怖がり伯爵令嬢は逃げも隠れもしますので構わないでください!

大鳳葵生

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50話 凄い顔ぶれに囲まれて逃げ出したいんだけどなぁ

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「ひええええ!?」

「こらマリー! そうじゃないでしょ!」

「ごぉめんなぁさあああいい!!!」

 泣き叫ぶ私と、罵声を浴びせてくるミシェーラ様。事の発端は、お昼休みにミシェーラ様に相談してしまったことからでした。

「公爵夫人に相応しい令嬢になりたいですって? 貴女が?」

「ええ、それでエミリア様に相談しようかと思っていまして」

 私がそう言いますと、ミシェーラ様が俯いてプルプル震えだします。

 何か気に障ることを言ってしまったのでしょうか。心配になり声をかけようとすると、彼女は大きな声で叫びました。

「どぉーして大親友の私に、相談しないのよぉぉおお!!」

「へ?」

 いつの間に大親友になれたのか、一切わかりません。

 そしてその叫び声を聞いた人たちが徐々に人だかりを作り始め、そこにエミリア様までやってきてしまいました。

「どうしたのかしら?」

 更にはなぜか学園見学をしていたルアさんにルアさんのおつきのメイドさんがエミリア様とご一緒にいます。

 その後ろにもゾロゾロと名も知らぬ婦人方。

 私がエミリア様に相談の件と叫び声の件を説明しますと、エミリア様は、ルアさん含めた周囲の婦人方とご相談し始めました。

「マリーちゃんは午後は私の授業でしたよね?」

 エミリア様がにっこりと笑って言います。

「は、はい」

「もし、マリーちゃんさえよければだけど、特別授業。受けてみない?」

「受けるわ」

「なんでミシェーラ様が答えるんですか!?」

 こうして、エミリア様以下数名の婦人に見守られながらの特別授業が開始されることになりました。同じ選択科目を取得している他の生徒たちも参加しています。

 まさか相談事でここまで大きく影響してしまうなんて、後で皆様に怒られたりしないでしょうか。

「私公妃様とお話するの初めてかも!」「ベッケンシュタイン公爵夫人もいらっしゃいます!」「キャー楽しみですわ」

 その心配はなさそうですね。

「見て! バルツァー公爵夫人よ」

 バルツァー公爵夫人!?

 私は不意に聞こえたその名前に反応し、振り返りますと、綺麗な青い眼に白い髪の女性がキリっとした目で私を見ていました。

 あの目、間違いない。眉間にしわはありませんが、あの目はギルと同じ目。そしてあの人は真っすぐとこちらを見ています。

「それでは皆さん。いつも通りステップの練習から姿勢を崩さないように意識してくださいね」

 エミリア様にそう言われ、二人一組になり、互いに姿勢の悪いところを指摘し合っていると、見学していた婦人方が学生である私達にアドバイスや指摘を入れてきました。

「あれ? ルクレシア様は指導されないのですね」

 一応、皆様の前なので本名に様付けで呼びましょうか。

「お姉様はその……ダンス下手なのよ」

「あっ……そうなんですね」

 ルアさんは美人でしっかりしていて、なんでもできるイメージがありましたけど、そういえば転んでいましたし、転ぶことまで想定されていましたよ。

 そして冒頭に戻ります。

「マリー! 姿勢が崩れるのが早すぎるわ! やり直しよ! やり直し!!」

 私達の様子を遠巻きで見ている婦人方に他の生徒たち。そんなに注目されてしまいますと、余計に震えて姿勢が崩れてしまいます!?

「雑念が多すぎるね。姿勢が崩れても仕方ないよ」

 不意に声をかけられ、振り返りますと、ミシェーラ様が既に頭を下げられていましたので、私も一緒に頭を下げます。

「ああ、ごめんごめん。楽にしてくれて構わない。それにいい加減ミシェーラは僕に慣れて欲しいものだが?」

「えー。はいはいなんでしょうかベッケンシュタイン夫人様」

 長い金髪に紅い瞳。よく見れば夜会でお見かけしたベッケンシュタイン公爵夫人で間違いありません。

「僕はオルガ。オルガ・カレヴィ・ベッケンシュタインさ。一応そこのミシェーラの兄に嫁いで、義姉妹のつもりなんだけどね」

 そう言った彼女は、綺麗な姿勢を保てるまで私の姿勢強制を手伝ってくださることになりました。

「お義姉様は武闘派でもあるから根性だの無心になれだの不思議なことを言い出すから気をつけてね」

 そう言ったミシェーラ様がルアさんの隣で休憩を始めますと、私はミシェーラ様の数十倍厳しい鬼講師によってみっちりと鍛え上げられることになりました。うへぇ。
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