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閑話*母視点
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わたくしはウェヌス子爵夫人、クレマリー・ウェヌスと申します。
とても優しい旦那様と、天使の様に可愛い娘、とても賢い息子に恵まれた、幸せな女でございます。
我が家は貴族らしくないと言いますか、使用人も領民も皆家族の様な関係で、初めての子育てで戸惑ったり可愛すぎる我が子につい感情が高ぶって強く抱きしめすぎるところのあるわたくしを、よく周囲の皆が助けてくれます。娘のアイルと息子のアンリも何度も命を助けられ、そのお陰か、身分にとらわれず誰にでも平等で優しい子に育ってくれていますわ。
そんな自慢の娘・アイルちゃんは2歳の時、王宮で開かれるお茶会に招待されました。
残念ながらその頃わたくしはアンリちゃんが産まれたばかりで同行することができず、アンリちゃんと一緒にお留守番となってしまいました。あの時のアンリちゃんったら、アイルちゃんに会えないのが寂しいようで、ずーっとご機嫌斜めでしたわ。
アイルちゃんに同行したレオ様が、やけに慌てた様子で王都から戻られ、アイルちゃんが殿下に見初められ王宮に滞在することとなったと聞いたときは、屋敷中が大騒ぎになりました。
リサなど「わ、わたくしの天使が…っ」と帰りの道中ずっと泣き暮らしていたそうで、目が腫れて開かなくなっておりました。
アンリちゃんも、アイルちゃんをお出迎えするために握りしめていたマーガレットの花をポロっと落としたかと思うと火が付いたように泣き出してしまって、慌てて近づいたレオ様の髪を何度もむしっておりました。八つ当たりですわねぇ。使用人たちもみんな衝撃で打ちのめされ、レオ様の髪を助けに動くものが居なかったのは不幸な事故でした。
それにしても、殿下は人を見る目がありますのね!アイルちゃんはとっても可愛いもの!王族の方に見初められても全く不思議じゃないわ!
少し人見知りなところはありますし、ちょっと感情が表情に出にくいけれど、誰に対しても打算なしに優しくて賢くて礼儀正しくて、何よりふにゃっと笑うところなんて堪らなく愛らしいのよ!
初めてお会いした殿下があの子のそんな良いところを見初めて下さったのなら、とっても素敵!知れば知るほど深みにはまる可愛さなの。殿下は絶対、これからさらにアイルちゃんが可愛くて仕方なくなるわ。母の勘よ!
アイルちゃんは、わたくしたち家族のことを、とても大切にしてくれています。
殿下に乞われ、王宮に滞在することにはなったものの、最初は家族と離れたくないと泣いたそうなの…。
わたくしは、アイルちゃんが泣くところなど見たことがないわ。
だからその話を聞いて、よりアイルちゃんが王宮に滞在するのはいいことだと思いました。
殿下のおそばにいることで、あの子が気持ちを押し殺すことなく感情を表に出すことができるというのなら、とっても寂しいけれど、わたくしは喜んで送り出します。
…きっと家族の前では、あの子は心配させまいと無理をして、隠してしまうから。
とても優しい旦那様と、天使の様に可愛い娘、とても賢い息子に恵まれた、幸せな女でございます。
我が家は貴族らしくないと言いますか、使用人も領民も皆家族の様な関係で、初めての子育てで戸惑ったり可愛すぎる我が子につい感情が高ぶって強く抱きしめすぎるところのあるわたくしを、よく周囲の皆が助けてくれます。娘のアイルと息子のアンリも何度も命を助けられ、そのお陰か、身分にとらわれず誰にでも平等で優しい子に育ってくれていますわ。
そんな自慢の娘・アイルちゃんは2歳の時、王宮で開かれるお茶会に招待されました。
残念ながらその頃わたくしはアンリちゃんが産まれたばかりで同行することができず、アンリちゃんと一緒にお留守番となってしまいました。あの時のアンリちゃんったら、アイルちゃんに会えないのが寂しいようで、ずーっとご機嫌斜めでしたわ。
アイルちゃんに同行したレオ様が、やけに慌てた様子で王都から戻られ、アイルちゃんが殿下に見初められ王宮に滞在することとなったと聞いたときは、屋敷中が大騒ぎになりました。
リサなど「わ、わたくしの天使が…っ」と帰りの道中ずっと泣き暮らしていたそうで、目が腫れて開かなくなっておりました。
アンリちゃんも、アイルちゃんをお出迎えするために握りしめていたマーガレットの花をポロっと落としたかと思うと火が付いたように泣き出してしまって、慌てて近づいたレオ様の髪を何度もむしっておりました。八つ当たりですわねぇ。使用人たちもみんな衝撃で打ちのめされ、レオ様の髪を助けに動くものが居なかったのは不幸な事故でした。
それにしても、殿下は人を見る目がありますのね!アイルちゃんはとっても可愛いもの!王族の方に見初められても全く不思議じゃないわ!
少し人見知りなところはありますし、ちょっと感情が表情に出にくいけれど、誰に対しても打算なしに優しくて賢くて礼儀正しくて、何よりふにゃっと笑うところなんて堪らなく愛らしいのよ!
初めてお会いした殿下があの子のそんな良いところを見初めて下さったのなら、とっても素敵!知れば知るほど深みにはまる可愛さなの。殿下は絶対、これからさらにアイルちゃんが可愛くて仕方なくなるわ。母の勘よ!
アイルちゃんは、わたくしたち家族のことを、とても大切にしてくれています。
殿下に乞われ、王宮に滞在することにはなったものの、最初は家族と離れたくないと泣いたそうなの…。
わたくしは、アイルちゃんが泣くところなど見たことがないわ。
だからその話を聞いて、よりアイルちゃんが王宮に滞在するのはいいことだと思いました。
殿下のおそばにいることで、あの子が気持ちを押し殺すことなく感情を表に出すことができるというのなら、とっても寂しいけれど、わたくしは喜んで送り出します。
…きっと家族の前では、あの子は心配させまいと無理をして、隠してしまうから。
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