神様の転生のお供に選ばれまして ~異世界転生したら溺愛されるなんて聞いてません~

ものぽりー

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その素直さが時に拷問となる。

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「セレンよ。アイル嬢に腹をさすってみてもらってはどうだ?」
「え、」
「陛下?それは…」
「なに、もし張りや痛みが変わらなかったとしても、アイル嬢は弟君が腹に居る時に毎日撫でていたというではないか。安産祈願と思えばよい。……なにせ、ある意味これが初産だからのぅ…」
「あぁ…そうでございますね……」


 両陛下はなぜか遠い目をしている。
 后妃様はすでにディー様をご出産しているんだから、初産ではないと思うんだけど?


 いきなり国トップの女性の腹を撫でろと言われて固まる私だったが、安産祈願のお守り扱いだったらしい。
 もし良くならなければ王族を謀ったとか言って体よく処分しようと思っているのかと一瞬疑っちゃったよ。好々爺然としていても、相手は国王だ。本心ではどう思ってるかわからない。実際、国のトップなんて腹黒くなきゃやってられないと思うんだ。その点、ディー様は誰よりも素質十分な気がする。


「それではアイル嬢。お願いできますか?」
「わ、わたくしが、ふれてもいいのでしょうか…?」
「ええ。今はわたくしを貴方の母だと思って、撫でてみてください」

 回避不可の強制イベント発生だ。

「……では、しちゅれいいたしましゅ…」


 恐る恐る后妃様に近づき、そーっとお腹に触れる。すると、内側からぽこっと手を蹴られたのがわかった。この感じ、アンリがまだお母様のお腹の中に居た頃を思い出すなぁ。


「おげんきでしゅね」
「アイル嬢が触れたのがわかったのかしら」
「可愛いご令嬢に触られて喜ぶか。この子も男の子かもしれんなぁ」

 ははは、ほほほ、と笑う両陛下。ロイヤルファミリーの幸せなワンシーンだ。
 …そこに赤の他人の私が紛れ込んでさえいなければ。
 そして本来私の位置に居るべきロイヤルファミリーの一員はといえば。


「………アイルに触れられて喜ぶ男……?…なんだろう、壮絶に腹が立って仕方ないなぁ……。今すぐアイルを下郎から引き剝がしたいけど、今はアイルの許可なく立てないし……」


 正座したまま下を向き、囁くような声で何事かブツブツと呟いていた。

 内容が全然聞こえないけど、自分も混じりたいとか、そんな感じ?
 そりゃそうだよね。なんで自分が外されて私が混じってるんだって話だよね。


 素直に正座し続けていたことだし、この後はさすがに私が嫌だと言えば聞いてくれるだろう。
 ディー様に声を掛けようとすると、先に陛下から私に声がかけられた。


「アイル嬢、腹をさすってみてはくれんか?」
「あ、はい」

 そうだ、撫でろって言われてたんだ。
 別に良くならなくてもお咎めなしのようなので、さっさと済ませて離れたい一心で、后妃様のお腹を撫でる。
 よーしよしよーし。



 と。


「…あら?……まぁ!すごいわ!」
「どうした、セレン?」
「陛下、アイル嬢に撫でられた途端、本当にお腹の張りが引きましたわ!」
「なんと!誠か!」
「え、」


 そんな馬鹿な。


「アイル嬢、今度は腰をさすってみてくれんか?」
「…は、はい、…」
「あぁ、腰の痛みが楽に……素晴らしいですわぁ…」
「おお!」


 緊張しながら今度は腰をさすさす。
 すると、いい湯加減の温泉に浸かった時のような恍惚感を見せる后妃様。
 陛下も大興奮だ。

 ただの気のせいだと思うので、ちょっとそんな大げさに喜ばれると冷や汗が止まらない…。
 腰のさすさすを継続しながらダラダラと冷や汗を流す私に気づいていないのか、周囲が小さな声でざわついている。
 
「アイル嬢!君には何か特別な力でもあるのかね?」
「ぅえ、ぃいえ、しょんなものはまったく、」
「だが実際にこうして効果があることが証明されたぞ」
「でしゅが、わたし、ほんとになに、も…」

「アイルは無意識に回復魔法を使っているんですよ」



 陛下に詰め寄られて答えることもできず混乱し、ただオロオロする私を見かねたのか。
 いつの間にか私のすぐ横(の床)に座っていたディー様が、私の手を引いて腕の中に抱え込みながら、私が無自覚のまま魔法を使っていると私自身も知らなかった答えを述べた。



 さっきまでは、間違いなく少し離れた場所で正座していたのに。
 ……立ち上がらないまま、正座状態でここまでにじり寄ってきたのかな…?


 ずっと正座を続けていた人間の足の上に圧し掛かるという拷問器具に強制的にさせられたが、その拷問を受けている本人が圧し掛かられて非常に喜んでいる様子なので、良しとしようか……。




 というか、私って魔法使えてたの?




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