうことになるが、アイルの衣装を用意することにした。
そうと決まれば、やることは多々ある。こんなところで無駄にする時間などない。
即退室を告げてフェンリルを連れ食堂を後にする。
「……まさか、同じ手にひっかかるとは思いませんでした」
「……そうだな……」
「しかし、これ以上は引き延ばせませんよ。ネタ切れですわ。あの子が感情を動かすのを初めて見ました。下手な事をすれば城ごと消し飛びそうでしたわ」
「……王族が下級貴族の家に乗り込み幼いご令嬢を拉致するなど醜聞でしかない。せめて、王宮にご令嬢自ら足を運んでもらうか……」
「それが賢明ですわね」
アイルのために作るドレスのデザインを考えるのに夢中だった僕には、両親の言葉は耳に入らなかった。
ドレスが全て完成する半年後、再度アイルを迎えに行くことを宣言した僕は、父上から「貴族の子息子女を集めたお茶会を開催するから、頼むから迎えに行くのは思い止まってくれ」と懇願されることとなる。
部屋の準備は終わった。少しクリーム寄りの白をベースとしてまとめ、所々に薄いピンク…桜色を入れ全体を明るく可愛いが落ち着きのある印象に変えた。ベッドはよりフカフカに。土足厳禁とした絨毯もより毛足の長いものに変えてモフモフに。ぬいぐるみは子フェンリルが居るので準備しなかった。何か抱きしめたいなら僕を抱きしめればいい。僕も嬉しくてwin‐winだ。フェンリル用の犬小屋も部屋の隅に置いた。赤い屋根にレンガの煙突をつけ、童話に出てくる家のようなデザインのものを作ってみたが、中は丸ごと寝床だ。フェンリルが小さいうちしか使えないが、万が一にも一緒のベッドで寝るなどと言い出さないように絶対に必要なものだ。アイルの添い寝を犬如きに譲る気はない。
これでいいだろう。
今日こそ、僕のアイルを迎えに行こう。
「というわけで行ってきます」
「お待ちなさい」
フェンリルを捕獲しに行ったとき同様、朝食の席で両親に伝えると、母上から待ったがかかった。
「部屋は整えました。ペットの躾もバッチリです。というわけで行ってきます」
「お待ちなさい」
まだ何かあるというのか。
「あなたは以前『一応貴族子女』と言っていましたね」
「そうですがそれが何か」
「一応ということは、上級貴族の子女ではないのですね?」
「…だったら何です」
もし身分のことでうるさく言われるようなら、僕の部屋からうっかりフェンリルが逃げ出し母上に激しくじゃれ付くかもしれないね。
「上級貴族の子女でないのであれば、あまりドレスなども持っていないのではないですか?あなた、部屋は整えてもドレスは用意していなかったでしょう」
「あ」
服に興味がないうえに今まで服を自分で購入したことが一度もないから、気付かなかった。
アイルは子爵家に生まれた。善良な人柄の当主夫妻の元、だが決して裕福ではない家だ。王都での社交とは縁遠い、そんな家がまだ小さな娘のドレスを山の様に作り与えているとは思えない。
「貴族子女にとって、ドレスとは戦闘服です。決して疎かにしてはいけません。満足な用意ができず他のご令嬢方に笑われ侮られるのは、あなたではなく、その少女なのですよ」
もちろんアイルは何を着ていても可愛いのだが。それを理解しない、外側を飾り付けることに命を懸ける貴族令嬢たちは、ドレスを用意できないアイルを嘲笑うだろう。ふざけるな鏡を見ろ。アイルが平民の服を着ていたとしても、お前たちよりずっと可愛い。雪の妖精シマエナガと大型類人猿イエティが並び立てると思うな。
想像しただけで怒りが振り切れそうになり魔力があふれ出す僕の服を、隣で伏せていたフェンリルが咥えて引っ張る。落ち着けと言いたいらしい。
両親も食堂内に控えている給仕の者も、顔を蒼褪めさせている。尻餅をついている者さえいた。
ふぅ、と息を吐き、心を落ち着ける。
そうだ、そうならないためにするべきことは、
「彼女を迎えに行くのは再度保留にして、ドレスを用意します。母上の御用達の商会を呼んでも?」
「かまいませんよ」
「ありがとうございます。急用ができましたので、失礼します。行くよ」
『きゃん!』
アイルにはもう少し待っていてもらうことになるが、アイルの衣装を用意することにした。
そうと決まれば、やることは多々ある。こんなところで無駄にする時間などない。
即退室を告げてフェンリルを連れ食堂を後にする。
「……まさか、同じ手にひっかかるとは思いませんでした」
「……そうだな……」
「しかし、これ以上は引き延ばせませんよ。ネタ切れですわ。あの子が感情を動かすのを初めて見ました。下手な事をすれば城ごと消し飛びそうでしたわ」
「……王族が下級貴族の家に乗り込み幼いご令嬢を拉致するなど醜聞でしかない。せめて、王宮にご令嬢自ら足を運んでもらうか……」
「それが賢明ですわね」
アイルのために作るドレスのデザインを考えるのに夢中だった僕には、両親の言葉は耳に入らなかった。
ドレスが全て完成する半年後、再度アイルを迎えに行くことを宣言した僕は、父上から「貴族の子息子女を集めたお茶会を開催するから、頼むから迎えに行くのは思い止まってくれ」と懇願されることとなる。
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