神様の転生のお供に選ばれまして ~異世界転生したら溺愛されるなんて聞いてません~

ものぽりー

文字の大きさ
42 / 73

閑話*レオン視点

しおりを挟む
 王宮で開かれた、皇子殿下主催のお茶会。
 殿下と同年代の子供たちとの交流を謳い、2歳から15歳までの貴族の子供を集めたその会は、実際には、殿下の側近や婚約者候補を見つける目的の会だろうと暗黙の了解で認識されていた。

 5歳だった俺も招待されており、3歳年上の兄はあいにく体調を崩し療養のため領地にいたため、一人での参加だ。
 父にはあまり気負わなくていいと言われていたものの、まず一人で社交の場に参加した経験がなく、さらに殿下とお会いするのは初めてで、非常に緊張していたことを覚えている。


 天気に恵まれ、王宮の庭師により様々な花が見事に咲き誇る王宮の庭園の一角。
 殿下に取り入るよう言われてきたのだろう、前哨戦とばかりに延々と自慢話を披露する少年たちもいれば、殿下の婚約者の座を目当てに夜会か?というほど飾り立て強い香水の香りを振りまくご令嬢たちが集まった光景は、目にも耳にも鼻にも痛い。
 大人しい子供たちは開始前からすでに気圧され、隅の方で身を小さくしている様子。
 俺もその子たちも、とにかく早く終わってくれることだけを願っていた。


 そして開始時間となり。

 会場に姿を見せた殿下は、まさに天使のようだった。
 神聖な空気、非常に整った容姿。全てを見透かされそうな深い碧の瞳、日に溶けるような金糸の髪。
 とにかく存在感が圧倒的で、会場は茫然と殿下に見惚れる者ばかりで静まり返っていた。


 殿下はそんな参加者の顔をぐるっと見回し、首を傾げられた。
 その瞬間、音なく黄色い悲鳴が上がったのは気のせいではないだろう。


 そして殿下は、一言も発することなく、今入ってきたばかりの会場を後にした。


 取り残された参加者は、白昼夢でも見たような心境で呆気にとられていた。







 殿下が退席され、1時間ほど経っただろうか。
 戻ってくる様子のない殿下に、令嬢たちのざわつきがどんどん大きくなってきている。
 おそらく実際に殿下を目にして、殿下の婚約者になりたいという願望がより強くなったのだろう。
 殿下はいつお戻りになるのかと、狂気すら感じる勢いで、少し離れて控える侍女たちに声を上げていた。



 その時、

「アイル、こっちだよ」
「あい」


 小さな少女の手を引いた殿下が、再度会場に戻られた。

 まだ足元が覚束ないのか、転ばぬよう下を見たまま必死に歩く少女を見守る殿下は、とてもお優しい表情をしている。
 ああ、この少女が大事なんだなと思った。


 そんな微笑ましい様子を、黙って見ていられなかったのが会場で殿下のお戻りを待っていた令嬢たちだ。
 殿下の姿を見た途端、鬼気迫る勢いで殿下に群がっていく。

 …偶然にも程近くにいた俺は、その殺気立った様子に驚き怯え、恥ずかしながら泣いてしまった。


「だいじょーぶ?」 

 可愛らしい声が聞こえ、目の前に自分よりもずいぶんと小さな手が差し出されたのはその時。
 見上げると、殿下が手を引いていた、あの少女がいた。




 少女の名前は『アイル』。
 泣いていたことを指摘するでもなく、自然と楽しい方へ気を逸らしてくれた優しい子。
 いくらこの国の貴族が竜の血を引き普通の人間よりも特に精神面での成長が早いとはいえ、あまり表情が変わらなく妙に悟ったような、まるで大人を相手にしているような印象を受けるかと思えば、人付き合いに慣れていないのか、少し首をかしげながら上目遣いで反応をそっと窺がってくる様子は歳のまま幼く、まるでリスのような、子猫か子犬のような、そんな女の子。
 目立つ美少女というわけじゃないけど、笑うとふわりと優しくなる表情がとても可愛い。
 そっと見守りたくなるような子だった。

 口元を少し嬉しそうに笑ませながら、残さずきれいに、とても美味しそうにお菓子を食べていく様子は、あまり令嬢っぽくない。が、とても微笑ましい。
 料理人や農民に感謝し、誰かと、…俺と食べるお菓子が、とてもおいしいと笑う。



 この子がずっとそばにいてくれたら、きっととても幸せだろうな。



 が、そう思った俺に気づいたのか。
 を威嚇するように冷たい空気を纏わせた殿下が、突然彼女の後ろに現れた。


 殿下は先程アイルに向けていた慈愛の表情が嘘のような……闇を背負い心から凍え砕けそうなほど冷たい笑顔でこちらを見る。
 しかしアイルに対しては優しく笑いかける。


 『僕のアイル』、と独占欲を隠すことなく。


 アイルと、アイルに『はじめての友達』と言われた俺以外の周囲など全く意に介さない。
 アイルを抱きしめながらこちらに向けられた視線に込められた殺気を感じ取ってしまった俺は……冗談抜きに、本当に殺されると思った……。



 

*レオン視点はまだ上げる予定ではなかった話なのですが、体調が戻らず新しく書く元気がない為、泣く泣く唯一のストックを出す羽目になりました…泣
 後日、順番を入れ替えたりするかもしれません。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

転生メイドは貞操の危機!

早桃 氷魚(さもも ひお)
恋愛
クララは乙女ゲームの世界に転生した、モブのメイド。 最推しキャラの公爵令息、ロルフのメイドとして、不幸フラグを折りながら、天使のように愛らしい推しを守ってきた。 ロルフはクララに懐き、魔法学園に入学するときも、離ればなれになるのを嫌がるほど。 「帰ってきたら、ずっと一緒だからね?」 ロルフとそう約束してから三年後。 魔法学園を卒業したロルフが、ついに屋敷へ戻ってきた! だが、クララの前に現れたのは、 かつての天使ではなく、超イケメンの男だった! 「クララ、愛している」 え!? あの天使はどこへ行ったの!? そして推し!! いま何て言った!? 混乱するクララを、ロルフはベッドに押し倒してきて……!? ----- Kindle配信のTL小説 『転生メイドは推しを甘やかしまくった結果、貞操の危機です!』 こちらは番外編です! 本編よりずっと前の、推しがまだ天使だった頃のお話です。 本編を知らなくても読めます。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...