怖がり伯爵令嬢は逃げも隠れもしますので構わないでください!

大鳳葵生

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閑話5話 夜会・1 34話ギル視点

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 コースフェルト家までマリーを迎えに行き、現在は二人きりで馬車に乗って夜会に向かっている。

 普段の可愛さとは違い、美しいドレスを纏った彼女を見て、また一つ彼女の好きな所が増えたような気がする。

 ベッケンシュタイン家の屋敷に到着し、エントランスで招待状を確認している使用人に招待状を渡しに行った。

「はいはぁい。ではではお二方いらっしゃいませぇ」

「ちょっ!? いくらなんでもそのギル…………ベルト様には失礼じゃないですか!?」

 愛称で呼ぶのを他人に聞かれるのが恥ずかしかったのか、マリーが俺の名前をギルではなく、ギルベルト様と、言う。そういうところも可愛い奴だが、そこは愛称で言い切って欲しかったなと、少し残念に感じた。

「気にするな」

 今、目の前にいるのは噂に聞いた隣国の侯爵令嬢だろう。特徴がはっきりしている。やや目を細く開いているが、三白眼に青い髪の女性。ベッケンシュタイン嬢の専属メイドが優秀な人だという話は、耳が腐るほど、その主人から聞いている。

「ケストナ侯爵令嬢だな?」

 俺がそういうと、マリーが侯爵令嬢だったと知らなかったのか、勢いよく顔がこちらに向いて、すぐにケストナ嬢の方に顔を向けた。

「家出娘を今でも娘だと思われているのなら、それは私を指す呼び名ですね」

「え? え?」

 なんで侯爵令嬢がメイド服に袖を通しているというのですか? と、疑問に思っていそうなマリーの耳元で公爵家などでは一般的な話をしてやる。

「王宮や公爵家などの家庭に仕える使用人は、貴族出身や本当に技術を認められた者しか働けん」

 しばらくエントランスでケストナ嬢と話していたが、次の招待客がきたところで、俺たちは会場に入っていった。

 俺達は並んで会場に足を踏み入れる。周りの奴らが、俺たちに気付くと俺と一緒にいるマリーに注目が集まっているようで気に入らなかった。

 まあ、可愛いのはわかるし、自慢したいところもあるが、まだ俺がマリーと夜会を楽しめていない内にというのは、やはり気に入らないものだ。

 しばらくしない内に、俺たちの周囲には、人だかりが出来上がる。夜会に来るといつもこうだ。今日はパートナーまで連れているというのに、うんざりする。

 ある者は娘を紹介しようとしていたりしたが、マリーに気付き舌打ち。みっともない男だ。

 気がつけば、マリーが少しだけ動いてどこかに行きそうになったが、反射的に俺はマリーの腕を掴み身体を引き寄せた。

 すると、やや老けた男が俺に声をかけてくる。

「君がバルツァー家の嫡男かい? 私はエイダン・フリンだよ。よろしく」

「フリン侯爵閣下ですね。こちらこそよろしくお願いします」

 フリン侯爵というと、やけに税金が高く、最近の領地経営が暴走気味になってきていると噂されている男だ。本人が知っているかは知らんが。

 しばらくフリン侯爵と話していたら、遠くからベッケンシュタイン公爵夫人に呼ばれた為、俺たちの前から消えた。


 気がつけば、隣にいたマリーが緊張が原因なのかわからないが、がくがくと足を震わせていた。

「大丈夫か?」

「はい」

「先ほどの女性がベッケンシュタイン公爵夫人だ。ベッケンシュタイン嬢の義姉《あね》だな」

「ほえぇ」

 マリーはベッケンシュタイン公爵夫人の方を見て、目をキラキラとさせている。

「私、目標ができました」

「ん?」

「さっきの人やエミリア様のような大人の女性になりたいです!」

「…………そうか。頑張るんだな」

「はい!!」

 ベッケンシュタイン公爵夫人も、リンナンコスキ公爵夫人も、大人っぽいのは、ほんの一部だけだぞとか、言わない方が良いよな。せっかくマリーが頑張ろうとしているんだし。

 ベッケンシュタイン公爵夫人が、冒険家で突然屋敷から消えては武者修行するような人だったり、リンナンコスキ公爵夫人が、王妃のことが好きすぎて、身近にいられる宰相夫人になったとか、知らないんだろうな。
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