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40話 犯人の手掛かりがあと少しで揃うんだけどなぁ
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ギルと二人で男たちが縛り上げられているであろう場所に向かいます。
扉はすぐそこにありますが、何故かすごく遠く感じる。きっと色々な思考が頭の中でぐるぐると回っているせいだ。終わらせないと。
ギルに不安なことが伝わらない様にしていますが、それでもギルの手を握る力が強まります。
私の力が強まるにつれ、ギルが握る力も強くなる。何故かそんなことで少し安心してしまう。
「こちらですお嬢様」
リアが扉を開くと、その向こうには縛り上げられた男二人と、監視をしていたであろう東方人の女性。
「黒い髪の黄色人種は珍しいですか?」
「あ、いえ確かにあまりお見かけしませんが、王都ではたまに通り過ぎますし、学園事務の方にもいらっしゃいますので」
「いやぁ嬉しいなぁ昔は差別されて国籍もなかったんだよ?」
公国史でも、東方人を国民として認め始めたのはつい最近のことで、何の前触れもなく、数十名の東方人が国民として認定されたことは大人たちには記憶に新しいことだそうです。
当時の私は幼い子供でしたので、何も覚えていませんけどね。それ以前に、公国史を習うまで公国に東方人がいるなんて普通かと思ってました。
「この人たちでしたらまだ眠っていらっしゃいますが、たたき起こしますか?」
東方人の女性は、物干しざおのようなものを手に取って、ぶんぶんと振り回します。
「あ、いえお顔だけ見れれば」
「そーですかぁ」
ちょっと残念そう。
私はできればこの人たちと再会したくありませんし、尋問なら私のいないところでやって欲しいです。きっと私も一緒に怯えてしまい、何も頭に入りませんので。
「この二人で間違いありません」
「ふぅむ、この二人でしたら間違いなくルビー・フリンとメリッサ・ボイドが連れていた人ですねぇ」
ひょいと顔をだしてきたフリーデリケさん。あれだけの人数の受付でよく組み合わせまで覚えられるものですね。
「驚いちゃいます? 私、ひと昔前まで諜報員だったんですよ」
「あ、それはリアから聞きました」
私がそういうと、フリーデリケさんは表情一つ変えずにグルンと首を動かしてリアを見つめます。
「ご自分のことは話さずに、私のことは言っちゃうんですねぇ」
「いやぁ、あはは。国の英雄と肩を並べたことがあるなんて恥ずかしくて言えませんよ」
確かに私がその立場でも言いませんね。それ以前に女騎士だったことすら教えて貰えませんでしたけどね。
「とにかくこの二人は、フリン嬢とボイド嬢の同伴者で間違いないな?」
「ええ、身分は一応、男爵家の次男と三男ですね。本当かどうかわかりませんが」
あったことない人間の顔を知る手段は、肖像画のみ。特徴さえ似ていれば簡単に騙せます。
「男爵家の身分証明なんて、侯爵家が本物だと言ってしまえば、基本は素通りですからねぇ」
二人が起きる前に私たちは出ていき、東方人の方に見張りをお願いしてまたエントランスに集まりました。
「後は最後の一人だが」
「会場内で探すには難しいですよね。顔を見ているのは私とルアさんだけ」
「「ルアさん?」」
リアとフリーデリケさんが聞き覚えのない名前に反応し、ギルがそれに対し、一言補足するように言いました。
「あの方がお忍びで使う偽名ですね。俺も幼い頃色々ありましたから」
ルアさん、やっぱり偽名だったんですね。高貴な方でしたら名前だけでも知っていてもおかしくないなと思いましたので、不思議だったんですよね。
「幼い頃」
「なんだ?」
「いえ、どんな方だったのかなって」
きっと可愛いんでしょうね。眉間にしわがあったらそれはそれで可愛い。むふふ。あれ? あっそういうことか。いつの間にか、そのシワ。好きになってたんだなぁ。
「おい、なんで笑っているんだマリー」
「さぁ? いいじゃないですか別に」
私がそう言い、ギルが何度も聞きだそうと質問をする。そんな様子を、いつの間にか少し離れた位置に移動したリアとフリーデリケさんが見守っていました。
「お嬢様方やはり子供ですね。話が脱線したまま修復の気配が」
「まぁまぁ。最後の一人はルアさんが見ているなら平気でしょう」
「……本気で言ってます?」
「面白半分ですねぇ」
「はぁ…………」
リアが頭に手を当て、深いため息を吐いたことを、ギルと二人だけの空間を作っていた私は知る由もなかった。
扉はすぐそこにありますが、何故かすごく遠く感じる。きっと色々な思考が頭の中でぐるぐると回っているせいだ。終わらせないと。
ギルに不安なことが伝わらない様にしていますが、それでもギルの手を握る力が強まります。
私の力が強まるにつれ、ギルが握る力も強くなる。何故かそんなことで少し安心してしまう。
「こちらですお嬢様」
リアが扉を開くと、その向こうには縛り上げられた男二人と、監視をしていたであろう東方人の女性。
「黒い髪の黄色人種は珍しいですか?」
「あ、いえ確かにあまりお見かけしませんが、王都ではたまに通り過ぎますし、学園事務の方にもいらっしゃいますので」
「いやぁ嬉しいなぁ昔は差別されて国籍もなかったんだよ?」
公国史でも、東方人を国民として認め始めたのはつい最近のことで、何の前触れもなく、数十名の東方人が国民として認定されたことは大人たちには記憶に新しいことだそうです。
当時の私は幼い子供でしたので、何も覚えていませんけどね。それ以前に、公国史を習うまで公国に東方人がいるなんて普通かと思ってました。
「この人たちでしたらまだ眠っていらっしゃいますが、たたき起こしますか?」
東方人の女性は、物干しざおのようなものを手に取って、ぶんぶんと振り回します。
「あ、いえお顔だけ見れれば」
「そーですかぁ」
ちょっと残念そう。
私はできればこの人たちと再会したくありませんし、尋問なら私のいないところでやって欲しいです。きっと私も一緒に怯えてしまい、何も頭に入りませんので。
「この二人で間違いありません」
「ふぅむ、この二人でしたら間違いなくルビー・フリンとメリッサ・ボイドが連れていた人ですねぇ」
ひょいと顔をだしてきたフリーデリケさん。あれだけの人数の受付でよく組み合わせまで覚えられるものですね。
「驚いちゃいます? 私、ひと昔前まで諜報員だったんですよ」
「あ、それはリアから聞きました」
私がそういうと、フリーデリケさんは表情一つ変えずにグルンと首を動かしてリアを見つめます。
「ご自分のことは話さずに、私のことは言っちゃうんですねぇ」
「いやぁ、あはは。国の英雄と肩を並べたことがあるなんて恥ずかしくて言えませんよ」
確かに私がその立場でも言いませんね。それ以前に女騎士だったことすら教えて貰えませんでしたけどね。
「とにかくこの二人は、フリン嬢とボイド嬢の同伴者で間違いないな?」
「ええ、身分は一応、男爵家の次男と三男ですね。本当かどうかわかりませんが」
あったことない人間の顔を知る手段は、肖像画のみ。特徴さえ似ていれば簡単に騙せます。
「男爵家の身分証明なんて、侯爵家が本物だと言ってしまえば、基本は素通りですからねぇ」
二人が起きる前に私たちは出ていき、東方人の方に見張りをお願いしてまたエントランスに集まりました。
「後は最後の一人だが」
「会場内で探すには難しいですよね。顔を見ているのは私とルアさんだけ」
「「ルアさん?」」
リアとフリーデリケさんが聞き覚えのない名前に反応し、ギルがそれに対し、一言補足するように言いました。
「あの方がお忍びで使う偽名ですね。俺も幼い頃色々ありましたから」
ルアさん、やっぱり偽名だったんですね。高貴な方でしたら名前だけでも知っていてもおかしくないなと思いましたので、不思議だったんですよね。
「幼い頃」
「なんだ?」
「いえ、どんな方だったのかなって」
きっと可愛いんでしょうね。眉間にしわがあったらそれはそれで可愛い。むふふ。あれ? あっそういうことか。いつの間にか、そのシワ。好きになってたんだなぁ。
「おい、なんで笑っているんだマリー」
「さぁ? いいじゃないですか別に」
私がそう言い、ギルが何度も聞きだそうと質問をする。そんな様子を、いつの間にか少し離れた位置に移動したリアとフリーデリケさんが見守っていました。
「お嬢様方やはり子供ですね。話が脱線したまま修復の気配が」
「まぁまぁ。最後の一人はルアさんが見ているなら平気でしょう」
「……本気で言ってます?」
「面白半分ですねぇ」
「はぁ…………」
リアが頭に手を当て、深いため息を吐いたことを、ギルと二人だけの空間を作っていた私は知る由もなかった。
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