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第1章 覚醒と無の力の発現
5話 試練の始まり
しおりを挟む翔太はカフェを出た後も、桐島瑠衣の言葉が頭から離れなかった。「選ばれた者」――自分がそんな大それた存在だという実感はまだなく、ただ目の前の現実に翻弄されているだけだった。だが、瑠衣の話を聞いたことで、「闇」という存在が少しずつ現実味を帯びてきた。
その夜、翔太は決意して三神に電話をかけた。数回のコールの後、すぐに三神の冷静な声が返ってきた。
「加瀬翔太君か。決心がついたようだね」
「話がしたい。俺にできることがあるなら、ちゃんと知っておきたいんだ」
三神は静かに頷くように感じられた。
「では、明日の夜に会おう。場所は後で伝える。そこで君の"力"が本当に使えるかどうか、試すことになる」
翌日、翔太は指定された場所に向かった。それは街外れの廃工場だった。月明かりがかすかに照らす中、古びた鉄骨が不気味に影を落としている。建物の中に入ると、既に三神と瑠衣が待っていた。二人の顔には真剣さが漂っている。
「今日は君にとって最初の試練だ」
三神は厳しい表情でそう告げると、翔太を建物の中央に導いた。そこには、奇妙な光が漂っていた。見るからに不気味な黒い煙のようなものが、ゆらゆらと空間を揺らしている。
「これが…“闇”?」
翔太は思わずつぶやいた。光は不自然に動き、時折人間のような形をとりながら、まるで何かを探しているかのようにさまよっている。翔太は本能的に、その光が危険であることを感じ取った。
「そうだ。これが"闇"だ。人の負の感情が集まり、具現化したものだ。この存在が、普通の人間には見えないが、彼らは確実に周囲に悪影響を及ぼす。今回は、君がこの闇を浄化できるかどうか、試してもらう」
「浄化って…どうやって?」
翔太は困惑した。空を飛ぶ力は使えたが、それ以外の力はまだ理解していない。
「君の羽は、ただ飛ぶためだけのものじゃない。羽には、人々を守り、闇を消し去る力がある。それをどう引き出すかは、君次第だ」
三神はそう言って、翔太を前に進ませた。目の前の闇は、徐々に形を変え始め、まるで人間の姿に近づいていく。翔太は不安と恐怖を感じながらも、覚悟を決めた。自分がここで逃げれば、何も変わらない。
「いくぞ…!」
翔太は背中の羽を広げ、空に舞い上がった。しかし、どうすれば闇を消せるのか、まったくわからない。闇の動きは不気味で、今にも自分に襲いかかってきそうだ。
その瞬間、後ろから瑠衣の声が響いた。
「翔太、心を落ち着けて。羽は君の意志に反応する。君が誰かを守りたいと思う気持ちが、力になるんだ」
翔太は息を整え、必死に集中しようとした。しかし、目の前の闇はどんどん大きくなり、手遅れになるかのように迫ってくる。
「誰かを…守る…?」
翔太はその言葉を反芻した。頭の中には、これまで出会った人々の顔が浮かんでくる。家族、友人、同僚――彼らを守りたい、そして自分自身も守りたい。その強い思いが、胸の中に湧き上がった。
その瞬間、背中の羽が眩い光を放ち始めた。翔太は驚きつつも、自然とその光に導かれるように動き、闇の中心へと向かっていった。羽から放たれた光は、闇に触れた瞬間、まるで霧が晴れるかのようにその存在を消し去った。
「やった…!」
翔太は自分の力に驚きつつも、初めて自分が「選ばれた者」であることを少しだけ実感した。空から静かに降り立ち、息を整える。三神は彼の様子を見つめながら、静かに頷いた。
「よくやった、加瀬翔太。だが、これはほんの始まりに過ぎない。闇はもっと強く、そして狡猾だ。これからも訓練を重ね、さらに力を磨いていく必要がある」
翔太は真剣な表情で頷いた。まだ戸惑いは残っているが、今の自分にできることは、目の前の現実を受け入れて進むことしかない。
瑠衣も静かに歩み寄り、優しく微笑んだ。
「これから大変なことがたくさんある。でも、君ならきっと乗り越えられるよ。私たちがいるから、一緒に戦っていこう」
翔太は彼女の言葉に少しだけ救われたような気持ちになった。まだまだ道のりは長いが、自分には仲間がいる。そして、自分自身が何か大きな力を持っているという確信も少しずつ芽生え始めていた。
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