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閑話*オーディン視点
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マーサに整えられたアイルは妖精のようだった。
本当に可愛くて、心からそう言っているのに、自己評価の低いアイルはお世辞としか受け取ってくれない。…これからはずっと一緒なので、少しずつ自覚していってもらおう。
でもこんなに可愛いアイルをお茶会なんて有象無象のいる場所に連れて行ったら攫われるんじゃないかな。
会場にはアイルの好きそうなお菓子類を作らせたものがあるから食べさせてあげたかったんだけど、やっぱりアイルを連れて引き籠ろうかな。
そんな僕の考えを読んだようなマーサの鋭すぎる視線と、嫌々ながらも参加する気になったアイルの勇気を無下にするわけにはいかない。牽制の為にしっかりエスコートしながら会場に入る。
その時に僕に集ってきたドレスの集団に対する恨みを僕は忘れない。
あの集団のせいでアイルの手が僕から離れてしまい、結果的にアイルに虫がついた。
辺りに幸せそうな空気を漂わせながらお菓子を一生懸命頬張るアイルを直ぐ傍で見れば、目を奪われ癒されること間違いなしだ。周囲への気遣いを忘れない、貴族的でない偉ぶらない考え方は、公平な優しさとして新鮮に映るだろう。しかも「あなたと一緒だから」なんて殺し文句を言われて、頬をうっすらピンクに染めながらふにゃりと笑まれたら。単純な男など、ころりと落ちるに決まってる。
アイルは見た目で誘惑する薔薇のような目立つ華やかさではなく、カスミソウやミモザのような、ふんわりと優しい雰囲気で癒してくれるところが魅力なんだ。人の手を借りねば保てない一時の儚い美しさではなく、主役の隣で周りを引き立てるようにひっそりと存在するのに、決して欠くことの出来ない愛らしい存在感。その可愛さに一度気づくと決して無視出来ない強い自然な魅力。そこに気づかれたら…非常に厄介だ。易々とは忘れられず目が離せなくなるのは、僕自身が一番よく知っている。
……あの子のそんな可愛さを知っているのは、僕だけでよかったのに。
そう思うと、イラつきが抑えきれなかった。
即座に邪魔な令嬢たちの輪を転移で抜けだし、制御しきれなかった魔力が溢れても気にせず、アイルの後ろから少年を威嚇する。
少年は顔に上っていた熱をさっと引かせ、青ざめた恐怖の目でこちらを見ていたが、緩める気はない。
僕のアイルに手を出す輩は、誰であろうと排除するよ。
でもアイルを怖がらせる気はないので、アイルにだけはなるべく悟られないように気を付けないとね。
僕のものだと見せつける様に指を絡めて手を繋ぎ、アイルの気をこちらに惹くため、目の前で魔法を使って見せる。アイルの尊敬のこもったキラキラした眼差しを一心に向けられただけで、心が落ち着いた。
けどすぐに、少年……レオンが、アイルに『はじめてのともだち』と言われているのを聞いて、血管ブチ切れそうになったけど。
仕方ないよね?
笑顔を浮かべているつもりなのに、堪えきれない苛立ちが顔にでてしまっているようで、アイルが怯えてしまった。
…ダメだな。アイルに再会してから一気に感情が揺れ動き過ぎて全然セーブできていない。怖がらせたくないんだけどなぁ…。
でも怒りおかげで、アイルから衆人環視の前で『ずっと一緒にいる』という言質をとれたので良しとしよう。
満足のいく結果にアイルを思い切り抱きしめると、周囲から甲高い雑音が聞こえるので、アイルの耳を守るためにさらに腕の中に抱き込んで耳を隠す。アイルはされるがまま、呆然としていた。
お茶会が終了し、混乱の最中にいるらしいアイルの父親を落ち着かせるため、客室でアイルと二人にする。
その間に僕は、別室に案内するよう指示しておいたレオンの元へ。
本当はアイルに手を出すなんて愚考を、必要なら記憶ごと消してやろうかと思ってたんだけど……まさかあれだけ脅したというのに、僕とアイルを守る騎士になると宣誓されるとはね。
この子もアイルのように純粋な魂をしている。その誓いに打算も欲も混じっていないことは、神なんてやっているとわかってしまう。彼は心から僕たちを守りたいと思っているんだ。
だから、つい絆された。
手を差し伸べ贔屓することはないけど、この子の誓いの行く末も見守ってみようかな、と思う程度には。
アイルの前以外で初めて、自然と笑みが浮かんだ。
少々気分良くアイルとウェヌス子爵の居る部屋に向かう。
子爵は僕がアイルを膝の上に抱えて愛でる光景を見てなのか、王宮で暮らしてもらうという宣言に対してなのか、理解が追い付かなかったようでショートしてしまった。
領地に帰ると言うアイルを何とか説得し、僕と一緒に居てもらいたい。
でもアイリの希望を無視するようなことはしたくない。
どういう条件をつければアイルは妥協してくれるかなと考えていると、アイルも何とか僕を諦めさせようと、いろいろ王宮に留まれない理由を挙げてくる。
でもゴメンね。
弟とはいえ男を毎日ぎゅーしてほっぺにちゅーするために帰りたいと言われてはね。
何があろうと絶対に諦める気なくなったから、妥協してね。
本当に可愛くて、心からそう言っているのに、自己評価の低いアイルはお世辞としか受け取ってくれない。…これからはずっと一緒なので、少しずつ自覚していってもらおう。
でもこんなに可愛いアイルをお茶会なんて有象無象のいる場所に連れて行ったら攫われるんじゃないかな。
会場にはアイルの好きそうなお菓子類を作らせたものがあるから食べさせてあげたかったんだけど、やっぱりアイルを連れて引き籠ろうかな。
そんな僕の考えを読んだようなマーサの鋭すぎる視線と、嫌々ながらも参加する気になったアイルの勇気を無下にするわけにはいかない。牽制の為にしっかりエスコートしながら会場に入る。
その時に僕に集ってきたドレスの集団に対する恨みを僕は忘れない。
あの集団のせいでアイルの手が僕から離れてしまい、結果的にアイルに虫がついた。
辺りに幸せそうな空気を漂わせながらお菓子を一生懸命頬張るアイルを直ぐ傍で見れば、目を奪われ癒されること間違いなしだ。周囲への気遣いを忘れない、貴族的でない偉ぶらない考え方は、公平な優しさとして新鮮に映るだろう。しかも「あなたと一緒だから」なんて殺し文句を言われて、頬をうっすらピンクに染めながらふにゃりと笑まれたら。単純な男など、ころりと落ちるに決まってる。
アイルは見た目で誘惑する薔薇のような目立つ華やかさではなく、カスミソウやミモザのような、ふんわりと優しい雰囲気で癒してくれるところが魅力なんだ。人の手を借りねば保てない一時の儚い美しさではなく、主役の隣で周りを引き立てるようにひっそりと存在するのに、決して欠くことの出来ない愛らしい存在感。その可愛さに一度気づくと決して無視出来ない強い自然な魅力。そこに気づかれたら…非常に厄介だ。易々とは忘れられず目が離せなくなるのは、僕自身が一番よく知っている。
……あの子のそんな可愛さを知っているのは、僕だけでよかったのに。
そう思うと、イラつきが抑えきれなかった。
即座に邪魔な令嬢たちの輪を転移で抜けだし、制御しきれなかった魔力が溢れても気にせず、アイルの後ろから少年を威嚇する。
少年は顔に上っていた熱をさっと引かせ、青ざめた恐怖の目でこちらを見ていたが、緩める気はない。
僕のアイルに手を出す輩は、誰であろうと排除するよ。
でもアイルを怖がらせる気はないので、アイルにだけはなるべく悟られないように気を付けないとね。
僕のものだと見せつける様に指を絡めて手を繋ぎ、アイルの気をこちらに惹くため、目の前で魔法を使って見せる。アイルの尊敬のこもったキラキラした眼差しを一心に向けられただけで、心が落ち着いた。
けどすぐに、少年……レオンが、アイルに『はじめてのともだち』と言われているのを聞いて、血管ブチ切れそうになったけど。
仕方ないよね?
笑顔を浮かべているつもりなのに、堪えきれない苛立ちが顔にでてしまっているようで、アイルが怯えてしまった。
…ダメだな。アイルに再会してから一気に感情が揺れ動き過ぎて全然セーブできていない。怖がらせたくないんだけどなぁ…。
でも怒りおかげで、アイルから衆人環視の前で『ずっと一緒にいる』という言質をとれたので良しとしよう。
満足のいく結果にアイルを思い切り抱きしめると、周囲から甲高い雑音が聞こえるので、アイルの耳を守るためにさらに腕の中に抱き込んで耳を隠す。アイルはされるがまま、呆然としていた。
お茶会が終了し、混乱の最中にいるらしいアイルの父親を落ち着かせるため、客室でアイルと二人にする。
その間に僕は、別室に案内するよう指示しておいたレオンの元へ。
本当はアイルに手を出すなんて愚考を、必要なら記憶ごと消してやろうかと思ってたんだけど……まさかあれだけ脅したというのに、僕とアイルを守る騎士になると宣誓されるとはね。
この子もアイルのように純粋な魂をしている。その誓いに打算も欲も混じっていないことは、神なんてやっているとわかってしまう。彼は心から僕たちを守りたいと思っているんだ。
だから、つい絆された。
手を差し伸べ贔屓することはないけど、この子の誓いの行く末も見守ってみようかな、と思う程度には。
アイルの前以外で初めて、自然と笑みが浮かんだ。
少々気分良くアイルとウェヌス子爵の居る部屋に向かう。
子爵は僕がアイルを膝の上に抱えて愛でる光景を見てなのか、王宮で暮らしてもらうという宣言に対してなのか、理解が追い付かなかったようでショートしてしまった。
領地に帰ると言うアイルを何とか説得し、僕と一緒に居てもらいたい。
でもアイリの希望を無視するようなことはしたくない。
どういう条件をつければアイルは妥協してくれるかなと考えていると、アイルも何とか僕を諦めさせようと、いろいろ王宮に留まれない理由を挙げてくる。
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