怖がり伯爵令嬢は逃げも隠れもしますので構わないでください!

大鳳葵生

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35話 大人の女性かと思ったらなんとなくポンコツなんだよなぁ

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 ギルが色々な方から注目を浴びている中、私は腕を掴まれたまま動けずじまいになり、誰かわからないですが、それでは彼女が可哀そうだ。一度離してあげるといい。

 そう言われ、ギルは私の腕を離すと、周囲の圧に負け、私はギルの隣から一度離脱しました。

 さて、右を見ても左を見ても知らない人だらけですね。

 それもそのはず、私は普段社交界に参加しません。級友くらいならわからなくもありませんが、私ってば碌にお友達がいないのです。

 こんなことなら作っておけばよかった。きょろきょろと首を動かしますと、エミリア様もミシェーラ様も人だかりのど真ん中。

 仕方ありません、ギルが解放されるまで壁と仲良くしていましょう。

 そそくさと壁際に移動し始めますと、何人かの知らない男性から呼び止められました。

 そのすべてに軽い会釈だけしてさよならし、やっと壁際。

「今日は少し目立ちますね。さすがエミリア様から頂いたドレスです」

 ドレスが違うせいや、ドレスに合わせたリアの天才的センスのおかげでやや注目を浴びてしまいました。

 壁際に移動してもなお、周囲がこちらを見ているような気がします。私、もしかして変な恰好をしているのでしょうか。

 それともドレスやメイクに素体が釣り合っていないから!?

 しかし、この格好で来てしまったものは仕方ありません。今日は耐えましょう。うう、早く帰りたい。

 そんな時、周囲を見渡すと廊下に繋がる出入り口が空いていました。

 ギル、まだまだ解放されなさそうですし、少しだけ。ほんのすこーしだけ抜け出しちゃいましょうか。

 その廊下の向こうには確か、隠し通路がある廊下でしたね。いっそ潜り込んでしまいましょうか。廊下にポツンと一人でいるのもおかしいですものね。

 そう考えながら通路に出てしまい、真っすぐ例の壁目指して歩きました。

 曲がり角を曲がると長い廊下につき、そのすぐ脇の壁を見ます。ありましたね。

 間隔の狭い柱の間の壁をめくりあげてそこに潜り込みました。

 すると数人分の足音が廊下から聞こえました。

 一体何でしょうか。先ほどまではどなたもいなかったような。

「あの女はどこに行った?」「確かこの曲がり角を曲がったところまでは確認したんだが」「早く探し出せ」「夜会が終わる前にだぞ」「くそ、変な仕事を引き受けちまったぜ」

 騒がしいなぁ。一体何があるっていうのでしょうか。どなたかを探しているみたいですね。

 手伝ってあげるべきでしょうか?

 私が隠し通路から出ていこうとした瞬間でした。突然後方。つまり、隠し通路の奥から誰かが出てきて、私の口を押えて出ていくことを止めました。

 え? 何々? どういうこと?

 後ろから押さえつけられたことから、相手の体格がなんとなくわかり、後頭部にあたる柔らかさから女性と判断できます。手荒な感じはせずに、まるで馬車の前に飛び出す子供を押さえつけるような感じでした。

 しばらくその人に押さえつけられ、廊下側から足音が聞こえなくなると、女性が私を開放しました。

「危ないじゃない。あれ、あからさまに貴女を追っていたわよ」

「え? 私何か落としたのでしょうか?」

 装飾品やハンカチを確認しますが、全てあります。どうやら落とし物ではないようです。

 暗くてよく見えませんが、女性はどうやら大人の方のようです。

「あの? 私を追っていたとは?」

「曲がり角を曲がってここの前の通路に来るとしたら、一か所だけです。貴女の前に曲がり角を曲がった方は? いらっしゃらないのであれば、後ろになりますがその方もここの通路に来なければ、あの長い廊下。彼らが見つけるはずです。つまり彼らはつい先ほどこの隠し通路に入った人間を追っていた。つまり貴女よ」

 な、なるほど。しかし私が追いかけられる理由が検討もつきません。何故なのでしょうか。

「貴女、お名前は?」

「マリー・コースフェルトです。あの、貴女は?」

「私? 私は…………ルア! ルアよいいわね?」

 何故念を押されているのでしょうか。まあ、良いでしょう。よくわかりませんがルアさんと一緒にしばらくお話して隠れています。

「そう貴女はリンナンコスキ公爵夫人の姪なのね」「あら、貴女はここのミシェーラ様とお友達なの? いつもありがとう」「そう今日はバルツァー家の方にエスコートされてきたのね良かったじゃない」

 ルアさんは私のことを根掘り葉掘り聞きだし、私は答えるので精いっぱいでした。

「あの? ルアさんは何故このような場所に?」

「私? さっき転んだのよ。逃げてきちゃった」

 逃げる先が同じとはなんともまた。ここが一番隠れやすいポイントなのですね。今更ですが、この隠し通路を知っているということは、この方はベッケンシュタイン家の関係者さんと言うことですよね。

「そろそろ戻りましょう?」

「は、はい」

 私達が通路から抜け出すと、そこには数名の男性が取り囲んでいました。

「マヌケな奴らあんな大声で会話して」「でてくるところ待ってたぜ」

「さてと、もう一度隠れましょうか?」

「いえ、多分これ手遅れですルアさん」

 でも一応逃げるだけ逃げましょうか。私達は急いで隠し通路に潜り込み全速力で走り始めました。

 一瞬だけ見えたルアさんは、深紅のドレスに長い綺麗な金髪。そしてペールレッドの瞳をした綺麗な女性でした。
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