怖がり伯爵令嬢は逃げも隠れもしますので構わないでください!

大鳳葵生

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閑話8話 デート・2 45話~46話 ギルベルト視点

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 マリーの提案で俺へのプレゼント選びが始まるそうだが、マリーはなにやら悩み始める。

「あ、あの! すみません、城下町全然わからなくて!! ギルの好きなところに連れていってください!!」

 俺の好きなところ。あまり考えたことはなかったな。そうだな、好きなところとなると、行きたい場所とかでいいだろうか。

 あまりピンとこないな。それに、マリーの隣ならどこでもいい。マリーの隣だから楽しいこともあるし、マリーの隣だから嬉しいこともある。

 そうでなければ今日行ったガラス工房なんて特に何の感情もなく見て回っただろう。

 それ以前に一人でガラス工房に入らないか。さて、話が脱線しそうだな。好きなところ。

「それなら…………ここだな?」

「へ? 何もない道のど真ん中ですよ?」

「わからんか? お前の隣だ」

 そういうと、マリーの顔がどんどん紅くなっていく。

「…………え? 私の隣? 好きな所?」

 マリーの顔が完全に真っ赤になり、俺を見つめたまま硬直している。

 そんなマリーをみた俺は少しだけ笑い、彼女の頭に手のひらを乗せる。

「そういうのではなくて!! その、ギルが欲しい物がある場所です?」

「…………」

 欲しい物がある場所か。さてマリーは何を上げれば喜ぶだろうか。ガラス細工はすごく喜んでくれたわけだし、可愛い物を渡せばまた喜んでくれるだろうか。

 しかし、彼女が俺にプレゼントを渡したいのであればそれではだめだろう。

「あの? あの?」

「そうだな、そろそろ意地悪は切り上げるか。ああ、別に欲しくない訳じゃない」

 少し考えたが、これと言って欲しい物が浮かばない。適当に冗談を言ったが時間は稼げなかったようだ。

「へ?」

「では、君からもらうなら普段から身に着けられるものがいい。行くぞ」

 せっかくだ。彼女からもらった物なら常に持ち歩いていたい。勿論、無理にそういうものを求める気もないが。

「は、はい!!」

 しばらくして装飾品などを売っている店に入る。マリーは必死にカフスボタンなどを見ていたが、ピンとこなかったのかすぐに出ることになった。

「次はどこに行く?」

「えと? 私なんかが買えるもの、ギルは簡単に買えそうだなって思うと、何を渡せばいいかわからなくて」

 マリーがそう言って、ぎこちない笑いをしてみせる。俺は少しだけ優しい気持ちになり、鞄からガラスのウサギを取り出した。

「これが高級品だったり、安物だったりで、お前は嬉しさが変わるのか?」

「…………そんなのどっちでも嬉しいに決まっているじゃないですか」

「そういうことだ。安物でも高価なものでも、お前から渡されたことに意味があるんだ」

 そういうと、マリーはなんだか嬉しそうに笑ったが、結局俺のプレゼント選びは中々決まることはなかった。

 しばらくしてまたあの人の捜索も始まる。しかし、俺は途中からマリーのメイドと一緒にいるあからさまな女性が気になってしょうがない。

 いや、あれ絶対あの人だな。俺たちは完全に暇つぶしの道具にされている。ここでバラしてもいいが、ふとあの人に視線を向けると、手で大きくバツを作った。

 仕方なく意識を一緒に歩いていたマリーに向けると、マリーはどうやら疲れてきたようだ。

「疲れただろう? そこで一休みしよう」

 近くにあった公園のベンチ。俺はそこにハンカチを敷くと、マリーに座るようにと促す。

「ギルは?」

「俺は直で問題ない」

「ですが」

「お前が早く座らないと、俺も座らないぞ?」

 しばらく二人でのんびりとしながら、ベンチに座っていると、マリーは普段の俺の話や、くだらないことまで質問してくる。好きなものや行ってみたいところの話など、あまり人にはしてこなかったかもな。

「海ですか?」

「ああ、幼い頃にとある話を聞いてな。その時は何とも思わなかったが、最近は少しだけそういうのもいいなと思えたんだ」

 海、本物は一度も見たことはない。幼い頃、一度だけあの人が大公にプロポーズされた場所だと話していた。

 あの人はいつものろける時の笑顔はやや気持ち悪いが、その時のあの人は本当に幸せそうだった。

 そのせいだろうか。マリーにもあの表情になって貰いたい。そんなことが頭によぎったのだ。

 尤も。マリーと二人なら、どこへでも行ってやるけどな。

「そろそろ良いだろう。俺も十分楽しんだし」

「そうですね! 早くしないと夕暮れに!」

 マリーはあの人を探さなければと立ち上がろうとするが、俺はそれを止める。

「ああ、心配するな。そろそろ出てきたらどうですか?」

 茂みに向かって声をかけると、そこからがさがさと音を立てて、マリーのメイドとあの人が現れた。

「マリーちゃん、昨日ぶりかしら?」

「ルアさん!? あ! あの、何故?」

「貴女のメイド。私の昔馴染みなのよね。それで見かけたから声をかけてみたら、私のことを探していたみたいだったから、面白かったので付け回すことにしました」

 俺たちを暇つぶしの道具にしましたと告白してきやがった。まあ、この人はいつもそうだ。

「それで? 私に用があるのでしょう? 貴女のことを付け回しておいて難ですが、私仕事から抜け出してここにいるの」

 前言撤回。暇つぶしではないな。暇じゃないのだから。

「お願いがあります!」

「却下よ!」

「へ?」

「貴女のメイドから既に話は聞いているわ。元々私が動くつもりだった件だから貴女にお願いされてするつもりはないわ。むしろこちらからの要請よ。貴女に策があるというなら、協力なさい。私はお願いされる立場じゃなくて、命令する立場の人間よ」

 この人らしい宣言だ。性格はどちらかと言えば傲慢。よく公妃になれたものだと思っている。

 そしてマリーもさすがに気付いたのだろう。少しだけ震え始めた。

「どうやら気付いたみたいね。でもルアさんのままでいいわ。だって貴女が想像した人は、今頃お城にいるはずですもの」

 マリーは自身の考えをあの人に話し、あの人も納得した。

「ああ、そうそう。それともう一つ貴女にアドバイス。ギルベルト、貴方は少し席を外しなさいな。貴女も」

「はい」

 そう言われ、俺とマリーのメイドは少し遠くまで移動する。

 マリーが何かを吹き込まれているようだが、あの人みたいにならなければそれでいい。

「あの、少し宜しいでしょうか?」

 マリーのメイドが俺に話しかけてくる。

「なんだ?」

「お嬢様と婚約してくださりませんでしょうか?」

「…………難しいな。コースフェルト家が断るかは別として、うちの両親がなんというかわからない」

「約束できないのなら、お嬢様と…………別れてください」

 確か、リア。と言っただろうか。彼女はきっと俺を睨み、その真意こそわからないが、どうやら彼女は、主人に一時の夢ではなく、安定した幸せを願っているようだ。

「期限を貰えるだろうか? 両親に話す。ダメなら説得する。それでもダメなら、彼女と逃げようと思う」

 俺がそう言ってリアというメイドを真っすぐ見つめると、彼女は深くため息を吐いた。

「そこまで言えるのでしたら問題ありません。失礼しました」

 そう言った彼女は、最後に本当に小さな声で呟く。「結婚したい」と。
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