怖がり伯爵令嬢は逃げも隠れもしますので構わないでください!

大鳳葵生

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68話 そして私が受ける罰

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 今、私とギルはなぜかコースフェルト家のお屋敷に到着しました。

「あの? あの?」

「お前が罰してくださいって言ったのだろう? そのために必要な準備だ」

 何の準備が必要で我が家に来たというのでしょうか。いえ、全く想像つきません。

 ギルと並んで私の部屋まで向かいます。サロンや応接室でも良かったのですが、ギルが私の部屋が良いと言ってききませんでしたのでこちらにしました。

「見て面白いものなんてありませんよ?」

「構わないさ。見ていて飽きない奴ならもう隣にいるからな」

 私は思いっきりギルのことをポカポカ叩きますが、ギルはそんな私を見て頭を撫でてきました。

 撫でておけば私の機嫌が直ると思っていますね。気に入りませんのでもう少し撫でさせて腕が疲れてしまえばいい。

「それで罰の件だが、君の両親に納得してもらおう必要があるんだ」

「私に何をさせる気ですか?」

 両親の納得が必要って意味がわかりません。皆目見当もつきません。

 しばらくして両親が帰ってきたことを使用人の一人からお聞きしました。

 ギルが立ち上がり、私もついていきます。エントランスに向かい両親に挨拶をしてギルが二人に話がありますと声をかけると、四人で応接室に向かうことになりました。

 父母が並び、その向かいにギルと私が座ります。

「それでギルベルト君、私達に話があるということはマリーに関する話かね?」

「はい、コースフェルト伯爵。実は今回の件で自分を犠牲にしてまで使用人を優先する行為に対し、人として立派であると同時に、使用人の役割を無視した行いについて。彼女は叱られたところで次も同じことをする自信
がありますので罰してください。と申し付けられました」

「ほう。……ほう?」

「あ、お父さん。本当のことです」

 はじめは納得した父も、え? 本当に? と言いたそうにこちらに視線を向けましたので私が返事をします。

「まあ、その話が本当なことは分かった。それで罰の件で私達に話があるということはどういうことかな?」

 やっと本題。私も罰の内容がわからないので今からドキドキしています。両親に話す必要があることというのが未だにピンときませんが、きっと必要な事なのでしょう。

「お嬢さんには学園を退学して貰います」

「何?」「え?」「あらあら?」

「それはどういうことだいギルベルト君」

 温厚な父が少しだけ怒っているような、そんな感じ。私とギルが高等部で定期的にお会いしていることは両親も存じています。

 退学と言うことは、もう逢わないという意味なのでしょうか。

「すみません。誤解の生む表現でした。正確には、私の卒業と同時に、彼女には退学して貰いたい」

「えええええ!?」

「…………認めよう」

「ええええええええええええええ!!!」

「マリーちゃんはしたないわよ」

「ごめんなさい」

 待って待って待ってください。退学? 私が退学。それもギルの卒業と同時に退学ってどういうことですか。意味がわかりません。意味が…………

 そうか、ギルが卒業してしまったら、私たちはもう毎日会えなくなるんだ。ギルがバルツァー領に戻ってしまったら、しばらく会えないんだ。

 つまり、この罰はギルが卒業したら、私を連れていくという意味なのでしょうか。

 私がギルの服を掴み、彼の顔をまじまじと見つめる。私の視線と彼の視線がぶつかると、顔が熱くなる。

「気付いたか? そうだ、マリー。俺に付いて来てくれ」

「…………罰? 笑わせないでください。ご褒美っていうんですよ」

 私が彼に飛びつくと、彼が私を抱きしめる。しばらくそうしていたのか、いつの間にか両親の姿はありませんでした。
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