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33話 夜会前なのに心臓が持たないんだけどなぁ
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夜会当日、私は絶賛準備中となっています。髪にドレスにメイク。普段とは無縁な恰好ですが、本来の貴族令嬢なら当然なのでしょう。
ドレスはこないだエミリア様から頂いた水色のドレスを着ています。
公爵夫人から頂いただけあり、私が着るにはもったいない物でしたが、これならバルツァー様のお隣に立てそうです。
「大丈夫ですよお嬢様のことを最高に綺麗にできるのは私だけです」
「勿論信頼していますよリア」
私がソワソワしていたため、リアは不安がっていると勘違いされたのでしょう。ええ、いつもの私ならそうです。
でも、今はどこまで綺麗になれるのだろうかとソワソワしていました。
最初の頃は、バルツァー様をあんなにも怖いと感じていたのですが、今はちょっとした仕草すら見落とすのが惜しいと感じています。
あの人は接しているうちに安心して会話できると感じ始めました。
必要以上の警戒心で、逃げていたため、本当はもっと早く安心できる方とは出会えていたのかもしれません。ですが、逃げて隠れる私が良いと歩み寄ってくださったのはあの人だけでした。
「リア、私がもしバルツァー様のことをギルベルト様とお呼びしたら、あの人はお喜びになってくださるでしょうか?」
私がそう質問すると、リアが目を丸くして驚いた後に、ぎゅっと私を抱きしめました。
「リ、リア!?」
「申し訳ありません。あまりにも可愛らしい生き物がいらっしゃいましたので」
それは私のことでしょうか。可愛らしい。バルツァー様もそう思ってくださるでしょうか。思ってくださるなら、お名前でお呼びしたい。
あれやこれやと考えていますと、そろそろバルツァー様が私をお迎えに来る時間のはずです。
私はソワソワしながらエントランスの方を無駄に行き来していたため、リアに注意され、サロンに閉じ込められました。
「バルツァー様がいらっしゃいましたらお呼びしますね」
「はい、すみません」
そしてリラックスしながら待ちます。姿勢も背もたれに体重をかけながら座るというだらしなさ。
しばらくすると、ノックの音。私が声をかけると、男性の声で失礼すると聞こえ、私は一気に背筋を伸ばしました。
「お待ちしておりました!」
「あ、ああ…………」
バルツァー様は私のことを上から下まで見ると、何故か硬直されてしまいました。やはり私なんかがこんな綺麗なドレスを着るのは変だったと言うことでしょうか!
「あ! あの! 変なら変と言ってください! すぐに直して貰いますから!!」
私がそう言いますと、バルツァー様はいつものように私の頭に手のひらを載せます。
「違う。大丈夫だ変じゃない。むしろ君のこういう一面を知れてよかったと思っている」
良かった? 何がでしょうか? でも、その変ではないと言うことですね。安心しました。
「行こうかマリー」
名前を呼ばれました! 今です。言わないと!
ギルベルト様って呼ぼう!
「え、あっ。あっ……はい! ギ、ギル!」
んんん!?
途中で躊躇して愛称みたいになってしまいました!
しかし、バルツァー様はそう呼ばれたのがお嫌ではなかったのでしょう。私の手を引いて一緒に馬車に乗り込みました。
普段なら少し離れた位置に座るところ、今日はお互いの肩が触れ合う距離にいます。
「近すぎたか?」
「いえ、そういうことではなくその……ギルベルト様とお呼びしても宜しいでしょうか?」
私がそう尋ねると、バルツァー様は少しだけ悩みながらこうつぶやきました。
「さっきの呼び方の方が良いな。今後はギルと呼んでくれないか?」
「ふえ!? あ、あれはそう呼ぼうとしたのではなく! その噛んでしまいまして! あの…………」
私が慌てふためくと、彼はやはり私の頭の上に手のひらを置きます。これがものすごく落ち着き、彼も私がこれをされると落ち着くとわかっているんじゃないかと疑います。
「はい、ではギル。もっとくっついても良いですか?」
「遠慮することはない」
そう言われ、身体をぐいっと引き寄せられました。抵抗する気もありませんが、やはり男の人は力強い。それとも私が軽すぎるのでしょうか。
ドレスはこないだエミリア様から頂いた水色のドレスを着ています。
公爵夫人から頂いただけあり、私が着るにはもったいない物でしたが、これならバルツァー様のお隣に立てそうです。
「大丈夫ですよお嬢様のことを最高に綺麗にできるのは私だけです」
「勿論信頼していますよリア」
私がソワソワしていたため、リアは不安がっていると勘違いされたのでしょう。ええ、いつもの私ならそうです。
でも、今はどこまで綺麗になれるのだろうかとソワソワしていました。
最初の頃は、バルツァー様をあんなにも怖いと感じていたのですが、今はちょっとした仕草すら見落とすのが惜しいと感じています。
あの人は接しているうちに安心して会話できると感じ始めました。
必要以上の警戒心で、逃げていたため、本当はもっと早く安心できる方とは出会えていたのかもしれません。ですが、逃げて隠れる私が良いと歩み寄ってくださったのはあの人だけでした。
「リア、私がもしバルツァー様のことをギルベルト様とお呼びしたら、あの人はお喜びになってくださるでしょうか?」
私がそう質問すると、リアが目を丸くして驚いた後に、ぎゅっと私を抱きしめました。
「リ、リア!?」
「申し訳ありません。あまりにも可愛らしい生き物がいらっしゃいましたので」
それは私のことでしょうか。可愛らしい。バルツァー様もそう思ってくださるでしょうか。思ってくださるなら、お名前でお呼びしたい。
あれやこれやと考えていますと、そろそろバルツァー様が私をお迎えに来る時間のはずです。
私はソワソワしながらエントランスの方を無駄に行き来していたため、リアに注意され、サロンに閉じ込められました。
「バルツァー様がいらっしゃいましたらお呼びしますね」
「はい、すみません」
そしてリラックスしながら待ちます。姿勢も背もたれに体重をかけながら座るというだらしなさ。
しばらくすると、ノックの音。私が声をかけると、男性の声で失礼すると聞こえ、私は一気に背筋を伸ばしました。
「お待ちしておりました!」
「あ、ああ…………」
バルツァー様は私のことを上から下まで見ると、何故か硬直されてしまいました。やはり私なんかがこんな綺麗なドレスを着るのは変だったと言うことでしょうか!
「あ! あの! 変なら変と言ってください! すぐに直して貰いますから!!」
私がそう言いますと、バルツァー様はいつものように私の頭に手のひらを載せます。
「違う。大丈夫だ変じゃない。むしろ君のこういう一面を知れてよかったと思っている」
良かった? 何がでしょうか? でも、その変ではないと言うことですね。安心しました。
「行こうかマリー」
名前を呼ばれました! 今です。言わないと!
ギルベルト様って呼ぼう!
「え、あっ。あっ……はい! ギ、ギル!」
んんん!?
途中で躊躇して愛称みたいになってしまいました!
しかし、バルツァー様はそう呼ばれたのがお嫌ではなかったのでしょう。私の手を引いて一緒に馬車に乗り込みました。
普段なら少し離れた位置に座るところ、今日はお互いの肩が触れ合う距離にいます。
「近すぎたか?」
「いえ、そういうことではなくその……ギルベルト様とお呼びしても宜しいでしょうか?」
私がそう尋ねると、バルツァー様は少しだけ悩みながらこうつぶやきました。
「さっきの呼び方の方が良いな。今後はギルと呼んでくれないか?」
「ふえ!? あ、あれはそう呼ぼうとしたのではなく! その噛んでしまいまして! あの…………」
私が慌てふためくと、彼はやはり私の頭の上に手のひらを置きます。これがものすごく落ち着き、彼も私がこれをされると落ち着くとわかっているんじゃないかと疑います。
「はい、ではギル。もっとくっついても良いですか?」
「遠慮することはない」
そう言われ、身体をぐいっと引き寄せられました。抵抗する気もありませんが、やはり男の人は力強い。それとも私が軽すぎるのでしょうか。
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