43 / 73
閑話*レオン視点
しおりを挟む
強制的に終了となったお茶会の後。
俺は何故か、別室に一人で呼び出しを受けた。
「お待たせ、レオナルド君」
暫し待っていると、現れたのは殿下だった。
…あぁ、俺はここで殺されるのか…。
「アイルは随分と君に懐いたようだね」
「……ともだちですので…」
優雅な足取りで俺の目の前の椅子に座り椅子を勧めてくる様子は、およそ2歳とは思えない威厳があった。
これが王者の風格、と言うのだろう。
生まれながらの王。自然と人を跪かせ、従える方。
そしてこの方はきっと将来、その傍らにアイルをおくのだろう。
…ならば。
「アイルが君を友達だと言うのなら、僕にとっても友達だ」
「もったいないおことばです」
「僕も君のことをレオン君と呼んでも?」
「もちろんでございます。……でんか、おそれながら、ひとつもうしあげてもよろしいでしょうか」
「何だい?」
「でんか、ぼくは、でんかとあいるさまをおまもりする、きしになります」
俺は、
この王となるべく誕生した方と、
その王が愛する、あの可愛らしい少女を守る剣になろう。
「…君の家は、代々文官として王宮に出仕していたと記憶している」
「そのとおりです、でんか」
我が家は代々文官として王宮に出仕していて、俺も、いつか文官になるものと漠然と思っていた。
だが、それでは駄目だ。足りない。
一番近くで見守りたいんだ。
これほど殿下から愛情を向けられているのに無自覚で、少し自信なさそうに困った顔で苦笑する少女の、心からの笑顔と幸せを。
「僕はいずれ王になるだろう。その護衛となれば、この国随一の実力じゃないと無理だ。それでも?」
「ちをはいてでも、かならずかなえます」
「…そう」
予想外の言葉を聞いた、というように僕を見ていた殿下は、真剣な顔で『できるのか?』と問うてきた。
できるかどうかじゃなく、やらなければ。
殿下から目を離さずに頷くと、殿下はじっと僕の目を見たあと、優しい顔で笑いかけて下さった。
「待ってるよ」
「はい!」
一人の小さな少女との出会いをきっかけに、僕は生涯の目標を見つけた。
泣いてなどいられない、今度は僕が手を差し伸べるんだ。
そして、
「レオン君。レオン君も一緒にお茶しよう?」
「アイル様、私は護衛です。お気持ちだけありがたく頂戴致します」
「ほかに人いないし、普通に話してほしいな。ね、このお菓子懐かしいでしょ。あのお茶会でレオン君と食べたのと同じものを、料理長さんに作ってもらったの。思い出の味ってやつ」
「…暢気に座ってケーキ食べてる護衛がどこにいるんだよ。………大体、こんなのバレたら殺されるだろ……」
「誰にだい?レオン」
「ひっ」
「あ、ディー様」
「アイル、僕も混ぜてくれるよね?」
「もちろんです。これ美味しいんですよ。今日はレオン君との友達記念日なので、王宮で初めて食べた思い出の味を作ってもらったんです」
「その日はアイルと僕が王宮で初めて会った日と同じ日だったと思うんだけど、今日はレオンとの友達記念日なんだ?へぇ…そうなんだ」
「あ…アイル!何てこと言うんだ!今日が俺の命日になっちまうだろ⁉」
「え? えっと………あ、氷、氷食べましょ、ディー様との思い出の味ですよ!」
「アイルが突いてただけで、食べてはいないよね」
「う……じゃ、じゃあ、手!手を繋ぎましょう。シェークハンド記念日です」
「うん、じゃあ、ぎゅーもしないとね。ハグ記念日でもあるから」
「ふきゃっ」
殿下に抱きしめられ、真っ赤に染まり嬉しそうに緩んでいく顔を必死に隠すアイル。
満たされたような表情で笑い、幸せそうにアイルを抱きしめる殿下。
今となっては、いつもと変わりない日常の光景だ。
君に気づいてもらえなくてもいい。
この光景を、これからも一番近くで守っていく。
あの日の誓いは、今も変わらず。
何があろうと決して揺らぐことのない、俺の誓いだ。
俺は何故か、別室に一人で呼び出しを受けた。
「お待たせ、レオナルド君」
暫し待っていると、現れたのは殿下だった。
…あぁ、俺はここで殺されるのか…。
「アイルは随分と君に懐いたようだね」
「……ともだちですので…」
優雅な足取りで俺の目の前の椅子に座り椅子を勧めてくる様子は、およそ2歳とは思えない威厳があった。
これが王者の風格、と言うのだろう。
生まれながらの王。自然と人を跪かせ、従える方。
そしてこの方はきっと将来、その傍らにアイルをおくのだろう。
…ならば。
「アイルが君を友達だと言うのなら、僕にとっても友達だ」
「もったいないおことばです」
「僕も君のことをレオン君と呼んでも?」
「もちろんでございます。……でんか、おそれながら、ひとつもうしあげてもよろしいでしょうか」
「何だい?」
「でんか、ぼくは、でんかとあいるさまをおまもりする、きしになります」
俺は、
この王となるべく誕生した方と、
その王が愛する、あの可愛らしい少女を守る剣になろう。
「…君の家は、代々文官として王宮に出仕していたと記憶している」
「そのとおりです、でんか」
我が家は代々文官として王宮に出仕していて、俺も、いつか文官になるものと漠然と思っていた。
だが、それでは駄目だ。足りない。
一番近くで見守りたいんだ。
これほど殿下から愛情を向けられているのに無自覚で、少し自信なさそうに困った顔で苦笑する少女の、心からの笑顔と幸せを。
「僕はいずれ王になるだろう。その護衛となれば、この国随一の実力じゃないと無理だ。それでも?」
「ちをはいてでも、かならずかなえます」
「…そう」
予想外の言葉を聞いた、というように僕を見ていた殿下は、真剣な顔で『できるのか?』と問うてきた。
できるかどうかじゃなく、やらなければ。
殿下から目を離さずに頷くと、殿下はじっと僕の目を見たあと、優しい顔で笑いかけて下さった。
「待ってるよ」
「はい!」
一人の小さな少女との出会いをきっかけに、僕は生涯の目標を見つけた。
泣いてなどいられない、今度は僕が手を差し伸べるんだ。
そして、
「レオン君。レオン君も一緒にお茶しよう?」
「アイル様、私は護衛です。お気持ちだけありがたく頂戴致します」
「ほかに人いないし、普通に話してほしいな。ね、このお菓子懐かしいでしょ。あのお茶会でレオン君と食べたのと同じものを、料理長さんに作ってもらったの。思い出の味ってやつ」
「…暢気に座ってケーキ食べてる護衛がどこにいるんだよ。………大体、こんなのバレたら殺されるだろ……」
「誰にだい?レオン」
「ひっ」
「あ、ディー様」
「アイル、僕も混ぜてくれるよね?」
「もちろんです。これ美味しいんですよ。今日はレオン君との友達記念日なので、王宮で初めて食べた思い出の味を作ってもらったんです」
「その日はアイルと僕が王宮で初めて会った日と同じ日だったと思うんだけど、今日はレオンとの友達記念日なんだ?へぇ…そうなんだ」
「あ…アイル!何てこと言うんだ!今日が俺の命日になっちまうだろ⁉」
「え? えっと………あ、氷、氷食べましょ、ディー様との思い出の味ですよ!」
「アイルが突いてただけで、食べてはいないよね」
「う……じゃ、じゃあ、手!手を繋ぎましょう。シェークハンド記念日です」
「うん、じゃあ、ぎゅーもしないとね。ハグ記念日でもあるから」
「ふきゃっ」
殿下に抱きしめられ、真っ赤に染まり嬉しそうに緩んでいく顔を必死に隠すアイル。
満たされたような表情で笑い、幸せそうにアイルを抱きしめる殿下。
今となっては、いつもと変わりない日常の光景だ。
君に気づいてもらえなくてもいい。
この光景を、これからも一番近くで守っていく。
あの日の誓いは、今も変わらず。
何があろうと決して揺らぐことのない、俺の誓いだ。
0
あなたにおすすめの小説
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
転生メイドは貞操の危機!
早桃 氷魚(さもも ひお)
恋愛
クララは乙女ゲームの世界に転生した、モブのメイド。
最推しキャラの公爵令息、ロルフのメイドとして、不幸フラグを折りながら、天使のように愛らしい推しを守ってきた。
ロルフはクララに懐き、魔法学園に入学するときも、離ればなれになるのを嫌がるほど。
「帰ってきたら、ずっと一緒だからね?」
ロルフとそう約束してから三年後。
魔法学園を卒業したロルフが、ついに屋敷へ戻ってきた!
だが、クララの前に現れたのは、
かつての天使ではなく、超イケメンの男だった!
「クララ、愛している」
え!? あの天使はどこへ行ったの!?
そして推し!! いま何て言った!?
混乱するクララを、ロルフはベッドに押し倒してきて……!?
-----
Kindle配信のTL小説
『転生メイドは推しを甘やかしまくった結果、貞操の危機です!』
こちらは番外編です!
本編よりずっと前の、推しがまだ天使だった頃のお話です。
本編を知らなくても読めます。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる